134
ああ、私は愚かだ。
寝台の上で昏々と眠り続ける人を見つめながらそう思う。
朝も夜もなく、一日中ただその人だけを見つめている。
ずっとずっと、見つめ続けている。
彼はまだ目覚めない。
ジュダがシェリダンを刺したのはもう三日前。すぐに治療こそさせたものの、失われた意識はまだ戻っておらず、夢の世界を彷徨っている。
その表情は、起きてジュダと向き合っていた時とは打って変わってとても安らかだ。自らが迎えた現状でありながら、ジュダは浅ましくもそのことに絶望する。
彼にとって、私は必要ない。
ジュダがシェリダンをいらないのではない、ジュダこそがシェリダンにとって、必要なかった。
「シェリダン様……」
寝台の脇、椅子を引いて側に侍りながら眠り続ける人の手を握り目覚めを待つ。祈るように重ねたその手を組んで、自らの額を押し当てた。
愚かな私よ。
過去の過ちよ。
そしてこれからの未来にも、犯され続けるであろう私の罪。
あなたがいなければ、私は進むべき道も見えないのに。
けれど許せなかった。
私以外の人の名を呼び、愛し続けるシェリダン様が。私がシェリダン様と出会って変ったように、ロゼウス王子と出会ったことによってこの方も変わった。
皮肉ではなく笑うようになった。相手の言葉に真剣に怒るようになった。
これまでのシェリダンは、どこか世界に対して一線を引いていた。ジュダやエチエンヌたちもそうであるように、他者と確かに関係を築きながらも、心の奥底では誰も必要としていなかった。
信じた相手に裏切られるのは辛く、願いが叶わないのが辛い。
望まれて生まれ、両親に愛されたいという人並みの当然の願いすら叶えられなかったシェリダンの心の闇は深く、希望と言うものをことごとく奪い去った。期待をかけて裏切られる痛みに慣れておこうと、どこかで心に予防線を張っていた。
本当はとても傷つきやすいから。
心に膜を張るのは、傷つけられることに耐えられない弱い自分を知っているからで。そういう意味では誰よりも弱い人だった。
だからジュダのような裏切り者はもちろん、リチャードやエチエンヌという信頼できる部下を置いていても、最後の最後で彼らに期待はかけなかった。
シェリダンはいつだって、彼らが自分のもとを離れることを許していた。それがいい証拠だ。やめたいならばいつでもやめればいいという姿勢は相手にとっては優しく見えるのかもしれない。けれど違う。見返りを求めない欲の無さは、最初から相手に期待をしていないことから引き起こされる。お前の心など、どうでもいいと。
望めば手に入らないことが辛いから。願いが叶わないのは辛いから。
彼が全身全霊で引きとめようとした相手など、ジュダは一人しか知らない。
銀の牢獄に閉じ込めて、鎖に繋いででも引きとめようとした相手など。シェリダンがそうしてでも引き止めたかったのは、ロゼウスだけ――。
眠り続けるシェリダンは彼の夢でも見ているのか、妙に安らかだ。
ふいに部屋の外が騒がしくなる。
「侵入者だぁあ!! 逃げろォオ!!」
バタバタと慌ただしい足音が行き交い、悲鳴が断末魔と共に途切れる。濡れた重い物が転がる音と共に、城の一画が静になればまた別の場所で悲鳴が上がった。
「閣下! 閣下ぁあああ!!」
「どうかお助けを!」
「っ! ぎゃあぁあああ!!」
医師以外立ち入り禁止を命じたこの部屋にも足音が近づき、バン、と荒々しく扉が開け放たれた。のろのろとそちらへ顔を向けたジュダの目に映ったのは、肩から血を流しながら指示を仰ぐ壮年の執事の姿だった。
「伯爵閣下! 侵入者です! どうか、指示をっ!! ぐぁあああ!!」
彼が叫びかけた言葉が、中途で途切れる。大柄なその体の向こうには、全身を血に濡らした細身の美女が仁王立ちで剣を構えていた。
「残酷なことをするものね、イスカリオット伯。侵入者はただ攻撃しろなんて命じるもんじゃないわ。だからほら、こんなに死人が増えてしまった」
「……彼らを殺したあなたに言われたくはありませんよ。バートリ公」
そこにいたのは、エルジェーベト=バートリ女公爵だった。いつかはここに辿り着くと思っていたが、思ったより動きが早い。
「カミラ陛下に監視されていたのでは?」
「この私が、あんな小娘の生温い命令の一つで動かせると思っているの?」
血塗れたドレス、血塗れた剣。それを隠そうともしないまま、彼女はずかずかと許可もなしに部屋の中へと踏み入ってくる。
「シェリダン陛下はどこに――シェリダン様!?」
寝台の上に横たわる人影を見て、彼女は驚きの声をあげた。
すぐさま駆け寄り、彼が重篤であることに気付いて触れようとしていた手を引っ込める。その代わりと言わんばかりに、側にいたジュダの胸倉を掴みあげてきた。
「どういうことなの?! これは! 答えなさい!! ジュダ=イスカリオット!! 今回の事は、あなたはどうして……っ!!」
彼女自身もまだ全ての情報を掴んだわけではないのだろう。最後の方は混乱していて、上手く問いにならない。
けれど事件のほぼ全ての首謀者と呼ばれて差し支えの無い立場にいるジュダには、彼女の言いたい事がわかった。
「どうして、ですって?」
くす、と。意図したわけではない。けれど思わず零れたのはそんな笑いだった。
「決まっているじゃないですか。欲しかったのですよ。この方が」
「え?」
「シェリダン=エヴェルシード様が欲しかったのです」
胸倉を掴むエルジェーベトの手から力が抜けた。
それよりもまず先に、ジュダの体からは力が抜けている。いいや逆か。始めから抵抗する気などなかった。
ここで彼女に殺されるなら、それはそれで構わない。もとより、この生へ執着などなかった。――ヴィオレットとダレルを失ったあの日から、自分にはもう。
けれどエルジェーベトは剣を掴む手をあげはしない。
「馬鹿な人……」
「自分でもそう思いますよ」
血濡れの剣を、彼女は鞘に納めた。シェリダンが眠る寝台脇に膝を落として、溜め息をつく。血の気を失った白い寝顔に手を伸ばし、頬を撫でた。
この状態のジュダに何を聞いても無駄だと思ったのだろう。カミラによる玉座簒奪の詳細を聞こうとするのを諦めて、彼女は全く別のことを口にした。
「ねぇ、これ、聞いたことがある? シェリダン様が、ロゼウス様を刺したことがあるって」
「……え?」
「知らないんだ。ふぅん。要するに、似たもの同士なのよ、あなたたちは」
エルジェーベトは傷ついたわが子を見守る母親のような眼差しを、意識の無いシェリダンに注いでいる。
シェリダン様がロゼウスを刺した? どうして。エルジェーベトの言葉の感じではただ浅い怪我をさせたというよりも、殺す気で刃を向けたという方が近い。シェリダン様が、いつどうしてそんなことを?
「城に連れて来た初めの頃、ロゼウス様はカミラ姫と仲が良かったからね。それにヴァンピルの再生能力のことを隠して、王族たちの生死についても偽っていて……裏切られたと思ったんでしょうね」
誰から聞いたのかはわからないが、エルジェーベトはジュダにそう教えた。
「同じなのよ、あなたも、シェリダン様も。手に入らないのなら殺してしまえばいい、と。まあ、ロゼウス様の場合はヴァンピルだから甦ることができたけれど、シェリダン様は……」
ロゼウスがどのくらい負傷して寝込む羽目になったのかは知らないが、彼とシェリダンでは前提がまず大きく異なっている。
ロゼウス王子はヴァンピルで、強靭な身体と脅威の再生力を持っていて。
けれどシェリダンはただの人間でしかない。
ああ、そうだ。
自分で刺したくせに、ジュダは彼の治療を使用人たちに指示した。殺すつもりで刃を向けておきながら、なんて酷い矛盾だ。
「……イスカリオット伯」
エルジェーベトはジュダの顔を見ないままに問いかける。
先手を打ってジュダは彼女の言葉を封じ、皮肉を吐いた。これ以上傷つかなくていいように。
いつだって自分は卑怯だ。わかっていた。今も十二分に感じている。
けれどジュダには、こういう生き方しかできないのだ。
「嘲笑うのですか、私を。あなたも私を愚かだと罵るのですか? 無様だと蔑み、背を向けますか? どうぞ、したいのならばすればいい」
「いいえ、違うわ」
そして断罪よりもなお鋭い刃は、処刑人の刃は振り下ろされる。
「この方を殺そうとして、そうしてあなたの手に残った物は何?」
誰かを殺して手に入れることのできる愛など、ない。
「私は……」
祈りの形に組んだ手に、一つの雨滴が零れた。
◆◆◆◆◆
――一緒に逝ってあげるから。
誰かが歌うのだ。
そして夢は続く。
(どこだ? ここは)
そこは紅い花の咲く場所だった。深紅に包まれて、果てが見えない。深紅の地平線など、生まれて初めて見た。夢の中でだが。
しかも驚いたことに、そこは薔薇の海だった。一面の深紅は、紅い薔薇の花だった。普通の薔薇は蔓が延びて棘を持ち緑の部分があるものだが、その薔薇には棘も無く、蔓は大輪の花の下部に埋もれてぱっと見気にならない。
紅い海。
まるで、血のような。
ここはどこだ。
――ローゼンティアだよ。
答える声に、自分にこの夢を見せている者が誰なのかを知った。
(ハデス、お前か)
――そうだよ、シェリダン。
(何が目的だ。ここがローゼンティアだと? 侵攻の際には、私はこんな景色は見なかったぞ)
――お前の通ってきた景色が、お前が見たローゼンティアの全てとは限らないだろ? まあ、ここはどうせ夢の中で、お前がこの景色をそうでもなければ見る事はないのは真実だけど。
その言葉が終わると同時に、ふと目の前に黒髪の少年の姿が現れた。何故か疲れきったような顔をして、複雑な顔でシェリダンを見ている。
(ハデス、何を考えている?)
――僕の願いについて。
(お前の願い?)
――そう。お前にも関係があることだよ。シェリダン=エヴェルシード。……お前には、まだ生きてもらわなきゃ困るから。
(何?)
夢の中だから本体ではないだろう、ハデスの現し身は、ふと視線をシェリダンの視点がある方向から逸らし、紅い薔薇の花畑の一点を示した。
そこにシェリダンは、思いがけない人影を見る。
(ロゼウス!)
白い肌、白い髪、紅い瞳。間違いなくロゼウスだ。
けれど、シェリダンが知る彼とは違う。憂い顔の彼はシェリダンがあまり見たことのない服装をしていて、頭の上で結んだ髪は腰を過ぎるほど長い。そして雰囲気がどこか大人びている。かといって、顔立ちが変わったというわけでもない。
俯いたまま紅い海を渡る彼に、シェリダンは咄嗟に駆け寄ろうとした。
けれどそれを、他でもないハデスに止められる。
――無駄だよ。彼に君は見えていない。あのロゼウスは、お前が知る《今》の彼とは違うから。
(どういうことだ?)
――知る必要はないんだよ。シェリダン。君はこの意味を、永遠にね。
(……どういう、意味だ)
幻影のハデスは首を横に振った。
――これが最後だろうから、一つだけ忠告してあげるよ。シェリダン。ロゼウスを諦める気はない?
(いきなり何を言うんだ? あなたは。あるわけないだろう、そんなもの。私は――)
――ロゼウスが好き? 彼と一緒にいることで、今よりもっと酷い目に遭っても、後悔しないの?
(しない)
――本当に?
(ああ。私が今更ロゼウスを厭うなどありえない……何故いきなりそんなことを?)
――そう。何を言っても無駄なんだね。一応君には少しだけ親しみがあるから忠告に来たけど、やっぱり無駄だったね。
(ハデス)
薔薇の海を歩きながら、ロゼウスは誰かを探すような素振りを見せている。彼の眼には自分たちの姿は入っていないのか? 彼が探しているのは、シェリダンではないのか?
その隣にいるべきは。
私のはずだろう?
――忠告はしたからね。シェリダン。
ハデスがしつこいくらいに、何度もそう繰り返す。忠告。何のための忠告だ。ロゼウスと道を別てと言う唆し。
そんなことできるはずがない。
(……好きなんだ。愛しているんだ、ロゼウスを。だから、そんなことできるはずはない)
――仕向けておいてなんだけど、君も相当不遇の人生を送る羽目になるんだよ、シェリダン。
(それは《預言者》としての言葉か? ハデス=アケロンティス卿)
――友人としての忠告だよ。シェリダン=エヴェルシード。……ロゼウスに関われば、お前は絶対不幸になる。僕はそれを知っている。
(そんなこと、あなたなどに判断されるいわれはない。私が不幸になるかどうかは、私が決める)
――……そういえば、お前は最初からそういう奴だったよ。
苦笑する気配が漣のように伝わってくる。
ハデスがシェリダンを何かに利用したくて近づいてきたのは知っている。けれど彼と言葉を交わし、それに安らぎを覚えていたのもシェリダンは自分でわかっている。
(ハデス。私がロゼウスと共にあろうとすることは、お前の計画に差し障ることか?)
――いいや。むしろ好都合だよ。
(では、黙ってくれ。見逃しておいてくれ。私は……)
つい先日、こんなことになる直前に交わした約束を思い出す。カミラの名前が刻まれた空ろな墓標の前で、彼らは誓いを交わしたのだ。
一歩前へと踏み出して、こちらへと歩み寄るロゼウス。
――俺は《逝く》よ。
男にしてはほっそりとした指先が伸びて、シェリダンの頬に触れる。囁くように告げられた誓い。
――お前と共に。
その言葉がどれだけシェリダンを救ったかロゼウスは知らない。
シェリダンがどれほど、その言葉を待ち望んだのか知らない。
ロゼウス。薔薇の王子。シェリダンがこの世で唯一欲したもの。父への憎悪や母への執着を越して、この手にと望んだもの。
愛しても報われることなどないと、悟りきって諦めていたシェリダンが、それでも愛した分だけ愛されたいと望んだ相手。一度はその心などいらないと叫んで自分を誤魔化したけれど、やはり無理だった。
シェリダンの願いは。
(私はロゼウスと共に逝く)
――それが、シェリダン=エヴェルシードの願いか。
(そうだ。あまり長い時間は待たせないぞ。幾らロゼウスの寿命が長いと言ったって、ヨボヨボの老人と心中しても楽しくはないだろうからな。その未来は、そう遠い話ではない)
ハデスは見慣れた者にしかそうとわからない程度に顔を歪めた。
その表情に、一瞬だけ、ほんの少しだけ胸を針で突かれたような痛みを覚える。
けれどそれだけだった。
――お前の気持ちは十分わかったよ、シェリダン。
(そうか)
――僕はロゼウスの敵だから、お前の敵に回るよ?
(わかった。その時には、全力で相手をしよう。……というか、今更じゃないか? お前は今までだって、何度もロゼウスにちょっかいをかけていただろうが。この前だってドラクル王子に味方をした)
――そうだけど、あれとこれからは違うから。
(へぇ……どう違うんだ?)
――……教えないよ、敵には。
小さく笑う気配と共に、ハデスの姿がその場からかき消える。後に残されたのはシェリダンと、シェリダンの知らないロゼウスと、舞い散る薔薇の花弁だけ。この紅い薔薇の海に自分たちだけ。
何故だろう。先ほどのハデスの様子がこびりついて離れない。どこか寂しげで苦しげな、らしくないハデスの様子。
彼がシェリダンを利用しようと近づいてきたことは知っていた。けれど、それでもローラやエチエンヌやリチャード、クルスのような部下以外で、シェリダンにとってハデスは唯一と言ってもいいほどに親しい相手だったのだ。そうでなければまだ手駒の少なかった玉座について間もない頃、父を幽閉している間の見張り役を、彼に頼むわけがない。
シェリダンがハデスの存在にどこか救われていたように、彼もシェリダンに対し、少しでも友情めいたものを感じていてくれたのか。何を企んでいるのかはわからないが、それだけはわかっていた。そしてドラクルと手を組んでいる以上、彼の狙いは十中八九、ロゼウスに関わることなのだろう。本人も自己申告していたことだ。
それでもシェリダンは、ロゼウスを手放す気はない。今はこうして離れていても、必ず取り戻す。
逃げることはできない。
自ら閉ざした扉。頑丈な鎖。黄金の手錠。空が堕ちて来る。
永遠に離さない眼差しの追跡者。
会いたい。また会って抱きしめたい。あの頬に触れたい。あの唇に口づけたい。あの瞳を見つめたい。
一緒にいたいんだ。ジュダがシェリダンにどんな思いを向けようと、ハデスがどんな未来を予知してシェリダンに忠告しようと、この想いを止めることはできない。その先に待つのは必ず破滅。上等ではないか。むしろシェリダンは望んでいたのだ。その輝かしい破滅こそを。
永遠なんてどこにもないのだから、生きていることに意味はない。醜く老いさらばえてまでみっともなく生にしがみつくくらいなら、シェリダンはこのままで時間を止めたい。ロゼウスの隣にある至上の幸福の中で、自分の時間を止めてしまいたい。
それほどに好きなんだ。
――なぁ、ロゼウス。お前、始めの時に言っただろう。私を愛さないと。
――ああ。カミラが死んだと思ったとき? 言ったな、確かに。
――今はどうなんだ?
――どうって?
――今も同じなのか? ただ単に約束をしたから私と心中してくれるわけか? 嫌っているのに、憎んでいるのに。
すると、彼はふわりと笑った。
――ああ、そうだよ。
――……そうか。
――何? 落ち込んでるの? シェリダン。
――別に。
――嘘つけ。思いっきり動揺してるじゃないか。……だって、仕方がないだろ? 俺はやっぱりあんたのことをスキとかアイシテルとか、そういう感情は持ち合わせていないんだから。
ただ、とその時彼は人を惑わす魔族らしく、この上なく美しく笑った。それはまるで、鋭い棘でもって人を傷つけ威嚇しながら、それでも人を魅せずにはおれない薔薇の微笑。
――この気持ちは恋よりも強くて、愛より醜いものだと思うから。
紅い薔薇の海をシェリダンが知るよりも大人びた、けれど癒えない傷と寂寞のようなものを抱えた様子のロゼウスが彷徨う。あんな彼は、自分は知らない。知らないけれど、シェリダンがロゼウスを厭う日など来るはずがない。
ハデスに忠告された時から覚悟していたが、彼に自分は触れないようだった。至近距離まで歩み寄っても、見えていないかのように全く反応なしだ。
それがあまりにも寂しいので、いつかのように口づけて見る。夢を見ているのはシェリダン自身で、眠り姫に口付けるのも自分で、目覚めるのも自分自身とはなんて滑稽な喜劇だろう。
――だからお前は俺のものなんだから、俺はお前と一緒に逝くと約束したんだから、俺のいないとこで勝手に死ぬなんて許さないからな。
ただその言葉だけを頼りに、シェリダンは目を覚ました。