山鳥毛

さんちょうもう

概要

「太刀 無銘 一文字(山鳥毛)」

米沢の上杉家伝来の太刀の異名。
無銘、「伝一文字」だが昔は「兼光」の作と考えられていた。
「山鳥毛(さんちょうもう、やまとりげ)」「山燃亡(さんしょうもう)」など異名がある。

付属の打刀拵は室町末期のもの。
鐔のない特殊な拵えは上杉家以外には殆ど類を見ないと言う。

上杉景勝御手選三十五(または三十六)腰之一として名高い。

『備山愛刀図譜』(データ送信)
著者:佐藤貫一 編 発行年:1958年(昭和33) 出版者:岡野多郎松
目次:七 国宝 太刀 無銘 一文字 号 山鳥毛
ページ数:31~36 コマ数:51~55

白井城主・長尾憲景から上杉謙信へ贈られ、戦後まで上杉家に伝来した。

1556年(弘治2)、白井城主・長尾憲景から上杉謙信へ贈られた

上杉家の刀剣台帳では、上杉謙信が弘治2年(1556)10月、上州(群馬県)へ出馬の際、白井城主・長尾憲景が謙信に贈ったもので、備前長船兼光の作となっている。

また、『双林寺伝記』(天正十九年記)にも、「兼光、号山燃亡」とあるという。

昔は備前長船の兼光の作と考えられていたようである。
しかし、無銘であるので、現在は作風から備前一文字の作と考えられている。

『上杉家腰物台帳』や『双林寺伝記』は直接読むことのできる資料が国立国会図書館デジタルコレクションにもないようなので、今のところは福永酔剣先生の『名刀と名将』辺りが刀剣書の山鳥毛の記述としては詳しい方である。

『名刀と名将(名将シリーズ)』(データ送信)
著者:福永酔剣 発行年:1966年(昭和41) 出版者:雄山閣
目次:上杉謙信の愛刀
ページ数:139、140 コマ数:76、77

上杉景勝御手選三十五腰

上杉景勝が差料とし、上杉景勝御手選三十五腰のうちに入れている。

『名刀と名将(名将シリーズ)』(データ送信)
著者:福永酔剣 発行年:1966年(昭和41) 出版者:雄山閣
目次:上杉謙信の愛刀
ページ数:139、140 コマ数:76、77

「やまどりげ」「さんしょうもう」「山てうもう」

「山鳥毛」というのは刃文が山鳥の毛のように華麗なところからの命名であろうが、山燃亡という別名もあるという。これは山火事がえんえんと燃えさかっているような刃文からの命名であろう、と福永酔剣氏は推測している。

『名刀と名将』によれば、長尾憲景の子孫の権四郎が景勝に仕えていて、その家の記録には「山とりげの刀を献じた」とあるらしい。

一方、景勝が三十五腰を選んだ時の書付けでは音読になっている。

上 秘蔵 一、山てうもう

これらの表記だと「山鳥毛」の字は浮かぶが、「山燃亡」だと「山しょうもう」になる。

『上杉家腰物台帳』には『双林寺伝記』の説も併記されているそうだが、このような疑問が残るという。

1938年(昭和13)5月10日、重要美術品認定

ネット上だと1937年(昭和12)12月24日の認定としているサイトが複数あるんですが国立国会図書館のデジタルコレクションで検索に引っかかってきたのはこちら(1938年5月10日)です。

正直官報の見方自信ないのでその辺自信ある方出来たら頑張って……(丸投げ)。

『官報 1938年05月10日』
著者:大蔵省印刷局 [編] 発行年:1938年(昭和13) 出版者:日本マイクロ写真
目次:文部省告示第二百一号 昭和十三年五月十日
ページ数:245 コマ数:4

1940年(昭和15)5月3日、国宝(旧国宝)指定

1940年に、当時の国宝保存法の関係で重要美術品の資格が消えて新たに国宝(今の重要文化財)に指定されました。

この時の山鳥毛の部分、上の方に認定告示昭和13年と書いてあるのでやっぱり重要美術品認定は昭和13年じゃないかと思うんですが。

『官報 1940年05月03日』
著者:大蔵省印刷局 [編] 発行年:1940年(昭和15) 出版者:日本マイクロ写真
目次:文部省告示第四百四十九号 昭和十五年五月三日
ページ数:136 コマ数:5

1952年(昭和27)3月29日、国宝(新国宝)指定

3月指定までしかわからなかったので結局「文化遺産データベース」見ました。

『日本美術年鑑 昭和28年版』(データ送信)
著者:東京国立文化財研究所美術部 編 発行年:1954年(昭和29) 出版者:東京国立文化財研究所
目次:新指定国宝一覧
ページ数:17 コマ数:33

戦後上杉家を出て、現在は備前長船刀剣博物館蔵

『名刀集美』の時点では上杉憲章氏蔵。

「国宝日本刀特別展」に出品され、その時の所有者は岡野光弘氏。

『名刀集美』(データ送信)
著者:本間順治 編 発行年:1948年(昭和23) 出版者:日本美術刀剣保存協会
目次:古刀の部
コマ数:194

『国宝日本刀特別展目録 : 刀剣博物館開館記念』
発行年:1968年(昭和43) 出版者:日本美術刀剣保存協会
目次:太刀 無銘 一文字(号山鳥毛) 岡野光弘氏蔵
コマ数:54

現在は「備前長船刀剣博物館蔵」に所蔵されている。
瀬戸内市が購入するまでの紆余曲折はネット上にアーカイブが残っている。

作風

刃長二尺六寸一分五厘(約79.2センチ)。
もとの身幅が一寸二分(約3.6センチ)もある堂々たる剣形で、ハバキもとの刃に今なお切り込みの痕が残っている。

表裏に棒樋をかき通す。

刃文は大房の丁子乱れが鎬にかかり、物打ちの一分は皆焼になっている。

『日本刀大百科事典』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1993年(平成5年) 出版者:雄山閣
目次:やまどりげ【山鳥毛】
ページ数:5巻P235

調査所感

『日本刀大百科事典』に載ってないかと思ったら「さ行」ではなく「や行」にいる刀。

ざっくり調べてたら重要美術品認定の日付がすでにWikipedia含む他のサイトが出してるものと違う……あれ……? と妙なところで引っかかってしまった。

う、うーん。

いやでもしかし気にして調べるところは本当にそこでいいのか。

曖昧なのは重要美術品認定の方で、国宝指定の方は同じだしなぁ……。

もっとこう、上杉景勝御手選三十五腰が実は本当に景勝が選定したものなのかよくわからない、全ての刀剣のリストを出すのは不可能っぽいとかそういう話をした方がいいんじゃないのか。

上杉の刀はそれぞれに有名ですが資料が一般人の見れるところにあるようなものじゃない関係で『日本刀大百科事典』で酔剣先生がこう言ってますって書いたら私のような素人調査としては大体それで終わりなんですよね……。

一応デジコレだと刀剣関係の雑誌で愛刀家が山鳥毛を見た感想を言っていたり、興味のある方なら楽しめるかもしれない情報がありますので直接検索して気になったものを読みに行けばいいと思います。

最低限だけわかればいいやって人へのお勧めは『名刀と名将』あたりの酔剣先生の本ですかね。

参考文献

『刀剣談』
著者:高瀬真卿 発行年:1910年(明治43) 出版者:日報社
目次:第四門 武将の愛刀 上杉の一文字
ページ数:78 コマ数:64

『剣話録.下』
著者:剣話会 編(今村長賀) 発行年:1912年(明治45) 出版者:昭文堂
目次:九 福岡一文字其他
ページ数:65 コマ数:39

『刀剣談 再版』(データ送信)
著者:羽皐隠史 著, 高瀬魁介 訂 発行年:1927年(昭和2) 出版者:嵩山房
目次:第四、武将の愛刀 上杉家の一文字
ページ数:139 コマ数:81

「御料林 (104)」(雑誌・データ送信)
発行年:1937年(昭和12) 出版者: 帝室林野局林野會
目次:山彥
ページ数:200 コマ数:113

『鑑刀随録』(データ送信)
著者:小泉久雄 発行年:1937年(昭和12) 出版者:小泉久雄
目次:山陽道 播磨・美作・備前・備中・備後・安藝・周防・長門國
コマ数:984

『官報 1938年05月10日』
著者:大蔵省印刷局 [編] 発行年:1938年(昭和13) 出版者:日本マイクロ写真
目次:文部省告示第二百一号 昭和十三年五月十日
ページ数:245 コマ数:4

『官報 1940年05月03日』
著者:大蔵省印刷局 [編] 発行年:1940年(昭和15) 出版者:日本マイクロ写真
目次:文部省告示第四百四十九号 昭和十五年五月三日
ページ数:136 コマ数:5

『勤皇日本刀の研究』
著者:内田疎天 発行年:1942年(昭和17) 出版者:公立社
目次:第七章 承元番鍛冶中の福岡一文字工
ページ数:104 コマ数:68

『名刀集美』(データ送信)
著者:本間順治 編 発行年:1948年(昭和23) 出版者:日本美術刀剣保存協会
目次:古刀の部
コマ数:194

『国宝図録 第2集』(データ送信)
著者:文化財協会 編 発行年:1953年(昭和28) 出版者:文化財協会
ページ数:40 コマ数:50

『日本美術年鑑 昭和28年版』(データ送信)
著者:東京国立文化財研究所美術部 編 発行年:1954年(昭和29) 出版者:東京国立文化財研究所
目次:新指定国宝一覧
ページ数:17 コマ数:33

『日本古刀史』(データ送信)
著者:本間順治 発行年:1958年(昭和33) 出版者:日本美術刀剣保存協会
目次:三、 鎌倉時代
ページ数:78 コマ数:75

『備山愛刀図譜』(データ送信)
著者:佐藤貫一 編 発行年:1958年(昭和33) 出版者:岡野多郎松
目次:七 国宝 太刀 無銘 一文字 号 山鳥毛
ページ数:31~36 コマ数:51~55

『日本の刀剣 (日本歴史新書) 』(データ送信)
著者:佐藤貫一 発行年:1961年(昭和36) 出版者:至文堂
目次:5 備前一文字派の名工
ページ数:138 コマ数:81

『武将と名刀』(データ送信)
著者:佐藤寒山 発行年:1964年(昭和39) 出版者:人物往来社
目次:上杉景勝御手選三十五腰 コマ数:87~92

『日本刀 : 本質美にもとづく研究』(データ送信)
著者:山田英 発行年:1964年(昭和39) 出版者:中央刀剣会
目次:九州の刀匠 鎌倉時代 備前 福岡一文字系
ページ数:56 コマ数:72

『名刀と名将(名将シリーズ)』(データ送信)
著者:福永酔剣 発行年:1966年(昭和41) 出版者:雄山閣
目次:上杉謙信の愛刀
ページ数:139、140 コマ数:76、77

『国宝 第5 (鎌倉時代 下) [本編]』(データ送信)
著者:毎日新聞社国宝委員会 編 発行年:1966年(昭和41) 出版者:毎日新聞社
目次:工芸品
ページ数:84、85 コマ数:100、101

『国宝日本刀特別展目録 : 刀剣博物館開館記念』
発行年:1968年(昭和43) 出版者:日本美術刀剣保存協会
目次:太刀 無銘 一文字(号山鳥毛) 岡野光弘氏蔵
コマ数:54

『日本刀講座 第9巻 新版』(データ送信)
発行年:1968年(昭和43) 出版者:雄山閣出版
目次:福岡一文字 概説および系図
ページ数:179 コマ数:162

『国宝 : 原色版 第9 (鎌倉 第3)』(データ送信)
著者:毎日新聞社「国宝」委員会事務局 編 発行年:1969(昭和44) 出版者:毎日新聞社
目次:工芸品 コマ数:66
目次:解説 コマ数:147

『日本刀物語 続』(データ送信)
著者:福永酔剣 発行年:1969年(昭和44) 出版者:雄山閣
目次:山鳥毛一文字
ページ数:139、140 コマ数:81、82

「刀剣と歴史 (453)」(雑誌・データ送信)
発行年:1970年(昭和45)1月 出版者:日本刀剣保存会
目次:斬れ味と刃角 / 山本天津也
ページ数:13 コマ数:13

「日本美術工芸 (380)」(雑誌・データ送信)
著者:日本美術工芸社 [編] 発行年:1970年(昭和45)5月 出版者:日本美術工芸社
目次:日本刀の美と歴史 / 末永雅雄
ページ数:26 コマ数:14

『原色日本の美術.21』(データ送信)
著者:尾崎元春、佐藤寒山 発行年:1970年(昭和45) 出版者:小学館
目次:一、日本刀概説
ページ数:230 コマ数:236

『新・日本名刀100選』(紙本)
著者:佐藤寒山 発行年:1990年(平成2) 出版社:秋田書店
(中身はほぼ『日本名刀100選』 著者:佐藤寒山 発行年:1971年(昭和46) 出版社:秋田書店)
目次:29 山鳥毛一文字
ページ数:155

「刀剣と歴史 (453)」(雑誌・データ送信)
発行年:1978年(昭和53)1月 出版者:日本刀剣保存会
目次:雑題迷話(1) / 笹野大行
ページ数:21、22 コマ数:15、16

「大日光 (51)」(雑誌・データ送信)
発行年:1980年(昭和55)1月 出版者:日光東照宮
目次:日光助真の拵について/小笠原信夫
ページ数:31 コマ数:19

『日本刀大百科事典』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1993年(平成5年) 出版者:雄山閣
目次:やまどりげ【山鳥毛】
ページ数:5巻P235

『定本 上杉名宝集』(紙本)
著者:横山昭男、竹内道雄 監修 発行年:1996年(平成8) 出版者:郷土出版社
目次:図版解説
ページ数:216

「岡山県立博物館研究報告 (20)」(データ送信)
著者:岡山県立博物館 編 発行年:2000年(平成12)3月 出版者:岡山県立博物館
ページ数:101 コマ数:55

『日本刀物語』(紙本)
著者:杉浦良幸 発行年:2009年(平成21) 出版者:里文出版
目次:Ⅱ 名刀の生きた歴史 1 武将と日本刀 上杉家の刀剣 山鳥毛一文字
ページ数:31

概説書

『図解 武将・剣豪と日本刀 新装版』(紙本)
著者:日本武具研究界 発行年:2011年(平成23) 出版者:笠倉出版社
目次:第3章 武将・剣豪たちと名刀 上杉謙信が愛した刀 ページ数:156~161

『日本刀図鑑: 世界に誇る日本の名刀270振り』(紙本)
発行年:2015年(平成27) 出版者:宝島社
目次:山鳥毛一文字 ページ数:13

『図解日本刀 英姿颯爽日本刀の来歴』(紙本)
著者:東由士 編 発行年:2015年(平成27) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
目次:大名家が所有した名刀たち 山鳥毛 ページ数:30

『刀剣目録』(紙本)
著者:小和田康経 発行年:2015年(平成27) 出版者:新紀元社
目次:≪第二章 鎌倉時代≫ 備前国福岡 一文字 ページ数:70

『物語で読む日本の刀剣150』(紙本)
著者:かゆみ歴史編集部(イースト新書) 発行年:2015年(平成27) 出版者:イースト・プレス
目次:第3章 太刀 山鳥毛 ページ数:85

『刀剣物語』(紙本)
著者:編集人・東由士 発行年:2015年(平成27) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
目次:大名・将軍が所持した刀 山鳥毛 ページ数:152、153

『刀剣説話』(紙本)
著者:編集人・東由士 発行年:2020年(令和2) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
(『刀剣物語』発行年:2015年を加筆修正して新たに発行しなおしたもの)
目次:戦国大名が所有した刀 山鳥毛 ページ数:168、169

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