小説(BL)

僕の愛しい勇者様

僕の愛しい勇者様 01

僕の愛しい勇者様 01 1.勇者兄弟  僕の兄さんは世界一素晴らしい。  なんていったって勇者だからね。大陸連合の国王全てに認められた、魔王を倒すために選ばれたたった一人の男。並みいる強敵たちを打ち倒し、この世で最も過酷な役目に自ら志願した...
BL短編

B-HISTORIA

B-HISTORIA 凍蝶之夢  粗末な小屋の中に、湿った音が響く。 「う……ぁあ、ふぁ……」  押し殺したような喘ぎが漏れ、埃の舞う空中に溶けた。餌を喰らう獣の貪欲さで、ぴちゃぴちゃと何かを舐める音がする。 「や、やめ……」 「ほう。やめ...
BL短編

罪人

罪人 01  灯りもない暗い部屋の隅に少年は身を潜めていた。よく手入れが行き届いた王宮の一室は、普通埃などはない。しかしここは城の中でも普段使われない使用人部屋の物置で、見過ごされた汚れがそこかしこに残っていた。  常に清潔で煌びやかな贅の...
BL短編

愛玩

愛玩 01  金髪の少年はいつものように、父の秘書に我儘を言った。淡い茶髪の男は困った顔をして、小さな主の前に頭を垂れる。 「坊ちゃま。それはいけません」 「なんだよ! 僕の言うことが聞けないってのか! 使用人のくせに生意気だぞ! ルーファ...
BL小説

薄氷の砦

薄氷の砦 1.輪郭の溶ける黄昏  いつまでも続くと思われた平穏な日常は、思いもかけない狂気によって静かに浸食されるものだった。沈む陽の紅い夕暮れが連れてきた闇がじわじわと足元を浸していくように、それは恐らく、彼らの知らないうちにやってきてそ...
BL短編

推定有罪

推定有罪 prologue  これはきっと、たぶん罪。  ◆◆◆◆◆  その日その時、彼はおそらく人生最大の幸福に見舞われていた。 「あなたが、好きです」  そう言って少年の前で膝を折る褐色の肌の青年は、神殿に仕える聖騎士の一人だ。そして、...
BL短編

神様の思召すまま

神様の思召すまま 1.運命の出会い?!  神様、僕は今まで人生これでも真面目に生きて来たつもりなんです。  水汲みも家畜の世話もサボらず毎日やりました。今だって族長に言われて神殿に届け物をしにいく途中です。  なのに何故、こんな目に? 「よ...
BL短編

Stray Cat

Stray Cat 1.薄暗い出会い  その時、わたしはうかれていた。ようやく安定して空を飛ぶことができるようになったので。  これまで間違ってものにぶつかったり途中で墜落していたりわたしがようやく風を切る感触を自分の羽で操れるようになった...
劫火の螺旋

劫火の螺旋 SS

「劫火の螺旋」外伝(本編読了後推奨) 砂漠の星と魔術師 1.  さぁ、君は今日から魔術師になるための勉強をするんだよ。  砂漠の国の辺境、日干し煉瓦の家が立ち並ぶ下町、暗い灼熱の路地裏で死を待つばかりだった薄汚い孤児の少年にそう声をかけたの...
劫火の螺旋

劫火の螺旋 07

第7章 運命の螺旋 39.予兆 「ラウルフィカ陛下」  王の騎士は主君を見かけるなり、涙を浮かべそうなほど安堵した顔で跪いた。 「我が命をよく守ってくれたようだな。カシム」 「私が陛下の御言葉に逆らうことはありません」  王が陣を抜け出すの...