薔薇の皇帝

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薔薇の皇帝 23

第15章 魂の対価、祈りの行方136 聖人ラクリシオンと呼ばれる青年。彼の半生は現在の肩書とは裏腹に、血と憎悪に塗れていた。 彼の母親は花街の娼婦であった。とある貴族の妾をしていたが、子を身籠ったことを契機に正妻の憎悪を受け、居場所を追われ...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 22

第14章 罪重ねの箱庭125 大きな石造りの屋敷の、薄暗い地下室。 様々な薬品の匂いが立ち込める不気味な実験室で、一人の老人が文机に向かい一心に書き物をしていた。 インクを飛び散らせながら走るペンの先が綴るのは、手紙でも絵画でもない。最近発...
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薔薇の皇帝 21

第13章 玩具箱に眠る赤の女王117 そして少年は決意する。その書を綴ることを。 『薔薇皇帝記』 あまりにも激しく、鮮やかな、この時代の人々が生きた記録を。 ◆◆◆◆◆「殺してやる、殺してやる殺してやる! 私を見ないあなたなんて――!!」 ...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 20

第12章 禍の娘110 ――それはいつ頃の話だっただろうか。「どーしても、駄目なのですか?!」「駄目だ」「是非とも御再考を」「断る」「そこをなんとか」「却下だ」 全身で迫ってしつこくしつこく食い下がるジュスティーヌを、ロゼウスはやんわりと押...
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薔薇の皇帝 19

第11章 Miserere 02105「やはりここでしたか」 子どものように木に登り高いところから黎明の城下町の光景を眺めていたシェリダンは、足下からかけられた声に視線を落とした。「リチャード」 昔と同じ従者のお仕着せを身につけたリチャード...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 18

第11章 Miserere 01099「愛している。愛している。私の皇帝陛下。でも届かない。永遠に――」 主よ、どうか憐れみたまえ。
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薔薇の皇帝 17

第10章 聖暦前二年091  正門から砦に突入し、警備を攪乱する予定だった陽動部隊の方も、ルルティスたち呪具破壊部隊ほどではないが苦戦していた。 何せ人数が桁違いであり、兵士としての練度も王弟の直属の部下たちの方が上だ。それにこの砦の立地的...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 16

第9章 動乱のエヴェルード083 どこか遠くで、教会の鐘が鳴った。 白い鳥が灰色の空を切り裂くように羽ばたいていく。 「でしたら、その十年を私にください」 少年は言った。 真摯な瞳の色は少し違えど、その顔は記憶の中の面影にとてもよく似ている...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 15

第8章 荊這う扉076 世界にただ一人の皇帝と、世界で最高の能力を持つ王子は二人きりになる時間が多い。「――それに関しては、避けられないのですか」「ああ。どうにもならない」「では私はそれを見越した対処をします。ゼファードがもっと動いてくれれ...
薔薇の皇帝

薔薇の皇帝 14

第7章 造花の楽園069「ちょっと! 離してよ! あたしはこれから仕事なの!」 威勢のいい娘の声が、蒼天に突き抜ける。緑の畑が続く長閑な田舎町の景色に、そのやりとりはとても不似合いだ。「あんな貧乏酒場の給仕なんて、少しサボったところで問題な...