White World 02

12.無限の魔王

「ちょ、お師匠様!!」
 なんだか既視感のある突っ込みを受けながら辰砂は次に来る攻撃を予想して耳を手で押さえた。
「どういうことなんだよ!! それは!!」
 創造の女神。
 広大にして深淵なるこの世界、フローミア・フェーディアーダの創造主。
 全ての神々の母。
 そして、今より数千年前に辰砂と戦い、その名を奪われたとされる呼ばれぬ女神。
「創造の女神を呼ぶって……そもそも創造の女神は、あんたが封印したんじゃなかったのか?」
「誰もそんなこと言った覚えはないけど?」
 辰砂に詰め寄ったザッハールが、目をぱちくりとさせた。彼の背後の面々の中には次第に事態を理解出来た者が増えてきて、恐る恐ると言った様子で口を開閉させる。
「まさか……」
 呆然とした顔をしながらも、アリオスがついに決定的な問いを投げた。
「辰砂、あなたが創造の女神と対立し、名を奪ったというのは嘘なのですか?」
「嘘というか、後世の誤解というかねぇ……」
 辰砂は微妙な表情をしながら頬をかく。
 場がざわついた。唖然とした顔をしているのは、何も人間たちだけではない。
「そんな、まさか」
 明かされた事実に愕然とした声を上げるのは、神々の方が多かった。
「母神は一体、どうしてそんな……」
 辰砂は肩を竦める。
「どういうことだ? お前が知る限りの事実を一から話せ。辰砂」
 このままでは埒が明かないとばかりに、謎めいた創造の魔術師をラウルフィカが強く問いただした。ここで真実を明らかにしておかなければ、この世界も自分たちもますます迷走するばかりだ。
 辰砂と神々の神話は人間たちに伝えられていることも多いが、その全てが真実ではない。そして伝えられていない話の方が、本当は多いのだと。
「事実、ねぇ。別に世間が僕と母神のやりとりをどう解釈しようと、それは別にいいんだけどね。僕が彼女から名を奪ったのは、事実と言えば事実だし」
 それでも世間一般が思うような単純な悪役と辰砂の像は完全には重ならない。それを他でもない、ここにいる彼の弟子たちや、彼に助けられたラウルフィカなどは知っている。
「とはいえ、僕は別に母神を背後から不意打ちして名を奪ったとかそういうわけではない。そもそも、創造の女神の“名前”を、そんな方法で奪えると思う方がおかしいだろ」
「まぁ確かに」
 思わず同意してしまったザッハールの脇腹にラウルフィカが容赦なく肘を打ち込む。悶絶して崩れ落ちる銀月の魔術師には目もくれず、彼らは辰砂の一挙手一投足に注目した。
「……僕が背徳神の巫女たる少年を殺された件で秩序神の横暴を母神に訴えに行ったとき――彼女は、その日がついに来たかというような顔をしていた」
 辰砂は回想する。
 何度生まれ変わっても色褪せない日々の記憶の中、最後まで近づくことのできなかったその遠い遠いつくりものの微笑みを。
 創造の女神は、自分の創り出したこの世界が、いずれ彼女を必要としなくなることを予期していた。
「必要と、しなくなる? 母神を? 誰が?」
「世界が。神々が。そして人間が」
 辰砂が背徳神と手を組み秩序神率いる神々の軍隊と争った時、多くの神々は母神に相談せずとも自ずと自分の在り方を決めていた。
 秩序神に従う者、背徳神を擁護する者、中立を貫く者。そこに母神の意志が介在せず彼ら自身が己の立ち位置を決めて戦争を引き起こす。それはこの世界の生き物が自立した証だと。
「自立? そんなことが?」
「あの人の考えなんて、僕にはわからないよ。けれど彼女はそう言っていた。そして、もう自分はこの世界に干渉しないと人知れず宣言した」
 ――さようなら、辰砂。あとのことはよろしくね。
 人々が辰砂に対し、嘘をついたと思うのはこのことだ。
 創造の魔術師は、造物主たる女神と対立などしていなかったのだ。
 辰砂、彼は傲慢故に神に逆らった不届き者ではなく――。
「彼女はこの世界では創造主と呼ばれるが、本来は僕たちの住むこの世界とは違う異界に存在するただの“人間”なんだそうだ。この世界は彼女の夢、彼女の箱庭。けれど彼女が創り出した世界は、彼女の手を離れて動き出した。永遠の微睡みのような平和だけを世界に望んだ彼女の意志とは裏腹に世界は争いを始めてしまった」
 神は自らの姿に似せて人間を作った。
 それは逆に言うと、神こそが人間の似姿だということ。
「その時にこの世界を消すことを選ばずに、僕らに争いあう道をくれたのは彼女の慈悲だ」
 一人の神が激昂して言った。
「慈悲だと?! ふざけるな! あの戦いでどれだけの神が貴様に殺されたと思っている」
「慈悲だよ。母神にとってはね。あなた方だって、紙の上に書かれた物語の登場人物が何人死んだところで気にはしないだろう?」
 また別の神が動揺しながら問う。
「……そういうことなのか? 私たちは所詮、紙の上の登場人物に過ぎないと」
「例えだよ、例え。別に僕たちが幻想小説の登場人物だってわけじゃない。あまりにも優れた魔術なんだかそれ以外の技術なんだか知らないけれど、彼女の世界ではそうやって箱庭を作ることができるんだってさ」
 彼らは驚き、お互いの顔を見合わせた。
 この踏みしめた大地の感触も風の音も花の匂いも、触れた手の温もりも全てがつくりもの? 良くできた細工物のようなつくりもの?
 信じられない。実感が湧かない。
 自分たちは生きていると強く確信している。
 だがその確信ですらも、本当は誰かの思惑の通りなのかもしれないなんて。
「世界を創るということは大変だね。人間は自分の人生に責任を持つことすら時折放棄しているのに、ましてや自分と似た姿、似た思考生命体の全生活に責任を持つなんて。彼女はその大変さを知っていて、それでも世界を創ってみたかったと言った。けれど膨れ上がり成長した世界は、いつしか彼女の制御できる範囲を超えてしまった。それが僕らと神々の戦争だ」
 創造の女神は、その時にこの世界を失敗作だと判断して消去することもできたのだ。けれど彼女は一度生み出した命を全て消し去ってしまうのがしのびなく、その世界を続けることを選んだ。
 その世界の製作者であり管理者である自分という存在を失くしても、彼女が生み出した命が自由に、自然に、栄枯盛衰を繰り返して続いていくことを。
 いつか世界自体が寿命を迎えて壊れるまで、劇的な名作ではなく陳腐で盛り上がりに欠けても、この世にたった一つしかない物語として――。
「そして創造の女神は、子どもたちを遺してこの世界を去った。眠り続ける彼女の現身だけを置き去りに。僕はその時に、彼女を再びこの世界に戻す鍵をもらった。それが、創造の女神の“名前”だ」
 世界が世界で在り続ける、その最も重要な岐路に立つとき運命を決定する存在として、神に逆らう魔術師は選ばれた。
 彼女が何故そんなものを自分に託したのか、辰砂自身も知らない。
「母神がこの世界に戻ってくることは、同時に別の意味でこの世界の終わりを意味する」
「――どうして?」
「僕たちこの世界の内部存在が制御できない事象が世界そのものを崩壊させるというのは、すなわち箱庭にとっての異常事態だ。もしもこの事態を異常事態と認識した場合それを平常に戻すためには、その原因は全て取り除かねばならない」
「つまり」
 神々が怪訝な顔をしている横で、人間たちの方が呑み込みが早かった。ごくりと息を呑む音がそこかしこで聞こえる。
「この世界を“失敗作”だと判断することは、この世界をありのまま継続させることはできないと決断することに他ならない。そのためにはいくつか条件を変えてよく似たものを作ることになるが――それはもはや、この世界とは呼べないだろう」
「そういうこと。人間は大なり小なりみんな何かを作った経験があるからね。わかるだろう? なんとなく僕の言いたいこと」
 たとえば背徳の神グラスヴェリアや秩序神ナーファが存在しなかったら、例えば創造の魔術師・辰砂が存在しなかったら。
 この世界は今よりももっと平和“だった”かもしれない。だがそれは“この世界”ではない。
 その言葉で人々は、辰砂が創造の女神をこの世界とは異なる界の「ただの人間」と説明した理由が理解できた。
 すでに出来上がった過去に手を加える形で世界を創り変えるのは神の御業ではなく人間の業だ。
「だからさ、創造の女神を呼びだせば一発なんだよ。この世の法則を無視した現象ですら彼女はその手を伸ばすだけで一ひねりすることができる。でもさ……そうしたら、僕らの存在って何?」
 神に全てを頼ってどんな困難も排してもらう。それで本当にいいのか。
 せっかく造物主が自分たちに個としての生を与えてくれたのに、自らままごとに使われる人形に成り下がるも同然だ。
「だから僕はその方法はおすすめしないよ。この世界がこの世界で在り続けるためには、確かにもう創造の女神は帰って来ない方がいいんだ」
 軽い語り口の辰砂の不遜な物言いに、神々のうちの一人が口を開く。
「今の貴様の話が、全て作り話でないという保証はどこにあるんだ」
 辰砂はにやりと、いつものように悪戯っ子の顔で笑う。
「そんなものはどこにもない。信じるも疑うもどうぞご自由に? どちらにしたって、意味はないけどね」
 軽く肩を竦める辰砂は、一同の顔を改めて見直すと問いかけた。
「随分話がずれちゃったけど、まぁ要するにそういう奥の手もあるよってこと。で――どうする?」

 ◆◆◆◆◆

「というわけで閑話休題。いい加減本題に入ろう。はーい、誰かあの最強の闘神・破壊神をも下した無敵の暴走背徳神様を倒すためのいい案のある人ー」
 やる気はあるはずなのに何故かないように聞こえる問いかけに、辰砂の弟子たちはそれぞれに微妙な表情を浮かべた。それが思い浮かんだら苦労はないという顔をする。
 この世界の完全なる消滅という結末は、辰砂が創造の女神を呼びだせば解決するという奥の手があることはわかった。
 そしてそれは、決して選ぶことのない禁断の選択肢であることも。
 ならばそのことは一度忘れてもっと具体的な背徳神打倒案を捻りださねばならないのだが、やはりそんなものが簡単に思い浮かぶはずもない。
「はいはい、頭を切り替えてねー。一度話の規模が大きくなったからって、そこに拘泥しすぎても意味はありません。自分のお国の政治に不満があるからって、今日の仕事の手を抜いて政治討論すれば僕らの生活が良くなるわけではありませんからねー。目先の問題からの逃避に有名人の悪口を持ち出しても仕方ありませんよー」
「言いたいことはわかるけどその例えはどうなのお師匠様」
 律儀に突っ込むザッハールを横目に、人間たちは再びうんうん唸りながら問題解決の方法を探ることになった。
 神々は誰もかれもが押し黙り、そんな人間たちを見つめている。
 ある者は不満げに、ある者は興味深そうに、ある者は面白がって。
 創造の女神を呼び出せると聞いた時点で、多くの神々はそれが唯一無二の方法だと信じ切っていた。それは危険だとする辰砂の説明も彼らには理解できず、何故辰砂の弟子だけではない神々の眷属たちまでもがその案を破棄したのかもわからない。
 ただ彼らは、今は造物主の名を預かり創造の魔術師と名乗る存在が母神の意志を彼らよりも一歩深く知らされていたという事実を知り、少しだけ辰砂に対する見方を変えた。
 神々にも心はある。感情はある。だからかつての戦いの記憶をなかったことにすることはできないが、この場で最も創造の女神の意図に近しい存在が辰砂であるならば、彼の意志を尊重しようと合意したのだ。
 これで辰砂が人間には不可能だからと神々に問題を解決させるような相手ならば神々も彼の言葉や行動を信じはしなかっただろうが、少なくとも辰砂は自らの都合の良い時だけ神を頼るような真似はしない。
 彼が出す答に、冷たい言い方をするならば神々は興味を持っていた。
 もう少し綺麗な言い方をするならば、創造の女神が信じた“人間”という存在の選ぶ答が、この先の世界の様相を決定するのだと信じていた。
 さて、辰砂はどんな答を出すのだろう――。

 ◆◆◆◆◆

 神々から興味津々で見守られているとも知らず、辰砂は周りが静かなのをいいことに、主には弟子たちと共に背徳神打倒の方法を考える。
 今のところ天上界はまだ背徳神の暴走の影響を受けておらず穏やかだが、あの嵐を視認している人間たちはたまったものではないだろう。魔力の強い人間ならば背徳神の力の強大さを感じて、よけい不安になっているに違いない。
 その不安が杞憂どころか、今現在もじわじわと確実にこの世界が滅びに向かっている証なのだから困ったものだ。造物主には頼らないと宣言してはみたものの、その代わりにどうするのかという具体的な行動を、辰砂たちも決めかねていた。
「背徳神様を倒せればいいんだけど、倒せないからなー」
 ここにいる世界最強の人間である辰砂が無理だと判断したのだ。今の背徳神に誰が立ち向かったところで犬死するだけに決まっている。
 発想の転換を図るしかない。
「背徳神様は最初からああだったわけじゃないんでしょう? その御心をなんとか鎮めていただくことはできないんですか?」
 巫女の女装姿のルゥが辰砂に問いかける。彼は以前タルティアンという王国で大地神を崇める豊穣の巫覡を勤めていたことがあり、今も大地神の眷属としてこの天上界にティーグと共に住んでいる。
 巫覡らしくその考えは神々を敬い崇めるものだ。しかし辰砂は苦しげに眉根を寄せて首を横に振った。
「いい考えだとは思うけど……たぶんグラスヴェリアには通用しないよ。言っただろう、彼は頭がいい。本当は全部わかっているんだ。自分のこの苦しみが今は無意味であるということさえも」
 背徳神の狂気は、ただ感情に任せただけのものではない。彼は常闇の牢獄で様々なことを考え続け、そして幾つもの答を出しただろう。けれどそのどれもが彼を救い、納得させることはできなかった。
「辰砂様には、背徳神様の考えがわかるんですか?」
「わかるとまでは行かないけれど、なんとなく感ずるものはある。あの人は――」
 背徳の神グラスヴェリアは恐らく、自分が人間の死の原因となってしまったことが辛いのだ。
 アディスを狂うほどに愛していたとか、そういう問題ではないのだ。いつまでも嘆き悲しむには、殺された巫女の転生者は生まれ変わった人生を周囲に傍迷惑なほどに愉快に生きている。
 だがそれでも、一度喪われた命――人生は戻らない。神である彼は、人間の人生そのものを愛していた。背徳と快楽を優先して倫理を置き去りにするグラスヴェリアは、歪んだ愛の神とも言われる。彼が愛していたのは、人の人生そのもの。
 永遠の命を持つ神である自分が、人間の貴重な短い人生を奪う原因となった。彼はそれに耐えられなかったのだ。そして神としての自らの在り方に疑問を持ったからこそ、その力を暴走させて変質し自戒する道を選んだ。
 この世界を、この世界の神々を、失敗作だと断じたのは造物主たる創造の女神ではなく、背徳神の方。
 辰砂の推測に、人々は溜息をついた。他でもない永い間、牢獄の中で謹慎する背徳神を見守り続けた辰砂の言葉だ。説得力はある。
「そもそも狂いかけたあの人は僕をアディスって呼んだからね。もう誰の声も届かないと思う」
「アディスさん……いえ、その方ではなく弟さんのディソスさんでしたか。その生まれ変わりの方に説得していただくとか」
 その提案には辰砂よりも、ディソスの生まれ変わりと面識のあるラウルフィカが強烈な拒否反応を示した。
「あの男に神の説得など無理だろう。そんな柄じゃない。もともと付き合いのある相手なら別かも知れないが、私なら自分の知り合いがああいう輩に生まれ変わったと知ったら余計自分を責める」
「俺もリークは別に嫌いじゃないけど陛下が転生してあの性格になったら正直今すぐ死ぬわ」
 ザッハールまでもが口を添える。ルゥの憂い顔が別の意味で引きつった。
「つまり、説得は不可能なんですね。だったらやはり倒すしかない」
「別に殺さずとも封印などの手はあるでしょうが、それを選ぶにもまずは背徳神様の力に対抗できなければいけないんですね」
 彼らは口ぐちに問題点を上げていく。年季のこもった絶望感を言論で突破するのは難しい。そもそもあの暴走状態の背徳神では、話を聞いてもらうのも一苦労二苦労ではすまないかもしれない。
「うむむむむ」
 さんざん頭を悩ませるが、いつまで経っても有用な案は出て来なかった。辰砂も、他の者たちもだ。だんだん彼らも疲れてきて、真面目な話し合いの中にふざけた意見や適当な雑談が混ざりはじめる。
「辰砂が脱いで色仕掛けで迫れば?」
「脱いで問題が解決するならいくらでも脱ぐけど」
「こう、嫌な音を出して動きを止めるとか」
「……あの状態の背徳神様、耳はどこ?」
「破壊神様が生まれ変わるのを待つのは?」
「人間への生まれ変わりは数百年単位でかかるそうですよ。その間に世界が滅びます」
「せめて直接攻撃じゃなく、間接接触とか遠隔で何かできる手段があればなぁ」
 愚痴っぽい言葉を誰かが言えば、それに誰かが突っ込みを入れる。
「背徳神様の力って結局は辰砂と秩序神様の魔力の複写だろ? 純粋に規模さえ小さければ僕たち人間の手でもなんとかなりそうなのにな」
「その規模が問題なんだよ。まさか背徳神様に二百等分されてくださいとお願いするわけにもいかないし」
 シファとアリオスの何気ないやりとりに、辰砂はふと顔を上げた。
 思わず動かした視線の先には弟子たちではなく、月の民とその恋人の元魔王がいる。
「同じ人類の敵と言っても、お前みたいに人間にやられちゃう魔王もいるのにね」
「軍隊や勇者に倒される程度の魔王と神様を一緒にしないでくれる? あれは次元が違いすぎるよ」
 シェイの発した「魔王」という言葉。ラウズフィールの口にした「勇者」という役目。
 更に、難しい顔をしたラウルフィカが美しい唇から汚い作戦を口にする。
「復讐……もとい自分より強い相手と戦う際には、自分の力を相手より高めるのも有効だが、逆に相手の力をこちらと同等まで引きずり下ろすという作戦もあるな。あとは道具や他者の手を借りるなど、外的要因に頼るのも有効だ」
「そりゃあ相手が対人間ならそれもアリですけど、相手は神様ですからね。引きずりおろすったって、俺たちにできるのは、せいぜい弱くなれ~って呪いをかけることくらいですかね」

「それだ」

「へ?」
 唐突な辰砂の言葉に、全員が一斉に動きを止めて彼の方に注目する。
「何? 何か思いついたの?」
「お前が言ったんだろ、ザッハール。――グラスヴェリアに呪いをかける」
「ハァ?!」