30.凌辱
本当の素性を吐かせるために拷問として、などという考えはすぐにプグナの男たちの頭から吹き飛んだ。
一度その身体を知ってしまえば、男たちはあっという間にラウルフィカに溺れた。夜を徹して、未成熟な少年の肌を堪能する。
初めは、万が一本物の国王だった時のために見分けのつきそうな人間を呼んで……とプグナ兵は考えたらしい。更に二人の人間を呼んできた。だが後から誘われてやってきたその二人も、すぐにラウルフィカに手を出さずにはいられなくなった。
もともと軍人などこうして僻地の戦に駆り出されてしまえば相手に飢えているものだ。何もなくとも男が男相手に誘いをかけただのかけてないだの、無理強いしたのしていないだの話が湧き上がるのだ。それを、捕虜として並の女以上に美しいと思える少年を渡された男たちが我慢できるものではない。
プグナにはラウルフィカ王の顔を知っている者もいる。当のプグナ王ファラエナ本人だ。彼はその昔先代ベラルーダ王との会談の際に世継ぎの王子であったラウルフィカのことも見ているだろうから、顔を見れば思い出すだろう。
しかし末端の兵士たちまでラウルフィカの顔は知れ渡っているわけではない。どうせ確認のためですら国王を呼ばねばならないのなら、一応王の前に引き立てようということで兵士たちの話は決着がついた。
彼らはラウルフィカを首都に連れていって王に差し出すことをさっさと決めると、後は堅苦しい話は無用とばかりに襲いかかってきた。
もともと「名前は?」「本当に王なのか?」など尋ねられながら、ラウルフィカを追い詰めるために太腿を撫でたり、乳首を抓ったりして悪戯していたのだ。段々と過激になる行為にラウルフィカが顔を赤らめて熱い息を吐けば、色っぽいその姿に男色家以外の男たちも美しい少年王にじわじわと肉欲を感じるようになっていった。
いつしか質問も尋問も消え、ただただラウルフィカに奉仕を強制する言葉、卑猥なからかいだけが小屋の中に飛び交うようになった。
◆◆◆◆◆
一人の男が胡坐をかいて足の上にラウルフィカを座らせる。少年の奥には男のものが深々と埋まり、彼を絶え間なく貫いていた。
更にラウルフィカは口を無理矢理こじ開けさせられ、別の男のモノを咥えさせられていた。それだけでは終わらず、両手にも、彼の上の口も下の口も味わえなかったと不満を訴える男たちの大きく硬くなったものを握らされて擦っている。縛られていたはずの手首は、それをするのに邪魔だからという理由だけで解かれた。
「ん、んんっ、ん」
最後の一人は完全に手持ち無沙汰だと、ラウルフィカの身体を弄りまわしていた。与えられた刺激に芯を持ち始めたモノに手を触れられて扱かれる。
「くっ、たまんねぇぜ。この締めつけ」
「早く交替しろよ」
後ろの穴を占領している男に、自分のモノをラウルフィカの手で擦らせるしかできない男が早く替われと催促する。
「口の中も最高だ。案外慣れてんじゃねーか、ベラルーダの王様よ。あんた国でもこんなことされてたのか?」
噛みつくこともせず、大人しく肉棒を舐めていたラウルフィカに男の一人が言う。ラウルフィカは男たちに対し、下手な抵抗はしなかった。五人、と頭の中で男たちの数を数える。
思えば人生を悪い方向に変えたあの日。いきなり寝室に押し入ってきてラウルフィカを犯したのもゾルタをはじめとする五人の男たちだった。自分はどうやらよほど五人という数に縁があるようだと思う。
口淫に耽っていた男が、男根を急に引き抜いたと思えば白濁液をラウルフィカの顔にぶちまけた。ラウルフィカは泣きそうな顔で言う。
「お……大人しくしていれば、酷いことはしないというから」
「そうだな。俺たちもまさか王様を殺すわけにはいかねぇからさ。あんたが自分で抵抗する力もないお飾りの王様なら、うちの国王様にも安心して引き渡せるってわけさ」
周りの男たちが囃したてる。一方、顔にかけた男は「せっかくの綺麗なツラをてめーの汚ぇモンで汚すな」などの非難も寄越されていた。
このまま犯されていればどうやらプグナの王のもとに行けそうだという話から、ラウルフィカは無駄な抵抗はせず、従順と言ってもいい態度で代わる代わる抱かれることにした。目の縁に涙の一つも浮かべて見せれば、彼らはラウルフィカの容貌から勝手に気の弱い少年だと思ってくれる。王に献上するまで傷付けてはいけないという意識があれば、男たちのラウルフィカの扱いはそう酷いものではなかった。
ただ犯されるだけ。延々と無理矢理抱かれ続けるだけ。
そんな程度のことなら慣れている。
今のラウルフィカは、五人の男たちに犯されて成す術のなかった五年前とは違うのだから。
「交替だ」
直腸の中にどろりとした感覚が広がり、男のものが引き抜かれる。
顔をその辺にあった布で拭かれたラウルフィカは、今度は獣のように四つん這いにされた。また後ろから別の男に貫かれ、口にも順番待ちをしていた男の張り詰めた肉塊が突っ込まれる。
「信じらんねーよ。こんなかわいい兄ちゃんが仮にも“国王陛下”なんだってな」
「うちの王様はムサいおっさんだからな」
ガツガツと容赦なく中を突かれ、口の中のものを必死に舐めながらラウルフィカは男たちの何気ない話に聞き耳を立てた。
「ムサいって、お前よりゃマシだろ」
「どうだかな。あんな美人の王妃様がいるのに俺らでも買えそうな下品な売女を何人も愛人にしてるんだぜ? 趣味がわかんねーよ」
「王妃様は魔女だって言うぜ。しかも女だから継承権の順位を下げられただけで実は国王様より血筋的には上なんだろ? 今の王様は王妃様の血筋に縋って即位したけど、それで王妃様に余計な対抗心持ってるんだってさ」
「へぇ」
五人もいれば、手持ち無沙汰になる男の二人や三人出てくる。後ろと口を犯す二人以外が主に雑談に興じていた。その情報をラウルフィカはひっそりと頭に叩き込む。プグナ王家のことは内情を知っているようで意外と知らないのだ。
「でもさぁ、この坊やはたぶんうちの王様の好みだよな」
「……ああ」
話が微妙な方向に転がっていった。
プグナ王は男色家でもあるらしい。自分よりも高貴な血統の王妃に劣等感を抱いている分、春女から侍女、美少年まで手当たり次第に手をつけているという。
「んっ――」
後ろを犯す男が先に達した。それを知って口を使っている男が舌打ちした。ラウルフィカの前髪を乱暴に掴むと、喉を突いてその刺激で射精する――。
「げほっ、ごほっ!」
「おい、あんま無理させんな! 王様への献上物だぞ!」
ラウルフィカは最後の意地で嘔吐だけは堪えたが、口の中に出された白濁液は全て零してしまう。暴れる胃液をなんとか落ち着かせようと身体の震えを堪えるが、口の中に苦いものが広がった。
「あちゃあ……大丈夫かよ」
敵国の少年王を自国の王に愛人として差し出せそうと知った男の一人が、床に体勢を崩して座り込むラウルフィカを腕で支えた。
「献上って何の話だよ」
「捕虜ってだけでなく、王様の愛人として売れそうってこと。もっと丁寧に扱えよ」
「じゃ、そろそろ一人ずつじっくり相手してもらおうか」
別の男がラウルフィカを今度は仰向けで押し倒し、中を抉りながら乳首に噛みついた。
「ヒァ!」
これまで男たちのモノで塞がれていた可憐な唇から高い悲鳴があがると、彼らの興味は再び少年の身体に戻った。にやにやと下卑た笑みを浮かべ、涙目で犯される様子を観察する。
夜明けは、まだ遠かった。