【2】 Bloody Blood
prologue 呪われた愛
月が美しくも妖しい夜だった。
地には凄惨な死が描かれていて、倒れ伏した細い体からはどこまでも赤い血が流れ続けている。満足そうなその白い死に顔から、目を離すことさえできない。
「ファタル」
心中した男女の遺体から目を離さない連れに、少年は声をかけた。のろのろと振り返る青ざめた顔に、短く一言で促す。
「行こう」
「……ああ」
彼らが無為にこの現場に留まったところで、もうこの街でできることは何もない。誰も救えない。救いを望んでいる者もいない。
死者を救うことはできない。それに救われたいのは――本当は自分の心だ。だから。
「行こう」
終わりのない旅が再び始まる。