小説

桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 03

第1章 天を望む鳥は夜明けに飛び立つ3.紅い夜、白い月013「むぅ……」 深い山の中で、少年は眉間に皺を寄せて考えた。 周囲には桜が散っている。 襲い掛かってきた桜魔たちの死体が変じた花弁と言う名の遺骸だ。「これはなんというか……まずいな」...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 02

第1章 天を望む鳥は夜明けに飛び立つ2.天を望み夜明けに発て007 かつて、“戦場の死神”と呼ばれた少年がいた。 朱櫻国王の暴虐を発端に、大陸中が戦火に燃えていた時代だ。 少年の名は火陵。身寄りのない彼は、自らを拾ってくれた主君を敬愛してい...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 01

第1章 天を望む鳥は夜明けに飛び立つ1.花発いて風雨多し001 夕暮れの時間を、黄昏という。 すれ違う相手の顔もわからぬ「誰そ彼」が変化したもので、これに対し明け方は「彼は誰」時と呼ぶ。その一方、夕暮れはこうも呼ばれることがある。 逢魔が時...
桜魔ヶ刻

桜魔ヶ刻 登場人物紹介

桜魔ヶ刻 登場人物天望 鵠 (あもう くぐい)白銀髪に紫がかった藍の瞳。25歳。花栄国の退魔師。ただし正規に協会に登録していない。一時期名を上げ、かつて最強の退魔師と呼ばれていた。両親は名家の出身だが同時に駆け落ち者であり、戸籍を誤魔化すた...
楽園夢想アデュラリア

楽園夢想アデュラリア 08

第8章 楽園夢想043:魔王の思惑 カチャカチャとキーボードに無数の複雑なコードを打ち込む音が響いている。大小様々なモニタが青い光を放つ薄暗い研究室に籠っているのは、魔族の王アンデシンだった。「魔王陛下御自ら、実に精が出るこったね」「天空か...
楽園夢想アデュラリア

楽園夢想アデュラリア 07

第7章 救世主の覚悟037:帰還「誰が問題児だよ」「誰が問題児ですか」「ははは。すまんな問題児で」「いやー、さすが女王陛下、見事な有言実行ぶりだよねぇ」 最初はユークだった。女王アルマンディンに忠実な部下。しかしその忠誠心が高すぎるあまりに...
楽園夢想アデュラリア

楽園夢想アデュラリア 06

第6章 願いの果て031:夜明け パイロープに連絡を入れて事情を説明し、サンたちは一度近くの街まで引き返してきた。 魔王側の戦力の一人を削ったものの。こちらもラリマールの離脱は痛い。神器があればいいと言うものではない。 ラリマールは神器使い...
楽園夢想アデュラリア

楽園夢想アデュラリア 05

第5章 魔王025:刻一刻「畜生!」 スーのいつもの八つ当たりに、周囲はもはや動揺もしない。 魔王アンデシンを前に、東西南北を司る神器使いの四将軍が集まっている。「へぇ、それで引き上げた訳か」「いけませんか?」 人と魔族、どちらかが滅びねば...
楽園夢想アデュラリア

楽園夢想アデュラリア 04

第4章 平和幻想019:西方将軍「で、結局奴らのどこが紳士的ですって?」「ごめん。今回は俺が間違ってた」 底冷えするユークの声に、サンは素直に謝った。 一見温厚に交渉するよう見せかけて、魔族のやり方は人間よりも余程過激だ。 サンとユーク、ラ...
楽園夢想アデュラリア

楽園夢想アデュラリア 03

第3章 聖者の選択013:祈りの果て 王都に戻ったサンたちは、アルマンディンに一連の出来事を報告した。「なるほど。そんなことがあったのか」 フロー一行が軍人の住んでいない小さな村を焼き討ちしたこと、魔王軍の進軍が早かったのは、その村を救おう...