いつか素晴らしき未来で

いつか素晴らしき未来で

prologue 歴史の片隅

 時間だ、と男は言った。
「これにでも着替えておけ。人生最後の晴れ舞台だぜ」
 数カ月ぶりに水を浴び、言葉と共に渡された服を着る。まるで生き返るような心地だが、彼はそれが自分に与えられた最後の慈悲だと知っていた。
 再び嵌められた手錠は重く、擦りきれて痣になった皮膚に絡みつく。せめてもの抵抗だと、まっすぐに顔を上げた。恐れるものなど何もないと言うように。
「さぁ、行くぞ――うわっ!」
 足元が光ったと思ったら、まるで雷が落ちたかのような轟音が体の芯に響いてきた。そして彼は、唐突に謎の光に全身を包まれた。衝撃で顔を庇った手錠が吹き飛ぶ。思わず目を瞑って眩しさから視界を守ろうとする。
次に目を開けた時、彼は見知らぬ場所に自分がいることに気づいた。