荊の墓標 10

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「ロゼの様子がおかしい? そんなの、いつものことじゃない」
「それが妹の言う台詞か」
 昨夜のロゼウスの様子はおかしかった。が、幸か不幸か、シェリダンには今現在心当たりがない。なので、わざわざこうして執務の空き時間にそりの合わない相手の部屋を訪れたのだが。
「だって、知らないものは知らないんだもの。イスカリオット伯爵の城から戻ってから? って、何かあったっけ?」
「特に心当たりはないんだけど。そもそもまだ二日くらいしか経ってないじゃないか」
 シェリダンの正面に座るロザリーに水を向けられて、背後に控えたエチエンヌも首を傾げる。ローラもわからないと言っていたし、リチャードも心当たりはないと。
「考えられるのはあの時に城でジュダに何か言われた、ぐらいだが」
「その後嫌味らしきこと言い返してたわよね。それだけなら、あんまり引きずることもないと思うんだけど」
「だろうな」
 昨夜、隣でうなされる様子に気がついて真夜中に目が覚めた。苦しい顔をしたロゼウスを無理矢理起こしたら、目の前で泣かれた。
 いつものように手ひどく扱った後ならばその理由に納得も行く。だが、昨夜は何もしていない。ただ単に背中を合わせるようにして眠っていただけなのに、一体何があったというのか。問いただしても、ロゼウスは何も答えない。何も。何一つ。
『奴隷の分際で私に嘘をつこうとはいい度胸だな』
『だって、本当に何もないんだよ。強いてあげるなら夢を見てたってことぐらい』
『その夢の内容は』
『もう忘れた。嫌な夢だったってことぐらいしか覚えてない』
『本当に?』
『本当に』
 世の女性は、男の目を見ながら嘘をつけるという。ロゼウスは男だが、堂々と人の目を見て嘘をつける男だ。比べても気にしても仕方がないのだが……このように埒の明かないことを昨夜からぐるぐると考え続けてしまうのが問題だ。
「とにかく、お前たちは何も心当たりはないんだな」
「ないわ」
「ありません」
「……そうか。わかった。手間をとらせたな」
「いいえ、シェリダン様、でも」
「何だ?」
「……すみません。何でも、ありません」
「エチエンヌ?」
「ごめんなさい。僕の勘違いみたいです。忘れてください」
 何を言いかけたのか、ひたすらに困ったような顔で謝り倒されてこちらの方が困った気分になる。それ以上問い詰めることもできずに、シェリダンはエチエンヌとロザリー夫婦の部屋を後にした。
「くそっ!」
 赤い絨毯の敷かれた廊下を歩きながら、シェリダンは一人悪態をつく。幸いにも今は誰も人がいない。角を曲がればまた誰かに会うだろうが、今のところは誰の姿も見えない。私室に戻ってこそ言えなくなる類の愚痴を、吐き出す。
「何故、この私があいつのことなど気にかけねばならないんだ」
 そもそもどうして自分の部屋で愚痴の一つも吐けず、こんなところで壁に向かって悪態をつかねばならないのか。いっそそろそろ王妃である彼にも部屋を与えて、正式に寝室を分けようかと考える。
 もともと、王侯貴族は夫婦といえどもそれぞれの個室を持ち、同じ部屋で普段から寝泊りしたりしない。シェリダンがそうしているのは、ひとえに敗残国の奴隷王子に屈辱を与えるため――。
 考えて、けれどまたあの昨夜のロゼウスの様子が脳裏を過ぎる。
 うなされて飛び起き、声をかけたのがシェリダンと知って浮かべた、あの無防備な表情。闇の中でも鮮やかなあの白い面が崩れることすらなく、ただ機械的にぽろぽろと大粒の涙が零れる、壊れそうに儚い姿。
 部屋をわけたら、共に寝ることなど肌を重ねるときぐらいしかないだろう。あんな表情を見ることもなく、夢の中とはいえ、うなされて苦しみながら一晩中過ごさせるのか?
 それは、なんとなく嫌だった。とはいえ、そうでなかったらあの淫乱王子のことだ。自分の眼がなくなれば、さっさと別の相手を連れ込むという可能性も考えられる。あのような姿を、他の相手に見せる。男でも、女でも、それを見るのが自分ではない、ということ。
 それは、もっと嫌だ。
「……っ、くそっ!」
 意味をなさない悪態を繰り返し、壁を殴りつける。叩き付けた拳がじんと痺れ、滲むような痛みを訴えてきたが、かまいはしない。
 心の痛みより体の痛みの方が楽だ。後者はいつか必ず消える事がわかっているが、前者は永遠に消えないのかもしれないのだから。
 ふと思いつき、それは案外いい手ではないのかと気づいた。体の痛みの方が楽だ。しかし体の痛みはわかりやすく、短期間とはいえ、そちらに意識を集中させれば心の痛みをしばらくは忘れていられる。そのしばらくの間に、心の痛みの原因を取り除ければ、あるいは……。
「……リチャードに道具を集めさせるか」
 シェリダンの意識は昼日中から夜の遊びへと向かう。
 午前中すでに午後の分の執務も終らせてしまった。もともとエヴェルシードは気候が安定しているので、軍事以外で特に問題が起こったという話を聞くこともない。急を要する案件もなし、少しぐらい自堕落な思考に陥ったところで責められる謂れはない。
 戻ったらさっそくリチャードに道具を揃えさせよう。そう決めた。うんと手ひどくして、あの白い肌に無数の赤い傷を残してやる。その痛みを思い、その痛みを与えた私のことしか考えられないようにしてやる……。
 シェリダンがかつてそうだったように。
 怪しげな道具で責められて、手錠に拘束され鞭打たれ。父に夜毎苛まれていた頃を思い出す。あの頃は憎しみしか感じなかった。鞭の傷痕が疼くたびに、シェリダンは父への憎しみを膨らませていた。その父も、もういないが。
 異常とも言えるやり方の数々を覚えたのはその時だ。あの男は完全に性的倒錯の異常者だった。自分の息子を寝台に侍らせるのだから、当然だ。
 そこでふと気づく。あの男の息子である自分が、異常なやり方を数多く知っていたところで不思議でもない。しかし、ロゼウスは?
 思えば、あの男は知りすぎている。初めて体を重ねたときも、やけに慣れた風情だった。その時はシェリダンも終盤とはいえ戦時下の興奮状態にあったし、これからの計画に思いを馳せていて深く疑問には思わなかったが……これまで幾度となく肌を合わせて、ようやく違和感の正体に気付いた。
 ロゼウスは同性に『抱かれ』慣れているわけではない。あれは……『犯され』慣れているのだ。
 あの危うい、儚いほどの美しさの原因はそれだ。
 本人こそが魔族だというのに、自分が獰猛な獣になったような気分で、引き裂きたくなる、男の劣情をどうにも煽る、あの……。
 イスカリオット城であったことを思い出して、きりきりと心臓が締め上げられる。未遂とはいえ、むしろ傍から見ても明らかに返り討ちにしていたとはいえ、ロゼウスがジュダに押し倒されたと聞いて、シェリダンは涼やかな表情の仮面をつけた下で、煮え立つような怒りを覚えていた。
 それが何を意味するのか、朧げながらわかっている。認めたくないと思うことこそが、その証明だということも。
 これは幼稚で愚かな、嫉妬だ。
「畜生……っ!」
 どうして、こうも上手くいかない。シェリダンはロゼウスを、某かの感情を向ける対象としてローゼンティアから攫ってきたわけじゃなかった。ただ、滅茶苦茶に引き裂いて踏みにじって傷つけるだけの慰み者でいいと。
 放っておけばいいのだ。ロゼウスがいくら泣こうと苦しもうと、心のバランスを崩して廃人になろうと。シェリダンが惹かれたのはあの顔、体。容れ物の方なのだから。心なんていらない。いらなかったはずだ。
 ああ、苛々する。
 何故シェリダンがこんなところでひとりで悩まねばならない。何故、あんな奴のことで。
踏みにじってやればいいじゃないか。最初の目的どおり。だって。
 ――俺はあんたを愛したりしない。一生、好きにはならない。
 どうせ幾らやったところで、身体以上のものは手に入らないのだから。
 まただ。また胸が苦しい。締め付けられる。
 とりあえず何をするにも部屋へ戻らないことには始まらないだろうと、足を進めようとした、しかし。
「陛下!」
「何だ?」
 曲がり角の向こうから、酷く焦った様子の兵士が駆けてきた。シェリダンの姿を認めた途端に一言、切羽詰った様子で叫ぶ。
「城内にヴァンピルが侵入しました!」
「……どういうことだ?」
「二十歳ぐらいの女で、自分はローゼンティアの王女だと名乗っています!」
 思いがけない報せを受けて、シェリダンは目を見開いた。

 ◆◆◆◆◆

「おい、お前、ここは許可を持たない者は入れないぞ!」
 目の前を平然とした顔で通り過ぎようとした相手を捕まえて、勢い込んでそう言った。自分はこの城門を守る兵士の一人なのだ。たかが薄汚い格好をした女風情に、ふらふらと慣習を守られては困る。
 軍事国家であるエヴェルシードの城は外観こそ華美であるが、その仕組みはまさしく要塞と言うにふさわしいもので、その正門を任される事は間違いなく栄誉なことだ。有事の際には城の守りの要ともなるが、今は落ち着いているし、だいたい他国に侵略することの多エヴェルシードが自国の王城にまで攻められる劣勢に陥ることなど、想像もできない。この職を得たときはやっと自分にも運が向いてきたと、家族に苦笑されるほどはりきったのだ。
 華麗な装飾を施されつつ実用にも耐える槍を持って、正門脇に控える。正門の横には通行証や許可証、身分証明書など何か王や宰相の御前に伺うにふさわしいと思えるだけの理由を示す証明書を見せないと遠さないと言う、検問所がある。そこで許可を出された者にだけ、自分たちはこの正門を開くのだ。時々正式な許可を得た人々の後にくっついて無理矢理城に突入しようとする不心得な侵入者を捕まえることも、自分たちの役目だ。
 しかし、今日の侵入者はやたら変わった相手だった。薄汚い身なりではあるが、その服装からすると女である。しかもフード付きのマントを被っているとはいえ、体格から見ると随分華奢で、それでいて仕草が貴族の娘のようにどことなく品を感じさせる。
「あら? 入れてくださらないの?」
 声をかけると女は初めて自分たちの存在に気づいた様子で、自分を含め正門の周りに立っている十人ほどの兵士を見回し、さらには正門横の小さな窓付きの小部屋、所謂検問受付へと視線を向けて、困ったように小首を傾げた。
「許可を持たない者は、だ」
 他の兵士たちは面倒ごとは御免だとばかりに槍を体の横に立てたまま知らん顔しているので、必然的に一番最初に声をかけた自分がその後も会話を続けることになる。
 まあ、この相手は何か汚い罵詈を喚き散らしながら無理矢理中へ入ろうとする小汚い乞食やせっかく見逃されたのにわざわざ雑言を吐き出しに来た無様な敗戦国の生き残りでもないようだから、それほど会話が苦になることもあるまい。そう思い、物を知らない子どものような態度を見せる女に、説明を加えてやる。
「恐れ多くもこの門は我がエヴェルシード国王陛下の御前に繋がる門だ。通る者には、王の御前に出向くだけの用件や身分が必要なのだ。お前はその格好から察するに貴族ではないな?」
 女は少し考えるようにまた小首をかしげ、ふるふると首を振った、その動きに合わせて、目深に被ったフードが外れそうになる。頼りなく頭に引っ掛かったその隙間から、長い髪が零れた。
「確かに、私は貴族……とは違いますわ」
 銀髪?
 思いがけない色に思わず目を奪われながらも、声と体型から若い女だと思ったがもしかしたら老婆や苦労している者ならありえないこともないだろうと、気を取り直して説明を続けようとする。
「そうだろう。平民だとしたら、許可証が必要なんだ。それは居住区の最寄りの役所で作成してもらえる。何、一週間かそこらの辛抱だ。一度街に戻って許可証を作ってもらい、それを持ってもう一度来い」
 右で左で、仲間の兵士たちが小声で会話を交わす。女のあの見事な銀髪、あれはやはり老婆のものではあるまい、と。だとしたら外国人。銀髪と言えば、紫の暁国ウィスタリアの民か何かだろうか。
 女のほっそりとした体つきといかにもおっとりとした様子に、邪な思いを抱く者も出始めているようだ。仲間たちの間で交わされる隠語の示す卑猥さに、頭が痛くなる。正門守護という名誉職でありながら兵士など所詮は女っ気のない職場だ、特にこの男尊女卑のエヴェルシードでは。結果的に軍部に所属する者は常にその手のことに飢えている。
 まさか仮にも王城の警備に当る者が手当たり次第に若い女につかみかかるわけではないが、こうしたたいして身分のなさそうな平民の娘で、しかも気が弱そうなタイプは狙われやすいのも事実だ。さらに目の前の女はフードの奥から見え隠れする顎のラインを見てもやはり若い。そして態度や言葉遣いから考えると、貴族ではないがそれに近いような家柄か、どこか没落した名家の筋めいた品の良さを感じさせる。
 現在の国王シェリダンの意向によって女性への暴行罪が前王の時代より大分厳しくなったが、それでも人の欲望は押さえきれまい。さらに、こういった種類の罪は被害者が滅多に名乗り出ず、泣き寝入りになることも多い。それを見越して欲望を満たそうとする輩がこうした王城警備の者の中にもいるのだから厄介なものだが、逆恨みで国王に直訴をするんだと意気込んでくる相手をいちいち言葉で追い返すだけではきりがないのも事実だ。男だったら一、二発殴って追い返すこともあるくらいである。
 もちろん、言葉で説得できればそれに越したことはない。同僚の一部が面倒なことを引き起こす前にと、さらに女に帰るよう促した。
「とにかく、他国使節通行証、許可証、貴族身分証名書、このどれかを手に入れて、出直して来い。でなければ」
 言い終わる前に、女がするりとフードを脱いだ。
「お願いです」
 正門守護にあたっていた面々は誰も彼もが、呆気にとられる。情けなくも口を開けてぽかんとしてしまった。
「私は王城に入りたいの。エヴェルシード国王シェリダン陛下に、どうか会わせてくださいません?」
 あの高い木の花をとってください、という頼みごとをするのと同じような気安さで、女は大変なことを言う。
 しかもこれまでフードに隠されていた素顔が明かされた。その髪は銀髪。その肌は恐ろしく白い。その瞳は血のように赤い。尖った耳は魔族の特徴とも言える。
「ヴァ、ヴァンピル!!」
「ローゼンティア人か!?」
 それはこの国と国境を接する隣国ローゼンティア、いや、この国に滅ぼされた植民地の一つである国の民の外見だった。
 そして、女は美しい。下町のちゃきちゃきとした働き者の看板娘とは違う、それこそ貴族か王族か、お姫様のような優雅な美しさだ。
「と、捕らえろ! ヴァンピルだぞ!」
 ローゼンティアは二ヶ月ほど前にエヴェルシードに滅ぼされ、その国民で生き残った者は全て奴隷にされたはずだ。彼らはもともとの領土であるローゼンティアに留め置かれ、それぞれに監視者である新たなエヴェルシーンの領主をつけて奴隷と化した吸血鬼たちの動向を見張っている。脱走者はすぐに捕らえられて死刑にされるし、いなくなった国民がいたらすぐに報告が来るはずだ。エヴェルシード国内にいるのはそれこそ王妃となった元ローゼンティアの姫君ぐらいで、なのに、こんなことは聞いていない。
「国王に会わせてください」
 捕らえろ、の号令にいっせいに槍を構えた兵士たちに怯むこともなく、女は正門に歩み寄ってくる。
 その動きを見かねて、ひとりの兵士が槍を突き出した。その兵士は先陣を切るだけの度量があるくらいだから、武力もこの中では一番優れている。だが。
「どうしても、国王には会わせてくれないようですね」
肩にとまった虫をつまむかのごとく簡単に、女は素手でその槍の穂先を受けとめた。
「まあ、血が」
 刃物を素手で掴んだのから当然だ。流れた血に声をあげたものの、すぐに笑顔に戻り、槍を掴んだ腕に力を込めてその兵士の体を引き寄せる。普通なら指が落ちるところだろうがそんなこともなく、むしろ警備の者たちが驚愕したことに、槍を介しての力比べに男は負け、呆気なく彼女の腕に囚われた。
「一番最初に私に向かってきましたものね。覚悟の良い男性は好ましいですわ」
 女の細腕に抱きかかえられた男はびくともせず、女は背伸びするようにして、男の首筋へと口元を寄せた。
「ぐああっ!」
 短い悲鳴が聞こえて、男の体がびくりと釣られた魚のように跳ねた。ここからでは男の後姿とその背中に回された女の腕しか見えず、何をやっているのかよくわからない。
 その答えはすぐに知れた。男が体の力を失い、地面へと倒れたのだ。そして両腕が自由になった女は、真っ赤な血に濡れた口を拭う。
辺りは怒りと恐怖で騒然となった。
 エヴェルシードの誇る王城警護兵たちは次々に彼女に襲いかかっては、あっさりと返り討ちにされていく。女は腕に武器らしきものを持ってはおらず、倒れた兵士から槍を奪うこともしない。二人がかりですらまったく動じず、言葉もなく瞬時に相手を地面へと叩き伏せていく。
 ついに彼の番が来た。
「あら、あなた、最初に私に忠告をくれた真面目な方ですね」
 吸血鬼の女は、あれだけのことを成し遂げたとは思えないほど美しく親しみやすい笑顔で話しかけてきた。
 彼は動くことも出来ずに彼女の言葉を聞き、干からびるまで血を吸って殺されるのを今か今かと待つ。
 白い指先が頬に触れる。
「お仕事、御苦労様です。私にとっては邪魔でしたけれど、エヴェルシードとしてはいい兵士なのでしょうね。だから、あなたは見逃してあげましょう」
 そう言って、彼女は彼の首筋にも唇を寄せた。小さな口なのに恐ろしげな白い牙が覗き、次の瞬間それは彼の首につきたてられていた。
 一瞬チクリとして、その後はほとんど痛みはなかった。むしろ全身の力が抜けていくのと引き換えに、微かな快楽めいたものを感じる。
 自分の体が地面に倒れるのがやけにはっきりとわかった。
「モ、モリス!」
 相手にもされなかった検問所の小太りの受付係が叫ぶ。
「殺してはいませんよ。今までの人たちも。最初の人とあなた以外は、ちょっと乱暴にしてしまいましたけどね」
 そして自分は貴族ではないと言った女が、騒ぎに気づいて増援としてやってきた新たな兵士の一団を目に留めて、ようやく名乗る。
「私は故ローゼンティア王国第二王女、ルース=ノスフェル=ローゼンティア」
 慈愛深いとすら思えるほどの微笑を浮かべて、彼女は言った。
「さあ、エヴェルシード国王シェリダンに、会わせなさい」
 やってきた新たな兵士たちはもちろんそんな簡単にその言葉を聞くわけはなく。