小説(BL)

薔薇の皇帝

薔薇の皇帝SS

薔薇の皇帝 小話 今日枯れて明日また咲く花のひととき 「ねぇ、エチエンヌ。髪切って」  そして彼は無造作に小刀を取り出すと、細いのに力強く有無を言わせない手つきでエチエンヌの手に押し付けた。押し付けられた方は目をぱちくりとさせて、目の前でく...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 ノクタンビュールの烙印 02

薔薇の皇帝 ノクタンビュールの烙印 02 7.邂逅  相変わらず銀の鬘を被り、少女の振りをしながらアシェルは街中を歩いていた。  フィルメリアを抜け、今はその次の国、サジタリエンへと入っている。この国の民の特徴は橙色の髪に緑の瞳。銀髪に紫の...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 ノクタンビュールの烙印 01

薔薇の皇帝 ノクタンビュールの烙印 01 000  青い空が頭上に広がっている。雲一つない穏やかな晴天から、暖かな陽光が降り注いでいた。  この辺りの気候は一年を通して安定していて、今の時期は滅多に雨も降らない。旅人にとっては距離を稼ぎやす...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 序曲(2)

薔薇の皇帝 序曲 02 007  教主ローデリヒは数人の部下にうやうやしく付添われて自室へと戻って来た。しかし、その彼らを部屋の中には呼ばず、あっさりと追い払ってしまう。 「お前たちは下がれ」 「それでは、何かありましたらお呼びくださいませ...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 序曲(1)

薔薇の皇帝 序曲 01 000  さぁ、この命を使って、お前に呪いをかけよう。  白い瞼の下、過ぎ去った悪夢は日々彼のもとをおとなう。この目を抉り出してしまえばそれが見えなくなるのではないかと思いその可能性に縋って実際に眼球を指で刳りだして...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 28

第20章 私が見た夢 168  薔薇色の表紙を彼はそっと手で撫でた。この中に彼の全てがつまっている。口元に小さな笑みを刻んで、彼は静かに目を閉じた。  次に瞳を開いたときには、そこにいるのはもう歴史学者の少年ではない。 「クルス=ユージーン...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 27

第19章 鳥籠の針を進める者 164 「……さない」  剣によって祭壇に縫い付けられた国旗をロゼウスは睨み付ける。両手には砂と変じてしまった弟の遺体を握りしめて。 「赦さない。――ルルティス=ランシェット!」  もはや道は別たれた。和解も妥...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 26

第18章 永遠に届かぬ遠く 153 「あなたにしか頼めないことです」  と、彼は言った。  代わりに彼が自分の望みのものをくれるというので、自分はその頼みを快く引き受けた。  振り上げた刃が鮮やかな薔薇色に染まる。磨かれた鏡面のような刀身に...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 25

第17章 理想郷の果て 148  皇帝には毎日、いくつもの書簡が届けられる。  しかしその日、帝国宰相リチャードが直々に届けてきたそれに、ロゼウスは驚きを露わにした。 「セラ=ジーネから? 珍しいな」  書簡、手紙とは言うものの、その形態は...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 24

第16章 死神の眠る国 147  懐かしい夢を見た。  もうこの世にはいない人の。  もうこの世に存在しない笑顔。  いつまで経っても忘れられない。  あの頃、あなたは私の世界だった。  ◆◆◆◆◆  ロゼウスはローゼンティア王国にやってき...