薔薇の皇帝 08

037

 結局ハーラルトの資料の幾枚かが盗まれ、学院の方でも窃盗犯が出たということから学者会議中の殺人は物盗りの犯行ということにされた。
 細かい点は全て有耶無耶になった形だが、それに文句をつけるだろう人物……ユラクナー王などは今いない。彼が国へ戻っている間に、とにかく会議を終えてしまおうという思惑だ。今回呼ばれた学者たちの中には一国の重鎮として長く国を空けるわけにもいかない人物もいて、会議を早く終わらせるに限る。
「皇帝陛下」
「ロスヴィータ、どうした?」
「この劇場に関することで、少し気になる事があるのですが」
 ホールで歌劇を鑑賞した後、ロゼウスと同じローゼンティア人のロスヴィータが、声を潜めてあることを告げた。
「ありがとうロスヴィータ。私もちょうど、お前にそれを確認しようと思っていたところだ」
「何かお考えがあるとみていいのですよね」
「ああ」
「ならば私はもう、この件には関わらないことにしましょう。すべて皇帝陛下の采配にお任せします」
 このやりとりは皇帝領の身内の面々だけが聞き、のこりの人々の耳に入ることはなかった。
 そして学者会議二日目が始まる。
 一番目のレンフィールドの発表は恙無く終了し、二番手のハーラルトは資料の幾つかを盗まれて苦しんだものの、何とか徹夜で新しい書類を完成させ、無事に発表を終えた。そして三時間目。
「それでは、わたくしエヴェルシード学院代表ガッティ=レミユが――」
 いつも通り元気なガッティが自らの発表を始めようとした瞬間、それは起こった。
「大人しくしろ!」
 武装した男たちがいきなり劇場に押し寄せてきた。
 大人しくも何も全員が静かに人様の発表を聞く体勢だったというのに何事だ。見学の王族のためについていた護衛たちが自らの武器に手を伸ばす。しかし彼らが賊を取り押さえるよりも、賊がホールの中央にいた学者たちを人質にとる方が早い。
「この場は我々が占拠した。命が惜しくば、チェスアトール王が要求を聞くまで大人しくしてもらおうか」
 顔を覆面で隠した男が言う。これぞまさしく銀行強盗……ではなく、テロリストというものだろう。
「まぁ、本物のテロリストなんて私初めて見たわ」
 フィロメーラが大きな瞳をぱちぱちとさせた。
 リーダー格らしき一人だけ武装の違う男が、ホールの奥にいたロゼウスに声をかける。
「皇帝陛下。御無礼はお詫びいたします。ですが、御身を傷つけることはないと確約いたしましょう」
「これはあくまでも帝国に対する反逆ではなく、お前たちとチェスアトールとの駆け引き、だから皇帝が口を出すことではないと」
「ええ。チェスアトール側が抵抗しなければ、きっとここの人々も無傷で解放されましょう」
「ならば、私はこの場には手を出さない事にしよう」
「ええ?!」
 何人かが皇帝の対応に文句を言ったが、ロゼウスはどこ吹く風という調子で事態を静観することをテロリストたちに約束した。
「ちょ、皇帝陛下! それでいいのんか?!」
 ビリジオラート王がロゼウスに非難の声を向けるが、ロゼウスはいつも通りの無表情で返した。
「ああ。皇帝が介入するのはあくまでも本人が正当な理由で皇帝に救いを求めた場合か、皇帝以外には収拾できない、世界を揺るがす国家単位の問題だけだ」
 その線引きは酷く曖昧だが、今回のこれは皇帝が治めるべき事柄ではないとロゼウスは口にする。一部の人間が一方的に弱者をいたぶっているわけでもなし、皇帝が上からストップをかけるようなことでもないと判断された。
「じゃあ我らはどないせえと?」
「椅子の裏にでも潜って隠れていろ」
 ビリジオラートの王夫妻は、皇帝に言われた通りに頭を抱えて観客席の下に引っ込んだ。
「皇帝陛下」
 ビリジオラート王との話が終わったのを見計らって、学者の席からルルティスがロゼウスに声をかけた。
「貴様! 何を勝手に喋って――」
 ルルティスが皇帝に助けを求めるのではないかと危惧したテロリストの一人が彼を押さえようとする。
 普通ならば逆効果だ。体格の良い大きな男に取り押さえられれば華奢な少年は普通怯えるだろう。普通なら。
 ルルティス=ランシェットが世間様の言う「普通」で有るかどうかに関しては、彼を知る者であれば異論も何もなく満場一致で「いやあいつは変人だ」と答が返るであろう。
 テロリストに頭から机に押さえつけられても平然と笑顔を崩さない人間が「普通」などであるはずがない。
「お話終わりましたか? じゃあもう私たちも動いていいですか?」
「ああ。好きにしろ。こちらは流れ弾を喰らうようなことはないから安心してくれ」
「はい、わかりました。それじゃあ――」

 ドカジャキンガシャガション

「は――」
 テロリストたちは目を点にした。
 次の瞬間、学者たちがほぼ全員どこかから銃火器を取り出したのだ。
それをやけに手なれた調子で、自分たちを緩く拘束していた男たちに突きつける。
「な、何故一般市民がこんなものを――ッ?!」
 素手のルルティスに一瞬にして捻り上げられた、リーダー格の男が絶叫する。彼は多分この世界における学者というものの定義をはき違えている。
 たちまち形勢は逆転し、テロリストたちは学者たちに銃火器を突きつけられて万歳状態になった。もちろん喜んでいるわけではなく、降伏のポーズである。
 帝国で銃器と呼ばれる、火薬によって弾を素早く発射するという武器が造られたのはせいぜい二百年前だ。しかもまだ性能はそれほど良くはなく、確実に使いこなせる者は少ない。銃火器は扱えれば便利ではあるが、銃より早く動ける人間がいるような世界では剣を極めた方が有力だと言う説もある。それでも銃火器が非常に高価で貴重なものであることには代わりがない。
 そして、今学者たちがテロリストを取り押さえているこの至近距離であれば、どんな下手な人間でも絶対に狙いを外すことはない。
 何故学者なんぞ、机にかじりついてお勉強をするのが仕事の人間たちがそんな稀少な武器を持っているのかテロリストたちにはさっりわからなかった。
「なんで貴様らそんなものを?!」
「そうだ! 俺たちでも隊長の一丁手に入れるだけでギリギリだったのに何故!」
 まさかの逆転劇に「こんなはずでは……」と焦り怯えたテロリストたちが半恐慌状態で喚きながら問いかける。
「学者の楽しみ……いえ、嗜みですわ」
「そやな」
 フィロメーラが美しく笑い、メラニーが頷く。
「はぁ、すいません。でもお怪我をされたくなかったら動かないでくださいね」
「そうですね。まぁこの場には私がいますから爆薬で手足の一本二本吹っ飛んでもちゃんと縫ってあげますけど。練習兼ねて」
 スキンヘッドに加え厳めしすぎる見た目の恐ろしさとは裏腹に人が良さそうにクレメンスが言えば、レンフィールドが鋼鉄の無表情でさりげなく脅す。
「別に死んじゃってもそれはそれで構わないんじゃない? 解剖できるし。十数人も新しい死体が手に入るなんて運がいいわぁ。最近死刑が少なくて」
「私、罪人の解剖得意です!」
 レノーレが満更でもない調子で言えば、ルルティスと同じくこちらも素手で自分の縦横二倍はありそうな大男を取り押さえたガッティが笑顔でトドメを刺した。
「今年は本当に騒がしいわね」
「駄目ですよガッティさん! まだ生きている人を解剖は駄目です!」
 ロスヴィータは欠伸をしながら言い、良識派のグウィンが暴走しようとする最年少生物学者を勇気を持って止めていた。
 誰もまともにテロリストたちを相手にしないのでそろそろ哀れに思えたのか、ハーラルトが彼らの問いに答えてやる。
「真面目に言うと、学者の頭脳は国家の貴重な財産なので、悪漢や猛獣から身を守るための銃火器の使用を認められているのですよ。これは国王並に特別な権利の一つです。学者は優秀な成績を収めると莫大な奨学金を与えられそれで更に学問を究めるので、遺跡の発掘中に盗掘者に殺されたり、新種の植物を探す途中で猛獣に殺されたら大損なんですよ」
「もっとも、中には武器に頼らなくても異常に強い人間もいるけどね。いろいろな遺跡に潜って罠をくぐり抜けたり密猟者と戦っているうちに、学者はそこらの武道家と張り合えるくらい強くなったりするものよ」
 追い打ちに彼らは唖然とした。まさか、そんな、馬鹿な。言葉にならない呻きが身を包む。
 しかしここはまだ地獄の一丁目だ。本当の恐怖とはここから始まるものである。
 項垂れて床を見ていた者たちが、影の動きから頭上に何かが飛んだと思った次の瞬間には目の前のテーブルが木端微塵に砕け散っていた。
「は……」
「え……」
 もうもうと埃が舞う。あまりの展開にテロリストたちは頭が真っ白になった。それこそ爆薬でも使わなければこんな衝撃はありえない。
 学者たちは自分も書類も避難し、ついでにテロリストたちも一応助けてあげておいた。あれで死んだらあまりにも可哀想だかららしい。
 だが彼らはある意味、ここで死んでおいた方が幸せだったかもしれない。この先には生ける恐怖が待っている。
 その恐怖の大王が口を開いた。
「どうも皆さん」
 ホール天井から急降下して二十人掛けのテーブルを叩き割ったフェルザードが笑顔で言う。
 笑顔だが目は笑っていないというお約束の表情だ。最近の彼はそれが趣味かというくらいテーブルを叩き割っている。
「え、エヴェルシードのおう、じ」
 テロリストの一人が引きつった声をあげる。
「さて、そこの皆さん。覚悟はよろしいでしょうか」
「ま、待て! いや待ってください! いきなり何なんだ!」
「私の皇帝陛下がいらっしゃる場所で危険な行為など言語道断。一族郎党皆殺しでもまだ足りません」
 その言葉に運悪く――もはや単に彼らは運が悪かったとしか言えない――学者たちを襲ってしまったテロリストたちは身も世もなく命乞いを始めた。
 どんなに崇高な決意とか高邁な思想とかで固めた集団でも、世界最強の王子フェルザードは怖かったらしい。殺戮皇帝ロゼウスには丁寧に頭を下げる余裕のある男でも、フェルザードには床に頭を擦りつけて命乞いをするしかないらしい。
「フェザー殿下……あなた一体どこまで恐れられているんですか」
「やだなぁランシェット。そんな人を暴君みたいに。私はせいぜい皇帝陛下に歯向かう愚か者は一族郎党皮剥いで犯しつくして体の半分くらい獣に食わせてはまた治療して拷問、ということを二年くらいエンドレスでやっているだけですよ。大抵は一年持たずに発狂して自分から舌噛んじゃうんですけどね」
 剣を抜いてあはははと笑いながらさらりと言うフェルザードの姿に、テロリストたちは喧嘩を売る相手を間違えたしまったことに気づいた。血の気が頭のてっぺんから足元まで一気に引く。
 皇帝に手を出さなければ大丈夫などという考えでは甘かった。もしも平和に天寿をまっとう、そうでなくても比較的まともな人生を歩むつもりなら、そもそも皇帝という存在自体に関わってはいけなかったのだ。もれなく恐怖の暗黒大魔王がついてくるから。
「で、どうする? お前たち」
 いつの間にか学者たち、そして腰を抜かしたテロリストの集まるテーブル(の残骸)近くに来たロゼウスが尋ねた。
「私は手を出さないが、お前たちの行動を止めないのと同じくただのエヴェルシード王子の行動までは止められないぞ? フェルザードを止めたいなら、お前たち自身がまず行動を止めることだ。……投降するか?」
「「「します!」」」
 テロリストたちは唯一フェルザードを止められそうな皇帝を泣いて拝んだ。
「えーと」
 辺り一面をぐるりと見回したルルティスが困ったように小首を傾げる。
「ところで私たちはあと二分野の発表を、どこで行えばいいんでしょうね?」

 ◆◆◆◆◆

 テロリストたちは駆けつけたチェスアトールの警察に大人しく連行されていった。
 悪人面で筋骨隆々な男たちの号泣にはじめはぎょっとしていた警察たちも、劇場の中にいる世にも美しいローゼンティア人の少年皇帝と、彼に負けず劣らず美しいエヴェルシード人の王子の姿を見つけて事態を悟ったようだった。死ぬほど怖い思いをした犯人たちを、優しく慰めながら護送用の馬車で署に送って行く。
 騒ぎが落ち着いたところで、学者たちは気を取り直して研究発表を再開した。ちょっとばかしテーブルがなくて床に資料をそのまま置いていたりしたが、問題はない。この程度で驚いたり動揺していては立派な学者とは呼べない。学者は学者なのだから、例え明日世界の終わりが来ても研究をするべきなのである。
 そうして無事に残り二分野の発表も終わった。
「お疲れさまや。残り二分野は明日の発表になるでぇ」
 ヨアヒムの挨拶で一日が終わり、彼らは解散する。
 会議終了直前にホールから出ていたロゼウスたちは、人々の気配で終了を知った。
「向こうは終わったようだな。だがルルティスをここに来させてもいいものか……」
 ロゼウスがそう悩むのは、劇場にやってきた人物が人物だからだ。
 耳のいいロゼウスは会議の途中、劇場の外に停まった馬車の音を聞いていた。一日に二度もあんなことはないと思うが、またちょっと困った、つまりは武装した団体だったりしたら困るので様子を身に来た……のだが。
「ここここ皇帝陛下!」
 ロゼウスの姿を見て頭を抱えたのは、つい先日の事件を調べた際に見た顔だ。
「お前……確かフィルメリアのノイドガルテ公爵シャルロ」
 前回ルルティスが誘拐された時の重要参考人としてその名はあがっていた。本人は主犯ではないようだし、フィルメリアではかなり高位の貴族なので表立って罰することもしなかったのだが。
「懲りずにまたしても姿を見せるということは、今度こそ殺されても文句は言えないと思いますが」
 嫌悪感をむき出しにしたエチエンヌがシャルロを睨む。人買いに売られた過去を持つ彼は、小さな子どもを攫うような男が大嫌いだ。
「違います! 今回は陛下――我が国の国王陛下に呼ばれたんです!」
 シャルロはぎょっとして首を横に振った。エントランスの隅にいた自国の王とその妾妃を示す。
「皇帝陛下、この者は私たちが呼んだのです」
「お前たちが? 一体何のつもりだ?」
「それは……」
 王は妾妃と顔を見合わせた。
 ルルティスによく似た女。美しい女。年齢から考えれば、まだ十五歳の少年の母親でもおかしくはない。
「確認のため、か」
 ロゼウスが口に出したのは短い言葉だったが、言いたい言葉はフィルメリア王たちにも伝わった。彼らが考えていた通りのことだったからだろう。
 目を瞠った二人は、口元を引き結んで皇帝を睨む。ここで皇帝に何と言われようとも、彼らは確認したかったのだ。あの少年が、かつて失った自分たちの子ではないかと。
「皇帝陛下っ」
 ホールの入口の扉が開き、いつもの声がロゼウスを呼んだ。心なしか弾んでいるのは、今日の会議も有意義だったということだろう。
 ロゼウスの姿を笑顔で見つけたルルティスは、しかしエントランスの方を見て動きを止めた。
「あ、その……」

 ドンドンドンドンドン!

 間髪いれずに銃声が響き渡る。
「ひぃいいいい!」
「ルルティス?!」
 これにはロゼウスたちも驚いた。ルルティスは表情一つ変えず懐に手を突っ込むと、そのまま拳銃を取り出して五発立て続けに撃ったのだ。何の前置きもなく。
「いい腕前ですね」
 フェルザードがのほほんとそう言った。弾はどれもシャルロを掠め、しかし当たってはいない。相手は避ける余裕すらなかったのだ。この至近距離でそんな相手にはむしろ、当てない方が難しい。
「――何故あなたがここにいるんです?」
 恐ろしく冷たい声で、冷たい表情でルルティスは詰問した。汚泥を這いまわる虫を見るよりも蔑む目をしている。
「こ、こく、国王へい、かに、用事、で」
 出会いがしらに殺されかけたシャルロは顔面蒼白だ。
「へぇ、そうですか」
 もちろんルルティスがそこで引き下がるわけはない。
「で、命令違反でお国の王様に罰則を与えられるのと、ここで私に殺されるのとどちらがいいですか? 弾はあと一発残っていますけど」
「ひぃいいいっ!」
 シャルロが尻もちをついたまま必死で後じさった。
「ごごご、ごめんなさい! ももも、もう消えますから!」
「おい、何があったんだよ!」
 ハーラルトたちが銃声を聞いて駆けつけてきた。
「ルーティ君!」
「ランシェット?! お前一体何やって……何で銃なんか持ってんだよ!」
 学者連中は確かに銃火器を持っている。だが獣ならともかく人間相手に発砲することは滅多にない。
「なんでもありませんよ」
 テロリスト相手にも出さなかった危険な武器を、ルルティスは今シャルロに向けている。なんでもないわけはないのだが。
「どこが何もないんだ!」
「もう終わりました」
「おま、僕が殺人容疑で疑われたばっかだってのに、殺人未遂を……」
 ハーラルトがルルティスの豪胆さに呆れたような顔で崩れ落ちる。 
 銃火器を持っていても違法ではない。だがその銃で人を殺せばもちろん殺人罪だ。
 溜息をつきながら苛立った様子で髪をかきあげるルルティスに向かい、シャルロが叫んだ。
「これだけは聞いてください! ルルティス様!」
 これまでの怯えとは違う、必死の形相だ。
「あなたはご自分の過去の事を、ご両親のことを知りたくはないですか!? その御両親が、今も生きているとしたら!」
「いいえ。まったく」
「そうでしょう、知りた……え?」
 しかしルルティスはシャルロの言葉を取り合わなかった。
「なんでそんなどうでもいいもんのことで、またしてもあなたなんかに煩わされなきゃいけないんですか。前にも言ったでしょう。私は両親なんていりません。そんなくだらないことを言いたいためにあなたはその面を私の前に見せたと?」
 フィルメリア王とその妾が、エントランスの隅で青ざめる。ルルティスはそちらを一瞥もせず、ただただシャルロを見下ろして言い放った。
「次に私の前に顔出したら、死ぬより酷い目に合わせますよ。貴族なんて命以上に絞り取れるものいーっぱいあるんですから!」
 にっこりとこんな時ばかり笑顔で、ルルティスが釘を刺す。
「で、さっさとお帰りになったらどうです?」
「は、はい……」
 シャルロは君命より目の前の生きた恐怖をとった。
 腰が抜けているので部下に支えられるようにしながら、方々の体で馬車へと戻って行く。
「ルルティス……」
「学者先生……」
 ルルティスは銃の温度を確認してさっさとそれを懐にしまった。
「とにかく終わりました。もう終わったんです」
 心配も糾弾も、それ以外の視線も何もかもを拒絶するように彼は一同に背を向けた。
 二日目も一日目に負けず劣らず、騒々しい一日だった。