僕の愛しい勇者様 02

13.虜*

 どことも知れぬ空間で、ライアは突然地面に放り出された。
「うわっ」
 いきなりの行動に、それでも彼が体を打ちつけなかったのは、彼自身のとった受け身が上手だったからという理由ではなかった。ライアが放り出されたその部分に、ふかふかの絨毯が敷かれていたからだ。
「ここは……」
「我の城だ」
 言ったのは、青い魔物ラギーだった。城に着くなり目を覚ましたライアを放り出したシャギーは涼しい顔をしている。
 この場所はどうやらシャギーのアジトとなっていたセドゥムの古城と似たような構造の、オスム砦と呼ばれるラギーの城らしいとライアは知る。魔物たちが人間から奪い取った城は多少手入れの行き届いていない部分もあるが、やはりこれまでの洞窟などの粗末さとは大違いだった。
「お前は勇者たちをおびき出す餌で、奴らへの人質だ」
「ふざけるな! 僕は」
 さっと杖を取り出そうとしたライアの行動を、ラギーは少年の喉首を掴む動き一つで封じてしまう。
「威勢の良いことだ。だが勇者たち一行の力を合わせても我ら二人に勝てなかったのだぞ? 魔術師風情一人で何ができる」
「っ、それでも! このまま大人しく……人質になんかなってられるか!」
 無理に動かそうとした腕を逆に捕まえられて捻られると、ライアはたまらず悲鳴を上げた。
「無茶はしない方が良いぞ。非力なお前一人殺すことなど、我らにとっては造作もないこと。首一つと成り果てた無残な姿で仲間たちと再会したくはないだろう?」
 ラギーは脅す意味を込めてか、喉を掴まれて苦しげに身をよじるライアの頬に、べろりと蛇のように長い舌を這わせる。
「ひっ」
「ん……なかなかの美味だ。そうだな。ただここに置いておくのもなんだ。お前には精々我らの糧となってもらおうか」
「おいおいラギー、たった今その口で殺さないと言っていなかったか?」
 呆れたようなシャギーの声音に、ラギーと呼ばれる青い魔物は答える。
「殺しはしないさ。だがお前にもわかるだろう? この子どもの身体は強い魔力に満ちている。その血はさぞや甘いのだろうな」
「ヒッ……!」
 ラギーの鋭い爪がライアの衣装の胸元を斬り裂く。今までの雑魚とは段違いの実力を持つボスに刃物よりも鋭い爪を近付けられて、さすがのライアも掠れかけた悲鳴を上げた。
「ああ。まぁそうだな……何ともいえず美味そうな、いい匂いのする子どもだ。血ではなくてもこの身体から流れる体液には、さぞや魔力が詰まっているだろうさ」
 双子の魔物はライアを捕らえたまま目を合わせた。息の合った動きで、ライアを床の絨毯の上に拘束する。シャギーが両手を掴んで頭の方を固定すると、ラギーは足を開かせて邪魔なローブを払い避け、ズボンを引き裂いて生肌を晒させた。
 全体的な形は人間に近いが、部分部分は爬虫類と両生類を合わせたような姿の魔物たちはそれでも何をすればいいか本能的にわかっている様子で、ライアの足の付け根に指を伸ばした。
「や、やめろ! やめ……!」
 ラギーが大きな手で無造作にライア自身を掴む。抵抗しようとするライアの動きは、シャギーがその悲鳴ごと、舌で封じた。叫びかけた口に入り込んだ長く薄い舌にライアは怖気を感じる。
 これまでのモンスターはどれも人間とは似て似つかぬ姿をしていた。だから犯されてもこれはただ魔力目当ての行為なのだと耐えられた。しかしここまで中途半端に人間に近い魔物たちの行動は、ライアに一層の屈辱と怖れ、そして本能的な嫌悪感を与える。
 蛇のような薄く長い舌が、まるで接吻のように口内を蹂躙するのが気持ち悪くて仕方ない。思わずえづきかけるが、ここで吐けばその吐瀉物すらもこの魔物たちは喜んで吸いつくすのだと思えば耐えるしかなかった。
「はっ、はっ」
 解放された唇から唾液混じりの荒い呼吸が漏れる。唇を伝う涎をもう一度シャギーが舌で拭いとった。
「ひ……いやぁ……」
「なんてぇ甘さだ。力がみなぎって来る」
「だがこちらは全然だな。うんともすんとも言わん」
 体を弄られることによる快感よりも恐れが先に立ち反応しないものを見て、ラギーが眉を顰める。大きな指に熱心に擦られると、ようやく先走りが滴る程度にはなってきた。
 体液を啜ることによって人の魔力をその身に取り込む魔物たちはライアの流すそれ一滴さえ無駄にしないとでも言うかのように、ラギーはライアのものを口内に収めた。
「ふぁああ!」
 生温かい口内に収められ、長い舌に巻きつかれればライアは嫌が応にも感じさせられてしまう。ラギーは飢えた犬が水を飲むような熱心さでライアのものを舐める。
「気持ち良さそうだな。魔術師さんよぉ」
「ちが……違う! ちがう!」
「だが体の方は正直だぜ。お前の身体から垂れるものを、ラギーが美味そうに啜っているのがわかるだろう?」
「いやぁ!」
 自分よりも大柄な青年姿の魔物二体に押さえこまれていては、ライアに抵抗する術はない。それをいいことに、魔物たちは好き勝手なことを言ってくる。
「ここを使うんだろう?」
 腕は押さえこんだまま、シャギーの長い舌がライアの後ろに潜り込んだ。
「ひぃっ!」
 蛇のように長い舌、舌そのものが蛇のように自在に動く。それがライアの内側に入り込み、あろうことか内壁を抉りながら舐めている。
「や、やめろっ。気持ちわ……ふわぁああ!」
 指よりも熱く柔らかく、長いものがしかし明確な意志を持って入り込んでくる。質量はあまりなく、その心許なさに逆に身体は生殺しのまま疼かされた。
「あ、あっ……ふぅ、う、んっ……ふ……」
 前を後ろを、舌で抉られ、扱かれる。その生温かい刺激にライアは段々と高められた。
「も、や……」
 魔物たちの蛇の舌のような細い舌で中を弄られながら、ライアはぽろぽろと涙を流す。散々弄られているのに、決定的な刺激が、確かな質量のあるものが来ない事に下腹が絶え間ない疼きを訴え続けている。
「シャギー」
 ライアが涙を零していることに気づくと、ラギーが少年のものを口で咥えたまま、器用に片割れの名を呼んだ。それまでライアの後ろに入れていた舌を抜いて、シャギーは今度は頬を伝う滴を舐め始めた。
 また体勢がかわる。ラギーがどれほど刺激しても弾けそうにないライアのものから舌を離すと、自らの下半身に手をやった。
 人間の衣服を真似たズボンの中から、その欲望を取り出す。それを先程までシャギーが解していた後ろの孔に、予告もなく突っ込んだ。
「ヒッ……!」
 いきなりズンと奥まで突きあげてきたものの圧倒的な大きさにライアは緑の瞳を零れんばかりに開いて苦しい悲鳴をあげた。シャギーの指が今度は硬く張り詰めた胸の突起を弄りだす。
 ライアが気を失うまで何度も何度も、魔物たちは少年の身体を貪り続けた。