花は毒姫 04

11.一度だけの聖女、永遠の毒姫

 傷ついた人がいたら手当てをして、泣いている人がいたらその涙を拭ってあげなさい。

 ◆◆◆◆◆

 ゼノの戦いは華麗な程だった。彼女が苦戦した魔獣の群れをいとも容易く素手で貫いていく姿を見れば、《鋼竜の民(ラス・アルグル)》の強さが改めて実感できる。
 けれど、これだけは譲れないものがシャウラにもあった。タラゼドを裁き、殺すのはゼノでも国でもない。――シャウラ自身の役目だと。
 大層な理由など必要ない。彼は嫉妬で彼女を殺そうとした。ならばそれに相応しい末路が必要だろう。殺そうとした者に返り討ちにされるという。
 シャウラはエルナトに、どこか近くに停まっているはずの馬車を探すように頼む。元暗殺者の少年の気配はすぐに消えた。
 後に残るのは彼女とゼノと死体と、気まずいこの空気だけだ。
 独りになる覚悟はずっとあった。この世に生まれ落ちたその瞬間から決められた運命(さだめ)だった。
 最後の毒姫として生きることは、孤独に生きることと同義だ。今更何も恐れるものはない。
 それなのに彼女は自分がまだ何かを怖がっていたことを自覚してしまった。それはかつて弟と呼んだ少年やその名をつけた元暗殺者、そして今もまだ背後にいる青年の存在によって。
「来ないで」
 歩み寄る気配に向けてシャウラは言う。だがゼノは足を止めない。
「来ないでってば!!」
 更に歩を進めようとする背後の気配に向けて叫ぶ。
「そこの男のように醜くねじくれた死体になりたくなかったら、もう私に近づかないで!」
 タラゼドはシャウラの毒によって、見るも無残な姿と成り果てている。彼女が毒姫と知っても偏見の目で見ない者たちも、その戦いぶりを知れば恐れずにはいられない。
 それを恨むつもりはない。生物としては当然のことだ。危険を避ける本能がなければ、人間は生きてはいけない。
 けれど理性で理解したところで、感情がいつも納得できるわけでもない。
 近づかないで。もう私の内側に入って来ないで。
 どうせいつか去るのなら、まだ傷の浅い今のうちに目の前からいなくなって。
「……あんた、泣いてんのか?」
 こんな時でさえいつもと変わらぬ声音でゼノは尋ねてくる。
 彼はこちらの顔が見える位置にはいないし、シャウラはまだ涙声ではない。なのに何故今の彼女の表情がわかったのだろう。
 彼女はゆっくりと顔を上げ、ゼノの頬を振り向いた。その拍子に熱い滴が頬を滑り落ちる。
 ゼノが顔を顰めた。
「……近づかないわけには行かないだろ。あんたは怪我をしてるし、泣いてもいる。怪我をしたなら手当てをしないと、泣いたならその涙を拭わないといけないだろ」
 あまりにも自然な口調で言われた台詞に、シャウラは彼を包む周囲の愛情の深さを知った。
 自分もかつて似たようなことを誰かに対して口にしたことがある。具合が悪いなら手当てをしてあげる。泣いていたならその頬を拭ってあげると。ゼノもきっとそのように誰かに愛されているのだろう。
 だから尚更、自分に彼を近づけるわけにはいかない。
 自分は毒姫だ。何よりも確実に死をもたらす女だ。この世のどんな劇薬よりも性質の悪い強烈な毒なのだ。
「ただの女相手ならば、あなたが今言ったみたいにしてあげなさい。でも私は毒姫よ」
 シャウラは言い放ち、自分の服の袖で流れ落ちる涙を拭う。
 それでも、その後からまた新しい滴が滑り頬を伝う。
「私は涙でさえ人を殺せる女。それを拭ってくれる手なんていらないわ。あなたが今すぐ死にたいのでもないかぎり」
「……シャウラ」
 ああ、腕の傷が痛む。宵闇の風が染みて死にそうに痛い。だからこの涙はそのせいなのだ。先程殺した男に投げつけられた言葉のせいなどではない。
「そう、死神を欲するのでもない限り私を必要とする者なんていない」

「――私は、毒姫」

「だから、誰も、私に近づかないで。触れないで。目の前から消えて。――どうせ最後まで傍にいてくれないのなら!! 途中で私を独りにするくらいなら、最初から近づいたりして来ないでよ!!」
 みんな、みんないなくなってしまう。いなくなってしまったのだ。
 父と母。かつての『弟』。施療院の子どもたち。街の人々。かつて求婚してきた男。彼女に表面だけでも感謝を告げた者たち。彼女を恨み、罵った者たち。
 生者も死者も皆、彼女の傍から去っていく。彼女が自ら遠ざかることもあるけれど、誰も最後まで一緒にはいてくれない。
 何故なら、彼女が毒姫だから。触れれば死をもたらす存在だから。
 それならば――。

「じゃあ、俺はずっとお前と一緒にいてやるよ!!」

「!」
 その声は、まるで雷鳴のように彼女の全身を貫いた。
 強引な腕が声を上げる間もなく彼女の体を引き寄せる。その胸に涙で濡れた顔を押し付けさせるようにして、ゼノがシャウラを抱きしめた。幸い、ゼノは布地の厚い服を着ているので涙が直接肌に触れることはない。
 無理矢理に見えた仕草は、しかし実際はシャウラの怪我をした方の腕を刺激しないよう細心の注意を払った行動だった。それに気づいた瞬間、彼女は息が止まるような衝撃を覚える。
 包み込む腕は鋼のように硬い。生物の脆さや柔らかさなど、まったく感じさせない強さ。
「俺が、ずっと傍にいる。家族でなくても、恋人でなくても、俺が俺である限り、ただずっと、あんたの傍に在り続ける」
 触れた場所から言葉が直接染み込んでくるようだ。先日レグルスに抱きしめられた際はこんな風には思わなかった。
 シャウラにとって、誰かにこんなにも強く触れた記憶はあまりにも遠く懐かしい。
 ゼノからは、彼女がかつて失ったはずの優しくて温かいものたちの匂いがする。
「だから――もう泣くな。俺に拭わせないって言うなら、あんた自身の力でその涙を止めてみせろ。そのためなら、あんたを泣かす奴は俺が全部ぶっ飛ばしてやるから」
「あ、あなた……無茶苦茶よ」
「それが取り柄だからな」
 体を離しながらふん、と鼻を鳴らすゼノの行動はあまりにも幼い。なのに、その傲岸不遜なまでの強さがシャウラを癒す。
 不思議なことだ。不思議なものだ。先程は絶望していると言ってもいいくらい気分が沈んでいたはずなのに、今は自然と笑みが零れる。
 レグルスではなくこの青年を次期国王にと望んだ現国王陛下の判断は正しいような気がした。少しばかり問題児要素があっても、この強さを失わずにいられれば、彼はきっと立派な王になることだろう。
「シャウラ様、あとついでに殿下」
「エルナト」
「傷の手当てを」
 タラゼドに協力していた御者を麓の木に縛り付けてきたというエルナトが戻ってくる。彼はシャウラの腕の傷に気づくと、さっと顔色を変えて懐からやたらと色々なものを取り出す。
「誰がついでだ、誰が」
 文句を言いつつもシャウラの手当て自体には異論はないらしく、ゼノが再びシャウラの手を取ろうとした。その手を彼女はべしりと叩き落とす。
「オイ」
「平気よ。今は平常心を取り戻したからこのくらいの手当ては自分でできるわ。エルナト、あなたも私の血には触らないで。体液の中でも血液が最も毒性が強いの。それと、ゼノ」
「なんだよ」
「さっきは油断したけど、普通、妙齢の婦女子にあんな簡単に抱きつけるとは思わないでよね」
「あ、あんたなぁ」
「冗談よ。ま、嗜みとしては本当だけど。――世話をかけたわね。……ありがとう」
「……けっ。あんたは常々俺に悪態ついてるくらいじゃねぇとこっちも調子が出ないんだよ」
 なんとかシャウラの治療が終わり、三人はすっかり暗くなってしまった空の下で、帰りのことを考える。
 不意に、丘の下から呼び声が近づいてくるのに気付いた。
「殿下! ゼノ殿下! あれ?! なんです、もう全部終わっちゃってんですか? ってか勝手に犯人を殺さないでくださいよ! いや、それよりもまずお伝えしなければならないことが」
「セイリオス、遅いぞ……」
 王都警備であるセイリオスがシャウラに接触したことでついにタラゼド=サダクビアが動き出したと聞いたセイリオスは、三大公爵家の一角を捕らえるための準備を終えてからこの現場に駆け付けたのだ。南門の方に向かったところまではわかっていた。そこから先はエルナトが手紙を括りつけた鳥を飛ばして知らせたらしい。
 丘の麓に部隊を待たせ、自分は単騎で馬を駆り駆け付けたセイリオスに、ゼノが呆れの眼差しを寄越す。いつもは略装のセイリオスがしっかりと王都警備の正装をしているのが、全てが終わった今は虚しい。
 しかしゼノのその余裕も、彼の次の言葉を聞くまでだった。
「ゼノ殿下、兄上様が――アルファルド殿下が危篤なんですよ! すぐに王城にお戻りください!」

 ◆◆◆◆◆

「どうして王子のくせに馬に乗れないのよ?!」
「だから言っただろ! 生徒をクビになったんだって!!」
「だからっていくらなんでもあなたの身体能力で乗馬ができないとは思わないでしょ!」
「なんでもいいから早く行ってくださいよ!」
 結局、シャウラが馬に乗りゼノを後ろに乗せると言う形で王城に向かうことになった。セイリオスは部隊に指示を出しに一度戻らねばならないし、エルナトはタラゼドの共犯である御者を連れてこなければいけない。
「飛ばすわよ! 舌噛まないでね!」
 庶民としては珍しいが、シャウラは乗馬ができる。これも十二年前に王城で得た技術の一つだ。馬はタラゼドの使った馬車のそれを拝借することにした。したがって、専用の鞍がない。だがどうせそれに乗るのはシャウラとゼノなのだ。二人とも簡単に殺して死ぬような特殊民族ではない。
 裸馬に躊躇なく跨りゼノをも後ろに乗せ、シャウラは馬を走らせた。
 夜半にも関わらずざわめく王城に許可を待ちもせず乗り上げる。追いついたセイリオスが口添えしてくれて助かった。
 王城の入り口であり顔である玄関ホールにて、彼らは一人の青年に出会う。
「レグルス!」
 ユミル伯爵レグルスとその背後のサダクビア公爵家は、現在、全ての事件の首謀者と目されている男だ。ゼノがシャウラを背後に庇うように立ち、その更に前にセイリオスが進み出る。
「レグルス=ユミル=ナヴィガトリア卿」
 セイリオスは警備隊正装の懐から一枚の書状を取り出すと、レグルスの目の前に突き付けた。
「王都警備隊隊長として貴殿を告訴いたします。貴殿が隣国アルフィルクと密約を結び、魔獣の量産・売買に関与していたこと。その際、我が国で保護するべき《霊薬の民(イクシール)》の姫ことシャウラ=フルム嬢を取引に利用したこと。製造した魔獣の性能を実証するために王都に魔獣を侵入させたこと。覚えがないとは言いませんよね?」
 凄味のある笑顔で詰め寄るセイリオスにレグルスは無表情で問い返す。
「利用……? シャウラを? どういうことだ?」
「レグルス」
「おや、そこは知らなかったんですか? ではアルフィルクにシャウラ嬢を連れて亡命するという計画はタラゼド=サダクビアの独断でしたか」
「タラゼド! そうだ彼は――」
「私が殺したわ」
「彼はシャウラ嬢を殺害しようとしたのですよ」
 セイリオスが一連のタラゼドの目論見を簡単に説明する。そこでようやく、レグルスは自分が関与していなかった分の事実を悟ったようだった。
 シャウラは自分を庇うゼノも、その前に立つセイリオスをも押しのけてレグルスの正面に立ち彼と向き合った。
 止めようと動きかけたゼノを更にセイリオスが制止する。周囲の者たちは固唾をのんで、結ばれない恋人同士を見守った。
「シャウラ……」
「今、警備隊長が言ったことは本当なの?」
 レグルスの視線がふと下に降り、シャウラの傷の辺りを見つめる。手当てをされているとはいえ、短刀に裂かれた服の穴まではどうしようもない。温暖なナヴィガトリアでは今の季節、厚い上着を着込むような習慣はなかった。
「あなたは、自分の国の民を、魔獣の脅威に晒したの、もしかしてそれは――」
「自惚れないでくれ、シャウラ」
 冷たい声。まるで作り物のように。
 そして彼は、自らの引き際をその意志で選択する。
「私は君のためなどに、わざわざアルフィルクから魔獣を買ったりしない。私がそれをしたのは、忌々しいゼノを追い落とすためだ。特殊民族の血を引く王候補を殺すには、魔獣の群れぐらい必要だろう?」
 そんな理由は建前だと、本当は誰もがわかっている。だがレグルスがシャウラを手に入れるために魔獣を隣国から買ったと言えば、彼にその行動を起こさせた原因である彼女への非難は免れない。
 だからレグルスは、一人で悪役になることを選んだ。
「レグルス……」
 呆然と見上げるシャウラに、レグルスは小さな笑みを向けた。シャウラは他の誰にも聞こえないような小さな声で囁く。
「あなたは結局、私を連れていってはくれないのね」
 目の前のレグルス自身にすら届かない。幸か不幸かその囁きを拾ったのは、耳の良いゼノだけだ。
 全ての罪を背負い、全ての業をその身に負って歴史の影に消えゆく貴公子は最後に本当に愛する者に語りかけた。
「――だけど、シャウラ。私だけの毒姫よ」
 共に生きることはできない。
 そして、共に死ぬことも二人は選ばなかった。
「それでも私は、君を愛している」
「私もよ」
 こんなにも愛しているのに、狂おしいほどに――愛しているのに。
 レグルスが罪人として拘束されるのも更迭されるのもシャウラは見たくはなかった。
 まだ人の多い時間帯だ。衆人環視の中見つめ合う二人の周囲には、武器を持った警備の兵士たちも十分にいる。この十二年間で勤めるようになった者は当然シャウラの顔を知らないが、彼女のすぐ傍にはゼノがいる。例えここでレグルスとシャウラが対峙しても、ゼノの存在がシャウラの助けとなるだろう。
 傍にいるというのは、つまりそういうことなのだ。
「――アルファルドはもうすぐ死ぬ。私はゼノの前に跪くつもりはない。けれど君に対してならば跪くことはできるだろう」
 男は恋人のように腕を伸ばし、女はその手に自らの手を滑り込ませる。
 周囲がざわめいた。それをゼノが止める。
「やめろ! 誰も手出しするな!」
「ですが、ゼノ殿下!」
「野暮な奴らだ。恋人同士の逢瀬を邪魔するとは」
「殿下!」
 《霊薬の民(イクシール)》の血を受けし者は、その生涯にただ一度だけ命の奇跡を与えられる。
 だが、二度目はない。
 一度の恩恵に満足できず二度目を求める者に与えられるのは死の鉄槌だ。
 けれど、本当に想い合う恋人同士が、ただ一度の口付けだけで満足できるなんてことがあるはずがない。
 ――それは一幅の絵のようだった。
 抱き合う美しい男と美しい女。ゆっくりとその唇が重ねられる。
 しかし幻想的なまでに美しい光景は、次の瞬間、波にさらわれる砂の城のように脆く崩れ去る。
 事切れたレグルスが崩れ落ちる。それを支えようとしたシャウラは自ら膝を折り彼を床に横たえるようにして一緒に倒れ込んだ。
「シャウラ!」
 倒れ込むと言っても怪我をするような状況でも場所でもない。そしてゼノが危惧したようには彼女は泣いてはいなかった。
 毒姫が与える二度目の口付けがもたらすのは死。そんなのはわかりきっていた事柄だ。自らが意図して行ったのであれば、感情を高ぶらせる余地もない。その資格も、彼を殺した彼女自身には存在しなかった。
 シャウラは自らの足で立ち上がる。今までもそうしてきたように。
 そしてこれからも、そうやって生きていくのだろう。
 レグルスの遺体はセイリオス率いる王都警備隊の面々に任せた。愕然と硬直していた城の使用人たちも動き出す。
「――さぁ、行くわよ。私を第一王子に会わせたいんでしょう」
 アルファルドの死期が迫っている。二人は周囲のざわめきに構わず人波を縫って駆け出した。

 ◆◆◆◆◆

「ところであなた、結局第一王子殿下が施療院にいた子どものうち誰だったのか私にわからせるって言ってなかった?」
「あ」
 ここに来て肝心なことを忘れていたことが明らかにされてしまった。ゼノは動揺も露わに言い訳を口にする。
「だだだだって最近はあんたが風邪で倒れたりあんたが攫われたりでそれどころじゃ……って原因はほとんどあんたのせいじゃんか!」
「だからどうしたって言うのよ! そもそも私に証明してみせるって啖呵を切ったんだから不可抗力による私の妨害くらい負けずに証拠集めしておきなさいよ!」
「無茶言うな!」
 廊下を通りがかる人間が思わずよくそれだけ喋りながら走れるものだと感心するような速度でほぼ無駄口を叩きながら、二人は第一王子の部屋へと向かっていた。
「あんたこそ本当に心当たりないのかよ! あんたを『姉さん』って呼んでた金髪碧眼の子どもの中に!」
「――なんですって?」
 背後でシャウラが立ち止まる気配がしたので、ゼノも慌てて足を止めた。それまでエニフの丘での乱闘で多少乱れた格好ながらどういう技術か淑女らしい優雅さを失わない余裕を持って走っていたシャウラが、青ざめて立ち止まっている。
「『姉さん』? 王子殿下が、私をそう呼んでいたって言うの?」
「あ、ああ。いつもあんたのことを話す時はシャウラ姉さんって……」
「どうしてそれをもっと早く言ってくれないのよ!」
「ええ?」
 アルファルドは王の養子として義理の弟になったゼノのことを当然のように弟と言ってのけるし、レグルスのことも嫌味かもしれないが兄上と呼んでいた。彼の近しい目上の人間に対する呼び方としてそれほど奇抜なものとは思わなかったので、ゼノはそれまでこの話題をシャウラにしたことがなかったのだ。
「私を『姉さん』なんて呼んだのは、あの頃だって今だってたった一人しかいないわ!」
 部屋を慌ただしく出入りする医師の助手や侍女たちを押しのける勢いで、シャウラは一つの名を呼びながら飛び込んだ。
「アル! アル・ナティー!」
 「アル・ナティー」は少し発音を変えれば「エルナト」となる。どちらもナヴィガトリアではありふれた名前だった。
「ああ、ゼノはやっぱり約束を守ってくれたんですね」
 寝台の天蓋の向こう、弱々しい声がそれでも滲み出る喜びを伴って笑う。
「お久しぶりです。シャウラ姉さん」