薔薇の皇帝 28

第20章 私が見た夢

168

 薔薇色の表紙を彼はそっと手で撫でた。この中に彼の全てがつまっている。口元に小さな笑みを刻んで、彼は静かに目を閉じた。
 次に瞳を開いたときには、そこにいるのはもう歴史学者の少年ではない。

「クルス=ユージーン侯爵、彼は私の死後、《第一の反逆者》と呼ばれることとなるだろう、なぜなら私は……」

 皇帝に逆らう唯一無二の王として。
 第二の反逆者。後の世に反逆王の名で呼ばれる男。
 父を殺し母を殺し、一人の学者から国王として成り上がり皇帝の前に立つ。

 そして皇帝は彼を待ち受ける。

「さぁ――早く、私を殺しに来い。ルルティス=ランシェット=フィルメリア」