天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 044

第2章 永遠を探す忠誠の騎士 044.永遠を探す者  ――本当にお気の毒なことで。  ――まだ小さいのに、可哀想に。  葬儀屋の息子が亡くなったのは、子どもだけがかかる流行り病だった。  アジェッサの街ではすでに何人もの子どもが亡くなってい...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 043

第2章 永遠を探す忠誠の騎士 043.還れぬ場所  異端の科学者、マッドサイエンティスト ロベルト=コーニス。  エレオドの女軍人ヤトレフ将軍は、ロベルトをそう呼んだ。 「おい、いきなり乱入してきて剣を引けとはどういうことだ」  つい最近見...
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天上の巫女セルセラ 042

第2章 永遠を探す忠誠の騎士 042.偽りの復活  地下道の壁には一定間隔で新しい角灯が取り付けられていた。何人もの人間が出入りしている気配だ。  セルセラたちはファラーシャが機械の音がすると言った方向に向けて歩き始めた。  通路の片側に何...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 041

第2章 永遠を探す忠誠の騎士 041.その心に一輪の薔薇 「さて……ルチル神父が地図を持って戻って来るまで、ちょっとした反省会と行きましょうか」  タルテの形相に、セルセラ、レイル、ファラーシャの三人は説教を予感する。  吟遊詩人のラルムも...
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天上の巫女セルセラ 040

第2章 永遠を探す忠誠の騎士 040.人魚の鎮魂歌  つぎはぎの怪物。  誰もが「それ」を見た瞬間に思い浮かべる言葉だ。  怪物の皮膚は、文字通りいくつかの人の皮膚をあちこち縫い合わせたような継ぎ接ぎ。  骨格は人間のものではなく、民家ほど...
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天上の巫女セルセラ 039

第2章 永遠を探す忠誠の騎士 039.その目に鏡の欠片  窓のない会議室。広々とした空間に漆黒の円卓。  話し合いに必要ないものは持ち込まれず、簡素だがまったく質素には感じられない壁と調度。  創世神話の神々の雄姿が描かれた天井。床に敷かれ...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 038

第2章 永遠を探す忠誠の騎士 038.魂の導き手 「俺の名はラルム。人魚の不老不死性を活かして世界各地を巡る吟遊詩人です」  広場の噴水の彫像は、何の因果か人魚の像。涼やかに落ちる水の流れに、少年の青銀の髪がよく映える。  詩人の名乗りに、...
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天上の巫女セルセラ 037

第2章 永遠を探す忠誠の騎士 037.死者と不死者  どこからか歌が聞こえる。  そこだけ遠い冬の気配をまとっている。  今宵の演目は雪の女王。  悪魔が作った鏡。悪魔が落として割れてしまった鏡。  その欠片を目に入れた者は感情を失う。  ...
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天上の巫女セルセラ 036

第2章 永遠を探す忠誠の騎士 036.鉄帯が外れる時 「う……」  頭が重い。首の後ろがなんだか痛む。  慣れぬ感覚だと思いながら、クランは意識を取り戻す。瞼が重い。 「なんだ。結局こういう話になるんじゃないか」  体を起こす前に耳に飛び込...
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天上の巫女セルセラ 035

第2章 永遠を探す忠誠の騎士 035.忠義の果て  雑木林の向こうの小さな丘の上、いつの間にか夜闇に紛れる濃い紫色の軍隊が出現していた。  人数こそ五十人もいなかったが、そのうちの一部が一抱えもあるだろう大きな鉄の筒を持っている。 「あれは...