僕の愛しい勇者様 01

9.今日だけは妹*

 邪魔な奴らは全員追い出され、薬を作るためにローズベリーも宿の飯場に降りていった頃。
 ライアはソールと同じ部屋に二人きりだった。兄弟のどちらも、相手にかける言葉が見つからない状態だ。
「ら、ライア。あの、そのな……」
 それでも兄の威厳を振りしぼり、何とか言葉を探しながら口を開いたソールは……結局挫折した。
「兄さん……」
 そう呼んでソールの胸に縋る美少女姿の元弟はあまりにも可憐過ぎた。もはや犯罪的なレベルでさえあった。
 世界の期待を一身に背負う勇者を泣き顔一つで撃沈した弟は、どうにも落ち着かぬ胸を自らの手で支えながら、兄の方へ視線を向ける。
 と、黒髪の少年の目線が落ち着きなく自らの胸に突然現れた乳房へと寄せられていることにライアは気づいた。
「……兄さん? ひょっとして、この身体に興味があるの?」
「えッ?!」
 思ってもいませんでしたと主張するにはあまりにも過敏に反応したソールはカッと頬を赤く染めると、慌ててライアの姿から視線を背けた。しかしライアは自らに背を向けてしまった兄に、その豊かな胸を押しつけるように抱きつく。
「ラ、ライア」
「いいよ……触っても。だって兄さん、いつも勇者としての使命で忙しくて、女の子に声かける暇もないじゃない。それに僕、本当の女の子でもないし……それに――」
 ライアは自分にもてる限りの言葉を尽くして、ようやくソールに自分の方を向かせることに成功した。
「兄さんになら、僕、何されても大丈夫だから」
 ここに男が百人いたら百人ともの理性を引きちぎる勢いで、薄らと頬を染めながらライアはそんな爆弾発言をかました。
「ライア……」
 可愛い弟(今は妹だが)の健気過ぎる言葉に胸を射抜かれたソールは、その勢いのままライアを寝台に押し倒す。もちろん言葉の上では押し倒すという表現だが、その動作の一つ一つがまるで壊れ物を扱うように優しいのは言うまでもない。
「本当に……いいんだな?」
「うん」
 小さな声で、しかし迷うそぶりもなく頷いたライアの様子に、ソールの理性は焼き切れた。
「ふっ……」
 唇を重ね、その柔らかな感触を堪能する。続いて伸ばした指が胸の方に触れると、触られたライアだけでなくソールまでもが驚いたように手を放した。
「兄さん」
「本当に、女の子の体なんだな……」
 ソールの指が恐る恐ると、その形を確かめるようにライアの胸に伸ばされる。だんだんと大胆になり、毬のような乳房を掌全体を使って鷲掴みにした。
「ん……」
「ライア……」
 恋人にそうするように甘く名を呼んで、ソールは人並みの興味こそあれど経験足らずな男の、稚拙な愛撫を加えていく。
「あ、兄さ……」
 下の方にそっと指で触れると、すでに十分潤っていることがわかった。それでも念のためにと指一本だけ先に入れられて、ライアは思わず腰を揺らしてしまう。
「その、やっぱりこっちは」
「だ、駄目。やめないで……」
 いくらなんでも最後までするのはまずいだろうと、自分の方の欲望は無視して離れようとするソールの体を、ライアはその腕を掴むことで引きとめた。
「中途半端、はやめて。その方が、つらい、から……」
「ライア……!」
「あ! くぅ、ん、んんっ、んっ」
 思わず気遣いを忘れ去ったような激しい調子でソールはライアの身体を抱きしめる。ついで指を二本、先程触れてまたすぐ離れた場所にねじ込んだ。
 内部の熱さを堪能するように、ソールが片手でライアの身体を支えながら、中に入れた指二本をばらばらに、思いきり動かす。剣だこのできた指が内壁を抉るたびに、ライアは普段よりも幾分高い嬌声を上げた。
「兄さん……」
「ライア……」
 カチャ、とベルトを外す音がして、ライアは寝台の上に身を横たえたまま放り出された。
「本当に、いいのか?」
「うん……」
 何度目のかのソールの問いに頷いて、ライアはその背に腕を回す。魔術師の弟と違って剣士の兄の体つきは、体格こそ細身に見られるものの、十分に筋肉がついて引き締まっている。
「ふぁ……中、熱い、よう……」
「ライア……ライア……!」
 紛い物の女性の身体でも、かまわずにライアは兄を受け入れた。否、むしろこれが紛い物の身体だからこそ、こんな大胆なことができたのかもしれない。
「ああ、兄さん、兄さんっ」
 うわごとのように何度も何度も呟いて兄を呼ぶ声に、ソールの動きが一段と激しくなる。兄の方は兄の方でこのまま手加減なく相手を貪りたい衝動と、これは大事な弟だと理性で自分を抑える葛藤がある。
「兄さん……!」
 ローズベリーがその後無事に薬を完成させて戻ってくるまで、二人は何度となくお互いの肌を求めあった。