小説(全年齢)

朱き桜の散り逝く刻

朱き桜の散り逝く刻 02

第2章 国王と亡霊 4.国王  嶺家の広い庭に白刃の煌めきが舞う。蝶々は愛用の薙刀を手に、武術の稽古に励んでいた。  常人の目には視えぬが、退魔師や霊能者と呼ばれる人種ならば気付くであろう、彼女の肉体を取り巻く、霊力と呼ばれる力に。蝶々はた...
朱き桜の散り逝く刻

朱き桜の散り逝く刻 01

prologue 邂逅――黄昏の出会い――  彼は追われていた。  森の奥のあちこちから、異形のものの視線が追ってくる。追手の数は六まで数えたが、その先は何匹いるのかもはや彼にはわからない。  影の中を泳ぐ銀の魚、一つ目の小さな猿、二股の尾...
短編

Calamity Children

【1】 Calamity Children 夜語り  01.    闇は深く舞い降りて、木々の狭間で静謐と変わっていた。空と地を分ける境界線も、夜と言うこの時間の間はその身を休めている。世界は天も地もなく、等しく黒に塗りつぶされていた。今宵...
花は毒姫

花は毒姫 04

第4章 一度だけの聖女 10.始める者と終わらせる者  あなたが愛してくれたから、愛するということも理解できた。  ◆◆◆◆◆  シャウラとタラゼドは睨み合う。  二人の間にはこれまで常にシャウラの想い人であり、タラゼドの主人であるレグルス...
花は毒姫

花は毒姫 03

第3章 毒の花、鋼の竜 7.咲き誇る仇花の行方  ――でも、そうやって世界を恨むのはやめることにしました。  ◆◆◆◆◆  今日は《毒薬屋》の定休日だ。その時間を使い、シャウラはいつものように薬を作る。  慣れた作業手順に複雑な思考はいらな...
花は毒姫

花は毒姫 02

第2章 類は友を呼びすぎる 4.温室に眠る処刑人  自分が幸福になれないのだから、他の誰も彼もが不幸になればいいと思っていました。  ◆◆◆◆◆  その後もゼノは二日ほどかけて何人かの貴族に面会し、シャウラの情報を求めたが全ては空振りに終わ...
花は毒姫

花は毒姫 01

第1章 霊薬の民 prologue 跪いて毒をお舐め  花曇りのその日、昼下がりの王都。  腕の良さと主人の頑固さで評判の都一番の薬屋に、一人の客が駆け込んできた。 「大変なんだ!! どうか女房を助けてくれ!!」  数年前に、夫婦で隣国から...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 12

第3章 桜の花が散り逝く刻 12.桜の花が散り逝く刻 067  鵠は剣を構える。朔との戦いの時には素手だったが、今回の相手は蚕月だ。無手よりも得物があった方がいいという判断だ。 「なるほど、剣か」  蚕月も鵠の思考に気づいたのだろう。金色の...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 11

第3章 桜の花が散り逝く刻 11.君の夢が滅び望む刻 061  一体何が起こっているのか。まだ混乱を引きずったまま、鵠たちは一度朱櫻国に戻った。  蚕が敵になった。一言で言えばそうなのだが、それでもどこか腑に落ちない。  あの“桜魔王”は本...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 10

第3章 桜の花が散り逝く刻 10.血の花が降り注ぐ刻 055  先日は半ば桜魔側の自主撤退だったとはいえ、退魔師たちが桜魔王の襲撃を防いだという話は人間たちに大きく希望を与えた。  朱櫻国の王都には今までにない活気が戻り、魔王を倒すために赴...