小説(BL)

薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 13

第6章 罪深き冠 062  赤みを帯びた茶の髪に、栗の実のような褐色の瞳を持つルミエスタ人。  この国の人間は、好色で有名だ。性的なことに対して非常に解放感が強く、好みの異性を見たら口説くのが礼儀だとすら言われている。  現在の国王は妃と愛...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 12

第5章 時の止まった物語 02 057  暗い闇だけの空間がある。  否、実際にはそこは闇だけの空間ではない。  果てのない天と呼べる空には星々のような赤、青、白、銀の細かな輝きが散り、足元は黒一色なのに僅かな明暗が光沢を見せる。  ロゼウ...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 11

第5章 時の止まった物語 01 051  皇帝の城で与えられた一室の露台から中庭を見下ろして、ゼファードは物思いに耽っていた。  ゼイルの埋葬の後、ルルティスがロゼウスから聞かされたようなことをゼファードも兄であるフェルザードから聞かされて...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 10

第4章 望み追い求め希う者 02 046  中庭を望む回廊を誰かが通りかかった。  その人物は廊下の途中で途方に暮れているルルティスとゼファードを見て声をかける。 「どうしましたか、そんな顔をして」 「ジャスパー王子」  皇帝領のもう一人の...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 09

第4章 望み追い求め希う者 01 041  え? 取材ですか? 今度は私に?  今忙しいのでお断りしま……ちょ、なんであなたがそれを! 一体どうやって?!  ……わかりましたよ。話します。話せばいいんでしょう?  私から見た皇帝ロゼウスにつ...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 08

第3章 無音の深淵 02 036  何故か彼らは演劇を見ることになった。 「何故?」 「そりゃ皇帝陛下がお命じになったからだろ」  何故かと言ったが、その部分は明白だった。皇帝の希望。希望というより命令で、しかし命令と言っても居丈高に言いつ...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 07

第3章 無音の深淵 01 030  青年は求めていた。 「くそ……! これも駄目だ。理論の途中で矛盾が……ヴェルツェグの公式を使えば……いやそれでもy24の座標点が……」  部屋の中に散らばった、何枚もの紙、紙、紙。その全てにびっしりと数式...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 06

第2章 十六夜薔薇と碧の騎士 04 026  あの青い青い瞳を、どうして忘れられるものか。 「皇帝陛下、わたくしはあなたのことを……」  為政者として言えば、突出して何かに優れているわけではない。けれど無能というわけではなく、つまりは普通の...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 05

第2章 十六夜薔薇と碧の騎士 03 022  フェルザードとエチエンヌの二人は行方不明のルルティスを捜索するため、フィルメリア王国に向かった。  少々反則な方法で。 「それにしても便利だね。この空間転移魔法とやらは。私もいつもエヴェルシード...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 04

第2章 十六夜薔薇と碧の騎士 02 018  一番古い記憶は、泣いている女の人の声だ。  覗きこまれている体勢だが、顔は思い出せない。うろ覚えの記憶の中、響いてくる声がある。  ――死んでおしまい! 忌々しい子!  その腕は伸び、こちらの首...