荊の墓標 17

089*

 ローゼンティアは薔薇の王国。
 この世界《アケロンテ》は主に、三つの大陸から成る。北の大陸シュトゥルム大陸と、南の大陸バロック大陸、そしてバロック大陸の西にある《完全なる大地》、皇帝領だ。細長い土地が中心部に向かって螺旋を描く薔薇のような形から、薔薇大陸とも呼ばれている。
 ローゼンティアやエヴェルシード、シルヴァーニにウィスタリア、セルヴォルファスなどの国々がある北の大陸……ここは別名虹の大陸とも呼ばれている。吸血鬼の国ローゼンティアと、人狼の国セルヴォルファスを除く七つの人間の国が、それぞれが戴く《色》を持っている。他の二国も色を戴いてはいるのだが、ローゼンティアは風の王国と呼ばれ白を抱き、セルヴォルファスは大地の王国と呼ばれ黒を抱いているので、虹の七色とは関係がない。
 ロゼウスたちヴァンピルの国ローゼンティアは、別名を《薔薇の王国》と言った。開祖はロザリア=ローゼンティアという女性だが、それよりもっと前の時代に、皇暦開始に携わったロゼッテ=ローゼンティアを先祖に持つ古い血の一族だ。それもそのはずで、ヴァンピルの寿命は平均四百年であり、一定の年齢になると体の成長が遅くなる。従って人間なら兄妹に見えるほどの外見年齢の親子も存在する。
 国の要たるローゼンティア王城、そして国自体が、薔薇に包まれていた。ヴァンピルたちの生活に吸血の衝動と狂気を押さえ込む薔薇の秘薬は欠かせず、国中で薔薇を育てていた。ローゼンティアの土地に咲く薔薇は他の国にない大輪で色濃く、芳醇な香りを常に放っていた。それは自然から手を加えていないがどこかで吸血鬼の魔力と連動しているのか、一年中枯れることのない薔薇だった。
 紅い、紅い、血のような薔薇。荊。
 その荊に閉ざされた国、ローゼンティア。魔族と人間はただでさえ種族の違いがあるのに、国の外観がそれではさぞかし他の人間の国々は付き合いづらかっただろう。
 黒い石造りの王城の外壁一面を銀の荊が覆い、紅い花たちは誰が望まずともまるで吸血鬼の街を飾るようにそこに咲いていた。昼夜逆転の生活を送るヴァンピルの国では、昼間はほとんどの吸血鬼が眠りについている。
荊に閉ざされ、茂った木々が空を閉ざした秘密の国、ローゼンティア。ロゼウスの故郷。昼間に訪れた人間の客からは、きっと何もかもが息絶えているような状態に見えただろう。かの国の王城はそういった外観だった。
 けれども、吸血鬼たちの国は夜になると息を吹き返す。
 夜になると、途端に蝋燭の明かりを灯して吸血鬼たちは活動を開始する。人間より圧倒的に視力が良いので、多少薄暗い程度は問題にならない。それに吸血鬼の白皙の肌と白い紙は、闇夜の中でよく目立つから問題もなかった。
 それでもロゼウスがよく思い出すのは、明け方。
 紫の国ウィスタリアの人々の瞳の色のように薄く、それでいて鮮やかなアメジストの空が広がる夜明け。昼に眠るヴァンピルにとって、夜明けは人間たちにとって夜中と同じ意味を持っていた。人間と違って少しだけ日光に弱いヴァンピルにとっては、陽の光はできることなら浴びたくない。だから明け方になると、もうどこの家でもローゼンティア人は眠っている時間帯だった。
 けれどロゼウスは、人間の生活に例えるならば夜更かしにあたるような不健康な生活をしていて、明け方はいつも兄上の部屋に行っていた。
 第一王子ドラクル。ロゼウスが七歳の頃にはもう完全にロゼウスの身体で肉欲処理を行っていた兄の命じるがままに、その寝台に侍る。
 窓枠に絡んで軽く覗いていた薔薇の花を隠すように、これから来る朝の光を部屋に入れまいとドラクルが窓の紗幕を下ろす。ロゼウスは彼の寝台の上で、ドラクルのその時々の気分のままに、兄の要求を受け入れていた。
 断ればまた、どこかを殴られる。ヴァンピルの身体能力は人間よりも遥かに優れていてそれは再生能力だって例外じゃない。傷ついても数時間程度、それこそ骨折程度の傷なら一晩で治せるヴァンピル相手なら、どんなに殴ったところで周囲の人々が起きはじめる頃には痕も残らない。
 だからか、ドラクルは体の他の箇所より、むしろ殴る時ははっきりと顔を打つのが好きだった。腫れて熱を持った頬に手を当てて涙目で見上げるロゼウスを、冷めた目で見下ろしていた。
 剣の稽古や体術の訓練で、怪我などいくらでもする。対戦相手が誤って、目論見以上の怪我を負わせられることだってままある。
 それでも、ロゼウスはそんな予測不可能の大怪我より、小さい頃ドラクルに殴られた記憶がある、そちらの方がよっぽど怖かった。
 七歳頃、初めて後ろにドラクルのものを受け入れた時は、それまでの口での奉仕など比べ物にならない苦しさと痛みと恥ずかしさと気持ち悪さに、思わず泣き叫んで拒否しようとした。するとその時は、いつもよりよっぽど乱暴に兄から扱われた。次の日はさすがに動けず、ロザリーやミカエラに多大な心配をさせたものだ。
 もう、ドラクルには逆らえないのだと知った。
『私の言う事をきけないなんて、悪い子だね』
『俺、悪い子なの……?』
『ああ、そうだね。……ふーん、その口調、アンリの悪い癖が移ったな……まあ、それはおいておくにしても、悪い子は私だけじゃなく、父上にもルースたちにも、お前を大好きなロザリーやミカエラにも嫌われてしまうよ?』
 だからこのことは、誰にも言ってはいけないよ……。ドラクルの声が、言葉が、ロゼウスを呪縛する。
 歳を重ねるごとに、兄の遊戯は酷薄さを増していくようになると感じた。そしてその感覚は、気のせいではない。
『兄様……』
 命じられた通りに寝室の扉を開ける。中で手招きする兄に従って、部屋の中へと足を踏み入れる。
『服を脱ぎなさい、ロゼウス。下着も、ブーツも全部だ』
 命じられるがまま、服を脱ぐ。その間ドラクルはずっと値踏みするようにロゼウスを見ていて、居心地が悪い。ただぼんやりとしているだけならともかく、明らかに卑猥な意味の込められた視線で見つめられて、羞恥で頬が熱い。
 裸になったロゼウスを、ドラクルは楽しそうな顔で見ている。
『こっちへおいで』
『……うん』
『いい子だ、ロゼウス』
 ロゼウスがきちんとドラクルの言うとおりにすれば、ドラクルはロゼウスを褒めてくれる。いい子だと言ってくれる。
 椅子に座ったドラクルの眼前に立つと、彼は口元に薄っすらと笑みをはいたまま、寝台横のチェストから怪しげな道具を取り出した。
『兄様……それ……』
『ふふふ。ある筋の知り合いがくれたものだよ。せっかくだから、お前に使ってあげようかと思ってね』
 ドラクルが出す道具は無数で、ロゼウスはそれの使い道をこの身体で覚えさせられた。うっとりと目を細めて言う兄の様子に怯えて後退りしようにも、逃げ出せばまた激しいお仕置きが待っている。毎晩のように鞭で背中を叩かれ、首を軽く絞められて痛みに気を失いそうになるとたたき起こされる。寝台に縛り付けられて、背中や胸の上に溶けた蝋燭を垂らされたこともあった。
『硝子製の細身の張型……力を入れると割れちゃうから、あんまり締め付けすぎては駄目だよ、ロゼウス』
『それ……まさか……』
『そ、いつも私を咥えこんでいるように、お前のあそこに挿れるんだよ』
『イヤだ!』
 服を着ていないことも忘れ、ロゼウスは身を翻して逃げ出そうとした。素早く寝台から腰を浮かして手を伸ばしたドラクルが、ロゼウスの腕を掴む。年齢差による体格の差は誤魔化せず、子どもだったロゼウスの短い歩幅など彼には一歩で追いつける距離だ。
『私の言う事をきけないと言うのかい? ロゼウス』
 捕まえて引き寄せたロゼウスの耳を甘く噛みながら、ドラクルは囁く。
『悪い子だね』
 悪い子は、嫌いになるよ。
 悪い子には、お仕置きだよ。
 体の力を抜いたロゼウスを優しく抱きとめ、ドラクルはその玩具をロゼウスの前に突き出した。口の中に無理矢理押し込む。
『さぁ、丁寧に舐めるんだよ。これをしないと、辛いのはお前だからね』
 ロゼウスは突き出された硝子の玩具をしゃぶり、自らの唾液で懸命に濡らした。その間にドラクルはもう片方の手で自分の指を舐め、濡れた指を無防備なロゼウスの後ろに突っ込む。
『!』
『どうした? 私のすることは気にせず、続けるといいよ』
 内部をかき回す指の感触を感じながら、ロゼウスは懸命に硝子の筒をしゃぶった。ぴちゃぴちゃと自らのたてる音が生々しく耳元に響き、恥ずかしさに泣きたくなる。
『そろそろいいかな』
 ドラクルはロゼウスの口からそれを出させると、ゆっくりと後の穴に挿入し始めた。
『あっ……あ、ああっ……あああああ!』
 壊れやすい硝子が、彼の前に立ったままのロゼウスの体の中に埋められていく。その手をドラクルが動かし、ぐちゅぐちゅといやらしい音が室内に響き始めてドラクルに弄ばれるロゼウスの羞恥を煽る。
『さぁ、存分に楽しみなよ、ロゼウス』
 単純でそれ故に威力のある玩具でロゼウスを苛みながら、ドラクルが言う。
 そしてロゼウスは知っていた。この兄の、一番の玩具は自分なのだと。

 ◆◆◆◆◆

 それでもまだ良かった。
 ドラクルが自分の手でロゼウスに触れてくれているうちは。
『兄様、それ、何?』
 ある日ドラクルが彼の寝室に連れ込んでいたのは、一匹の狼だった。淡い茶色の体毛に、灰色の瞳。見事な毛並みの、美しい獣。
 だけれど、まだ十を幾つか越した頃だったロゼウスの腰の辺りまでくる獣は、どこか怖かった。ぎらつく灰色の瞳に見据えられて、思わずロゼウスはドラクルの後ろに隠れる。
『おやおや、どうしたんだロゼウス? 彼は私の友人だよ。お前もちゃんと仲良くしてくれないと』
『彼って……』
 その声で目の前の狼は雄なのだと知れたが、その時のロゼウスにとっては、そんなことはどうでもいいことだと思えた。雄だろうが雌だろうが、目の前の狼が怖いことには変わりない。
 ロゼウスが後退されば後退さるほど、優美な体つきの狼は、灰色の瞳に好奇の光を浮かべてロゼウスの方へとやってきた。
 盾にしていた兄のドラクルは、彼自身の手でロゼウスを引き離して無理矢理狼の方へと押しやる。
『兄様!』
『大丈夫だってロゼウス。言っただろう、彼は私の友人だ。危険はないよ』
 感情の分からない獣の瞳が、何を思っているのかはわからないけれど確かにロゼウスの方へと向けられているのがわかる。
『……あ、あ、……』
 それでもまだロゼウスが怯えた様子を見せていると、狼は急にロゼウスの方へと飛びかかってきた。
『わぁあああ!』
 ロゼウスは床に押し倒され、狼に押さえ込まれる。ドラクルの部屋の床はそのまま寝転がっても平気なくらいふかふかの絨毯が敷かれていて怪我をする事はなかったが、それでも鋭い爪だけは一応隠した巨大な狼が自分の胸にのしかかっている状況は、ロゼウスを恐慌状態に追いやるには十分だった。
『いや! やだ! 放して!』
 吸血してしまえば一瞬なのだが、全身を体毛で覆われている動物に対してはそれが困難だった。だいたい、こちらが喉首に口を寄せる前にロゼウスの方が咬み殺されてしまうかもしれない。
 けれどその心配は杞憂で、ロゼウスの胸にのしかかってじっと様子を見つめていた狼は、首筋や頬に顔を寄せて鼻を突っ込むようにしてロゼウスの身体をまさぐった。
『うっ……うっ……』
 もうすでに泣きが入っているロゼウスを見限ったのか、狼は半身振り返るようにして、背後でこの様子をじっと見ていたドラクルに短く吼える。
『へぇ、そう、気にいったんだ?』
 ドラクルは楽しそうに笑うと、狼と何かやりとりを交わす。ロゼウスからしてみれば狼の吼え声は吼え声にしか聞こえず、兄は狼と会話ができるように見えるけれど、何か仕組みがあるのか、一人と一匹の間ではちゃんと意志の疎通ができているようだった。
『ふぅん。君にしては意外だったな……いいよ。やれば』
 ドラクルが何を言ったのかはわからないが、その直後、狼が嬉しそうにキャンと吼えた。そして。
『え?』
 前足を折ってロゼウスの胸に顔を寄せた狼が、服の間から覗いた肌を舐め始める。
『ちょっ、や、やだ。何……?』
 それだけでない、狼は先程はそれでも気を遣っていたのか前足の中に引っ込めていた爪をあらわにして、ロゼウスの服を引き裂いた。
『っ!?』
 服の上半身は切り裂かれ、胸が露になる。途端、空気に触れた乳首を、狼の口が含んだ。長い舌に絡めとられ、言葉に従い感覚が背筋を走る。
『ふぇ!』
『本当に気にいってるねぇ……』
 ここは彼自身の部屋だと言うのにのほほんと事態を傍観していたドラクルが、感心するように言った。ロゼウスはまだ狼に押し倒されたまま、必死に彼の方へ視線を向ける。
『兄上! これは一体……!』
『ああ、彼がお前を気にいったんだってさ』
 事も無げにドラクルは告げた。
『非公式だけれど彼は大事な客人だ。ロゼウス、相手をしてやってくれる?』
『な、何、を……』
『もちろん』
 うっそりとした笑みを浮かべながら、彼はロゼウスに命じる。
『閨の相手を。お前はそうして、彼に抱かれていればいいんだよ』
『―――っ!!』
 ロゼウスは言葉も出ず、呆然とドラクルのその言葉を聞いた。しかし次の瞬間、のしかかってロゼウスの頬や首筋、胸の上を舐めていた狼が前足を動かして足の間に入れた時は、咄嗟に悲鳴をあげていた。
『いやっ! やだぁああああ!』
 ヴァンピルは普通の人間に比べてあらゆる身体能力でまさる一族だ。獣に犯されようとしている現状がわかって、ロゼウスは全力を込めて身体の上から狼を引き剥がす。
『ぎゃんっ!』
 壁際へと吹っ飛ばして、破られた胸元を庇う。長くざらつく舌で舐めつくされた感触はまだ不快に残っている。
 弾き飛ばされた狼は、たいして負傷した様子もないが不服そうに喉の奥で唸った。ロゼウスではなく、ドラクルの方を見てまた二、三度吼える。
『仕方がないな』
 やれやれと言った様子で長椅子から腰を上げたドラクルがロゼウスの側へと歩み寄ってきた。何をするのかと訝るロゼウスの腕を掴み、四つん這いのような格好にして押さえつける。
『兄様!?』
『言っただろう、ロゼウス。彼は大事な客だと。大人しくしていなさい』
『でも、兄様、相手は動物で……こんなこと!』
『おや、酷いな。人間だの動物だの、お前は不当な差別をするようなヴァンピルだったのかい。人間にして見れば我等魔族だって十分異種族だよ?』
 だからと言って、人型の種族とそうでない生き物には大きな差があることは明白だ。
 ドラクルは有無を言わせずロゼウスを押さえつけ、兄の力にはさすがに敵わないロゼウスのもとへ狼が再び寄ってくる。うつ伏せたロゼウスの頬をぺろりと一舐めして、身体の後ろの方に回った。
『まあ、挿れてしまえばこちらのものか……』
 ドラクルのぼそりとした呟きと共にズボンをもずり下ろされた。冷やりとした外気に触れた体の奥に、狼が舌を這わせる。
『――っ!! いや、いやぁああああ!!』
 後を弄られ、先程の比ではない恐慌状態に陥る。だって、これは、こんなことって……
 この後狼が何をしようと考えているか。答えは一つしかない。よりにもよって、獣に犯されるなんて。
『兄様! やめて! 許して!』
 もういやだ。何で俺がこんな目に!
『許す? 私が何を? ……ロゼウス、私はただお前に、客のもてなしを頼んだだけだよ?』
 残酷なほどに優しく言い聞かせるドラクルの声に気をとられていたロゼウスの後ろに、獣の荒い呼吸が聞こえる。背中に爪を引っ込めた前足が置かれ、狼が身体を密着させてくる。
『待った。ヴィル、そのままじゃロゼウスが辛い』 
 ドラクルの言葉に、ヴィルと呼ばれた狼が一度は身体を離す。ほっとしたのも束の間、慣れた指の感触が後に入り込んでくる。
『うあっ!』
『ちゃんと慣らしておかないと、ねぇ?』
 狼の舌に舐られ続けた穴を、ドラクルが指を突っ込んでかき回す。望むと望まざるとに関わらず、長い指の先が一点を掠めるたびに無理矢理昂らされていく。
『やめ、お願……兄様ぁ……』
 それでもこの後に行われることを考えれば、たまらず泣き喚くロゼウスをドラクルはいつものように口づけであやす。けれどすぐに離れた。
『いいよ、ヴィル』
 無情な許可を与えて、狼にロゼウスを明け渡す。興奮した獣の荒い息を聞いたと思った瞬間、背中に重みがかかり、後から貫かれた。
『うぁあああああああ!!』
 喚くロゼウスの様子も意に介さず、狼は自らのものをロゼウスの中に出し入れする。
『ひっ……いや……あ、ああ……!』
身体の反応には逆らえず、ロゼウスは獣の手で何度も何度もイかされ、喘がされた。
『ああっ……あん……』
ぐちゅぐちゅと卑猥な音がし、内壁にこすりつけられる。直腸を擦られるたびに、何ともいえない感覚がぞくぞくと身を震わす。
『ふぁ……もう、駄目ぇ……』
 一度達してもまだ狼はロゼウスを離さず、何度も何度も、狼が飽きるまでロゼウスは犯され続けた。
 獣はドラクルの言葉どおりロゼウスを気にいったのか何なのか、しつこいほどに何度も何度もものを出し入れし、ロゼウスの中で精を放ち続けた。この身体に出したところで、何も宿ることのない種を。
 ずるりとようやく獣がロゼウスの中から自身を抜いて、支えを失ってロゼウスはぐったりと床に倒れこむ。四肢に破れた衣装だけが纏わりついて惨めな有様。
 それを、満足気な様子の灰色狼の毛並みを撫でながら、ドラクルが見下ろしていた。