小説

天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 054

第3章 恋と復讐と王子様054.王子に捧ぐ竜退治「エルフィス王って強いんだね」 魔獣討伐と人々の救出に一区切りがついて、ようやくこれまでの実働隊は休める余裕ができた。 人々の支援を始め、残った作業は領主であるアムレートが采配を振っている。セ...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 053

第3章 恋と復讐と王子様053.隠されしもの「レイル! ファラーシャ! 大丈夫か!?」 セルセラは瓦礫に埋もれる鉱山入り口の奥へと呼び掛ける。 転移の術は周囲に障害物が多い閉所で使うには向かず、入り口を塞ぐ瓦礫を吹き飛ばすのは、崩落による二...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 052

第3章 恋と復讐と王子様052.アムレート 中央大陸から青の大陸へと渡る貨客船は、表面上は何事もなく青の大陸東端の国家の一つ、ダールマーク王国の港へ入った。 魔獣に穴を空けられた部分は監獄が提供してくれた資材とセルセラの魔導で軽く応急処置だ...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 051

第3章 恋と復讐と王子様051.巌窟王たちの居場所 魔獣たちの襲撃を協力して乗り越えたことで、一行はこの砦こと、ペレカヌス島のディフ海上刑務所側の信頼を勝ち取った。「細かいことはさておき、まずは戦闘で怪我したやつらの治療な。船長、普通の乗客...
短編

黄昏は手を繋いで

黄昏は手を繋いで1.緋色の黄昏 ごとり、と音を立てて落ちる肉片をダニエルは声を上げることもできずにただ見つめていた。光を失った瞳が無機質に彼へと向けられる。首の切断面から溢れ出す血。 死は、もはやダニエル自身の上にも降りかかろうとその白く細...
短編

いつか素晴らしき未来で

いつか素晴らしき未来でprologue 歴史の片隅 時間だ、と男は言った。「これにでも着替えておけ。人生最後の晴れ舞台だぜ」 数カ月ぶりに水を浴び、言葉と共に渡された服を着る。まるで生き返るような心地だが、彼はそれが自分に与えられた最後の慈...
短編

WALTZ―悪魔と踊れ―

WALTZ―悪魔と踊れ―1.ハッピーエンドの舞台裏 物語のお姫様はいつも心も姿も美しくいて、そして王子様は格好良く、正義と愛を貫かねばならないらしい。 昨今のシャロン王国で流行りの小説も、貧しいが美しい娘が王子と恋仲になり、もともと王子の婚...
短編

夢術師の子守唄

夢術師の子守唄1.出会いは悪夢にて 今日もまた疲労に追い立てられて滑り込んだ眠りの中で、彼は悪夢に追われていた。 足下には白と黒の正方形が交互に並び、無限に連なって長い長い廊下を形成している。チェス盤にも似た床と、美術館のような壁。曖昧模糊...
顔のない男

顔のない男 04

第4章 顔のない男 Ⅱ15.王弟と暗殺者「残念だよ、リューディガー。お前は私の最高のコレクションだったのに」 何が起こったのかわからない。 わからないのに、リューの体の傷口からは血が流れる。銃が手から落ちた。この時代の銃は暴発などしないが、...
顔のない男

顔のない男 03

第3章 妄執の檻11.王子と少年と仮面の男「夢……?」 ここ数日、計画が順調すぎるくらい順調に行っていたために、少し油断していたようだ。ファウストは起き上がり、目元をこする。「……ちっ」 ついついやってしまう仕草なのだが、当然のように触れた...