小説

花は毒姫

花は毒姫 01

第1章 霊薬の民prologue 跪いて毒をお舐め 花曇りのその日、昼下がりの王都。 腕の良さと主人の頑固さで評判の都一番の薬屋に、一人の客が駆け込んできた。「大変なんだ!! どうか女房を助けてくれ!!」 数年前に、夫婦で隣国から移住してき...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 12

第3章 桜の花が散り逝く刻12.桜の花が散り逝く刻067 鵠は剣を構える。朔との戦いの時には素手だったが、今回の相手は蚕月だ。無手よりも得物があった方がいいという判断だ。「なるほど、剣か」 蚕月も鵠の思考に気づいたのだろう。金色の瞳に面白が...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 11

第3章 桜の花が散り逝く刻11.君の夢が滅び望む刻061 一体何が起こっているのか。まだ混乱を引きずったまま、鵠たちは一度朱櫻国に戻った。 蚕が敵になった。一言で言えばそうなのだが、それでもどこか腑に落ちない。 あの“桜魔王”は本当に蚕なの...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 10

第3章 桜の花が散り逝く刻10.血の花が降り注ぐ刻055 先日は半ば桜魔側の自主撤退だったとはいえ、退魔師たちが桜魔王の襲撃を防いだという話は人間たちに大きく希望を与えた。 朱櫻国の王都には今までにない活気が戻り、魔王を倒すために赴く勇者た...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 09

第3章 桜の花が散り逝く刻9.悪い夢が燃え盛る刻049 王都の廃墟に剣戟が響く。桜魔の襲撃を受けて一度放棄された地帯の一部は、退魔師たちの訓練場として活用されていた。 鵠、神刃、桃浪、蚕の四人は王都から遠い瓦礫の山の一つで戦闘訓練を重ねてい...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 08

第2章 神の刃は黄昏に砥がれる8.花は根に鳥は故巣に043 結局桜魔王の屋敷に足を踏み入れることなく、その庭先とも言える森の中で戦闘は始まる。 鵠は桜魔王へと飛び掛かった。顔を合わせたことは何度かあるが、こうして実際に戦闘を行うのは初めてだ...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 07

第2章 神の刃は黄昏に砥がれる7.神の刃黄昏に砥がれる037 傷だらけで帰ってきた載陽たちを朔は不思議そうに出迎えた。 彼が載陽から言い渡された桜魔王としての務め――その第一歩は、何故か「留守番」だった。別に積極的に載陽の命令を聞きたいわけ...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 06

第2章 神の刃は黄昏に砥がれる6.朱き桜赤き川に流れ031 朔は日向でのんびりと昼寝を楽しんでいた。春の陽気が心地よい。 風が吹く度にひらひらと桜の白い花びらが散って、朔の上にも降りかかる。 一体誰が今の彼を見て、この大陸を恐怖と絶望に陥れ...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 05

第2章 神の刃は黄昏に砥がれる5.朱に交われば赤くなる025 山奥に倒壊音が響く。根元からへし折られた大木が周囲の木々や茂みを巻き込みながら倒れ、その下から二つの人影が飛び出してきた。 一つは白髪に藍色の瞳をした成人男性で、もう一つは淡い白...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 04

第1章 天を望む鳥は夜明けに飛び立つ4.紅い花、白い虫019 情報収集から戻った神刃を交えて、鵠たちは一室で額を突き合わせていた。「……とりあえず、今は辻斬り事件の解決を目的として動こう。あいつらを追うぞ」 考えても答の出ない蚕のことはひと...