小説(全年齢)

短編

Calamity Children

【1】 Calamity Children 夜語り  01.    闇は深く舞い降りて、木々の狭間で静謐と変わっていた。空と地を分ける境界線も、夜と言うこの時間の間はその身を休めている。世界は天も地もなく、等しく黒に塗りつぶされていた。今宵...
花は毒姫

花は毒姫 04

第4章 一度だけの聖女 10.始める者と終わらせる者  あなたが愛してくれたから、愛するということも理解できた。  ◆◆◆◆◆  シャウラとタラゼドは睨み合う。  二人の間にはこれまで常にシャウラの想い人であり、タラゼドの主人であるレグルス...
花は毒姫

花は毒姫 03

第3章 毒の花、鋼の竜 7.咲き誇る仇花の行方  ――でも、そうやって世界を恨むのはやめることにしました。  ◆◆◆◆◆  今日は《毒薬屋》の定休日だ。その時間を使い、シャウラはいつものように薬を作る。  慣れた作業手順に複雑な思考はいらな...
花は毒姫

花は毒姫 02

第2章 類は友を呼びすぎる 4.温室に眠る処刑人  自分が幸福になれないのだから、他の誰も彼もが不幸になればいいと思っていました。  ◆◆◆◆◆  その後もゼノは二日ほどかけて何人かの貴族に面会し、シャウラの情報を求めたが全ては空振りに終わ...
花は毒姫

花は毒姫 01

第1章 霊薬の民 prologue 跪いて毒をお舐め  花曇りのその日、昼下がりの王都。  腕の良さと主人の頑固さで評判の都一番の薬屋に、一人の客が駆け込んできた。 「大変なんだ!! どうか女房を助けてくれ!!」  数年前に、夫婦で隣国から...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 12

第3章 桜の花が散り逝く刻 12.桜の花が散り逝く刻 067  鵠は剣を構える。朔との戦いの時には素手だったが、今回の相手は蚕月だ。無手よりも得物があった方がいいという判断だ。 「なるほど、剣か」  蚕月も鵠の思考に気づいたのだろう。金色の...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 11

第3章 桜の花が散り逝く刻 11.君の夢が滅び望む刻 061  一体何が起こっているのか。まだ混乱を引きずったまま、鵠たちは一度朱櫻国に戻った。  蚕が敵になった。一言で言えばそうなのだが、それでもどこか腑に落ちない。  あの“桜魔王”は本...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 10

第3章 桜の花が散り逝く刻 10.血の花が降り注ぐ刻 055  先日は半ば桜魔側の自主撤退だったとはいえ、退魔師たちが桜魔王の襲撃を防いだという話は人間たちに大きく希望を与えた。  朱櫻国の王都には今までにない活気が戻り、魔王を倒すために赴...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 09

第3章 桜の花が散り逝く刻 9.悪い夢が燃え盛る刻 049  王都の廃墟に剣戟が響く。桜魔の襲撃を受けて一度放棄された地帯の一部は、退魔師たちの訓練場として活用されていた。  鵠、神刃、桃浪、蚕の四人は王都から遠い瓦礫の山の一つで戦闘訓練を...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 08

第2章 神の刃は黄昏に砥がれる 8.花は根に鳥は故巣に 043  結局桜魔王の屋敷に足を踏み入れることなく、その庭先とも言える森の中で戦闘は始まる。  鵠は桜魔王へと飛び掛かった。顔を合わせたことは何度かあるが、こうして実際に戦闘を行うのは...