第20章 私が見た夢
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薔薇色の表紙を彼はそっと手で撫でた。この中に彼の全てがつまっている。口元に小さな笑みを刻んで、彼は静かに目を閉じた。
次に瞳を開いたときには、そこにいるのはもう歴史学者の少年ではない。
「クルス=ユージーン侯爵、彼は私の死後、《第一の反逆者》と呼ばれることとなるだろう、なぜなら私は……」
皇帝に逆らう唯一無二の王として。
第二の反逆者。後の世に反逆王の名で呼ばれる男。
父を殺し母を殺し、一人の学者から国王として成り上がり皇帝の前に立つ。
そして皇帝は彼を待ち受ける。
「さぁ――早く、私を殺しに来い。ルルティス=ランシェット=フィルメリア」