荊の墓標

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荊の墓標 43

第18章 薔薇の涙に堕ちる国(2)240*「ええ!? アンリたちがこの城に来ているじゃと!」「しかも、牢獄に放り込んだなんて……」 アンとヘンリーの二人は、その話をルースから聞かされた。代わりにルースの方は、シェリダンたちを城に連れて来た後...
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荊の墓標 42

第18章 薔薇の涙に堕ちる国(1)234 そして薔薇は、この手に堕ちた。「ただいま戻りましたわ。ドラクル陛下」 常と変わらぬ穏やかな声と口調。プロセルピナの魔術によって王城へと帰ったルースの様子は、ただ一つのことを除けば常と全く変わらない。...
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荊の墓標 41

第17章 虚無の覇帝(2)229 見た目はたおやかでもその腕はさすがにヴァンピルだ。ルースの腕はシェリダンが全力を込めてもなかなか外せそうにない。首を絞められてはいるが、両手は自由に動かせるこの状態でこれなのだ。何か方法はないか。 苦痛に自...
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荊の墓標 40

第17章 虚無の覇帝(1)224 深い樹海に抱かれた魔族の国、ローゼンティア。 街の景色は、華やかとは言えないがとにかく派手だ。街の家々は赤煉瓦を積み上げているために、どこもかしこも赤い。だいたいどこの家でも薔薇を育てている。 その紅い街並...
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荊の墓標 39

第16章 暗黒の末裔(2)218* これが最後と決めた書類の一枚にサインをし、デメテルは席を立った。「来たのね、ハデス」 帰ったのね、ではなく、来たのね、と。結局最後まで自分は彼の帰る場所にはなれなかった。 ハデスは預言者だが、彼一人が世界...
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荊の墓標 38

第16章 暗黒の末裔(1)212 生きることと死ぬことの間には、厳密な差異があるはずだ。 死者は蘇りはしない。死んでしまったものには二度と会えない。 ヴァンピルのような、一度の生命活動の停止が終焉とならぬような一族であっても、それでも最終的...
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荊の墓標 37

第15章 聖者の葬列(2)206「ごめん」 口を開きばな出てきたその言葉に小さく驚いて、シェリダンは隣に座るロゼウスの顔を見た。 とりあえずエヴェルシードの現状にショックを受けた部分もあるだろうし、一日くらいは体を休めろとのエルジェーベトの...
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荊の墓標 36

第15章 聖者の葬列(1)200 何も失いたくないのならば、最初から手に入れなければいいのだ。ないものは誰も奪えない。喪失の痛みに苦しくて引き裂かれそうだというのならば、もともと何も持たなければいいのに。 あるいは、今あるものもそのために手...
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荊の墓標 35

第14章 冥府の王(2)194 飛びかかってくる魔物の群を斬り倒しながら進んだ。「ちっ、キリがないな」「シェリダン様、あっちの森は!」 エチエンヌの指差す先に、銀色の森がある。何故か魔物たちはその森を避けているようで、こちらの攻撃を受けてふ...
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荊の墓標 34

第14章 冥府の王(1)188*『本当に良いのか? 我等の王よ』 一人の魔物が尋ねた。「ああ」 黒髪の少年が頷く。「僕はロゼウスのせいで死ぬなんてまっぴらだし、姉さんの道具でいるのもまっぴらだ。せっかくの魔術の才、例え姉に敵わずとも僕の力で...