小説

Pinky Promise

Pinky Promise 056

第3章 歯車の狂うお茶会10.眠り鼠の沈黙 056 ――彼は、彼女の憧れだった。『ザーイ、ザーイ……ねぇ、どこに行くの?』『ムース、ついてきちゃったのか』 同い年の幼馴染の、十歳年上のお兄さん。ザーイエッツ=マルティウスは、ムース=シュラー...
Pinky Promise

Pinky Promise 055

第3章 歯車の狂うお茶会10.眠り鼠の沈黙 055「――あれは、恐ろしい男だ」 五十を過ぎてなお若々しい男が、その見た目に似合わぬ嗄れ声で言った。「当時わずか十代の少年が、この儂の作り上げた組織を壊滅寸前まで追い込んだのだからな……“白の騎...
Pinky Promise

Pinky Promise 054

第3章 歯車の狂うお茶会9.帽子屋の仮面 054 建物の影を使い密やかに闇に紛れる。パトカーのサイレンは明後日な方向に消え、彼は花で飾られたシルクハットのつばを指で支えながらほっと息をついた。 黄金の炎の中に消えるトリックは上手く行った。眼...
Pinky Promise

Pinky Promise 053

第3章 歯車の狂うお茶会9.帽子屋の仮面 053「まぁ、ダメでもともと、本人に接触して聞いてみればいいんじゃない?」「聞いてみればって……相手怪盗なんですけど」 怪人マッドハッター。その存在は、アリスたちが追う犯罪組織「睡蓮教団」についての...
Pinky Promise

Pinky Promise 052

第3章 歯車の狂うお茶会9.帽子屋の仮面 052「フートがテラスにぃ?! え、あいつ、いつから青少年保護育成条例違反してんの? 通報していい?」 フートはアリストにとって大事な友人だが、それはアリスにとってのテラスも同じである。最悪の事態に...
Pinky Promise

Pinky Promise 051

第3章 歯車の狂うお茶会9.帽子屋の仮面 051「ねぇ、見た?! この前のマッドハッターの犯行中継!」「おー、見たぜ」「俺も」 ジグラード学院の昼休み、たまたま前の授業が早く終わったのをこれ幸いにと、フートたちは食堂の一角を占拠していた。 ...
Pinky Promise

Pinky Promise 050

第3章 歯車の狂うお茶会9.帽子屋の仮面 050 ヴァイス=ルイツァーリ宅。白兎との因縁から現在世話になっている講師の家で、アリスはドキドキとギネカの訪問を待っていた。「視てきたわよ」「!」 訪れた友人は開口一番そう告げる。「ダイナ先生に触...
Pinky Promise

Pinky Promise 049

第3章 歯車の狂うお茶会9.帽子屋の仮面 049 夜の闇は彼を映し出す舞台に過ぎない。人々はそっくり返りそうな程に首を上げて、ビルの屋上を凝視した。 ざわざわとした曖昧な喧噪が、一つの声によって爆発的な歓声へと変わる。「いたぞ! “マッドハ...
Pinky Promise

Pinky Promise 048

第2章 歪む鏡の向こう側8.鏡の向こう側 048「へぇ。超能力についてバラしたんだ」「ええ。これからは向こうにちょこちょこ手を貸すことになるわね」「えー、俺を見捨てんの?」「あんたは一人で充分でしょ。私の用事を邪魔しないでちょうだい」「酷い...
Pinky Promise

Pinky Promise 047

第2章 歪む鏡の向こう側8.鏡の向こう側 047「そう、そんなことがあったの」 アリスはギネカに、改めて四月一日からこれまでに彼の身に起こった出来事を話した。ギネカの方は接触感応能力で簡単に情報を得たとはいえ、やはり当事者から情報の取捨選択...