祢々切丸

ねねきりまる

概要

「山金造波文蛭巻大太刀 中身無銘(号袮々切丸太刀)」

栃木県日光・二荒山神社の蔵刀。「弥々切丸」とも。

「瀬登太刀」「柏太刀」と並ぶ二荒山神社の三大太刀。
二荒山神社の神宝としては祢々切丸が刃長最大の大太刀。

例年4月の弥生祭において「瀬登太刀」「柏太刀」と共に男鹿の生皮の上に並べられ宝刀三振りとして飾られる祭儀がある。

二荒山神社への奉納は『日光東照宮 (現代教養文庫) 』によれば室町時代の中期頃。

作者は不明。
「日本文化財 (18)」では作者は不明としつつも室町時代中期頃の下野国の刀工の作ではないかと推測している。

号の由来である「祢々を斬った」という伝承に関して、はっきりと出典を記した資料は見つけられない。

「祢々」に関しても、『日本刀大百科事典』では日光付近の方言で「河童」のことだとしているが、ただ「怪獣」とだけ書かれている場合もある。

1967年(昭和42)年6月15日、重要文化財指定。
「祢々切丸」単体ではなく、「柏太刀」と二振りセットでの登録。

現在も所有者は二荒山神社、所在地は栃木県。
二荒山神社、一階常設展示室にて展示されているようである。

「祢々を斬った」という伝説のある大太刀

『日本刀大百科事典』によると、「祢々」は日光付近の方言で、「河童」のことらしい。
昔、この刀が自ら抜け出して、祢々を斬った、という伝説のある大太刀。

下記の雑誌では「祢々」は「禰々ヶ沢」の「怪獣」としている。

「日本文化財 (18) 」(雑誌・データ送信)
発行年:1956年10月(昭和31) 出版者: 奉仕会出版部
目次:禰々切丸
ページ数:45 コマ数:24

「袮々」を斬ったという伝承はあるが、「袮々」の正体はどうやらはっきりしていないらしい。

室町時代中期の奉納

下記の本によれば 二荒山神社へは室町時代中期の奉納とのこと。

『日光東照宮 (現代教養文庫) 』(データ送信)
著者:矢島清文 発行年:1961年(昭和36) 出版者:社会思想研究会出版部
目次:三 二荒山神社境内にて
ページ数:164 コマ数:95

二荒山神社で毎年4月に行われる弥生祭にて神に捧げられる

毎年4月の弥生祭には、頭のついた雄鹿の皮のうえに、「瀬登太刀」「柏太刀」とともに並べ、神に捧げられる。

『日光東照宮 (現代教養文庫) 』(データ送信)
著者:矢島清文 発行年:1961年(昭和36) 出版者:社会思想研究会出版部
目次:三 二荒山神社境内にて
ページ数:164 コマ数:95

1967年(昭和42)年6月15日、重要文化財指定

昭和42年(1967)年6月15日、二荒山神社名義で重要文化財に指定された。

『文化財保護委員会年報 昭和41年度』(データ送信)
発行年:1968年(昭和43) 出版者:文化財保護委員会
目次:資料編 (指定関係)
ページ数:45 コマ数:30

現在

現在も所有者は二荒山神社、所在地は栃木県。

「国指定文化財等データベース」

「日光二荒山神社」のWEBページによると一階常設展示室にて展示中。
朝日新聞のデジタル記事によると2023年には日光二荒山神社宝物館で特別展が行われ展示されていた。

作風

刃長七尺一寸(約215.15センチ)余、鵜の首造り。
地鉄は板目肌。
刃文は小乱れ。
無銘。

『日本刀大百科事典』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1993年(平成5年) 出版者:雄山閣
目次:ねねきり【祢々切り】
ページ数:4巻P142

拵え 「山金造波文蛭巻太刀拵」

打ち刀拵えで、金具は山金造り。
鞘は蛙巻きの上に漆で波状文を描く。

『日本刀大百科事典』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1993年(平成5年) 出版者:雄山閣
目次:ねねきり【祢々切り】
ページ数:4巻P142

『日本刀大百科事典』の記述を載せておいてなんだが、作風と拵えについてはネットで「栃木の文化財」のページを見た方が詳しく知ることが出来る。

調査所感

去年まで全然情報ないなと思ってたねねさんもデジコレパワーアップで格段に読める資料が増えたよーい!
全文検索を褒めたたえよ!

・二荒山神社の神宝

他の刀もやってきて思いましたが祢々切丸のように神社に奉納されている刀はその神社に関する文献に結構話が載っています。

江戸以前から奉納されていたものは明治期からすでにデジコレで読めるような本が発行されて名前が載っています。

・「弥々切丸」とも書く

ややって読んじゃいそうですがルビで「ねね」と振ってあります。

・重要文化財指定は柏太刀とセット

重要文化財としての指定は祢々切丸単独ではなく、同じく二荒山神社の宝刀である柏太刀とセットになっています。

・二荒山神社の他の名刀になんか見覚えのある名前が

二荒山神社の神宝系の記述を調べていると「抜丸」「小豆長光」が一緒に納められていてなんとなく気になってしまいます。
名前だけ並んでいてこの二振りに関する解説はほぼないのでどう捉えるべきかよくわかりませんが。

刀の世界でもあいつと同じ名前だなーという感覚は実はよくあるのかもしれない。

参考サイト

「日光二荒山神社」
「栃木の文化財」
「国指定文化財等データベース」

参考文献

『日光山案内記』
著者:中村頼治 編 発行年:1886年(明治19) 出版者:東京同益出版社
目次:御別所龍光院 毎朝御膳を備ふ
ページ数:15 コマ数:12

『晃山実記』
著者:栃木県 編 発行年:1891年(明治24) 出版者:下野新聞旭香社
目次:神宝
ページ数:55 コマ数:38

『日光大観』(データ送信)
著者:山下重民 編 発行年:1912年(大正1) 出版者:東陽堂
目次:二荒山神社
ページ数:49 コマ数:34

『日光宝物館陳列目録』
著者:日光宝物館 編 発行年:1917年(大正6) 出版者:日光宝物館
ページ数:77 コマ数:48

『大日本名所図会 第2輯 第1編』
著者:大日本名所図会刊行会 編 発行年:1919年(大正8) 出版者:大日本名所図会刊行会
目次:木曽路名所図会 巻六
ページ数:522 コマ数:291

『日光国立公園』(データ送信)
著者:綱島定治, 矢島市郎 著 発行年:1936年(昭和11) 出版者:地人社
目次:四 二荒山神社本社
ページ数:16 コマ数:27

『日光の今昔』(データ送信)
著者:城田興法 発行年:1936年(昭和11) 出版者:文献社出版部
ページ数:167 コマ数:95

『日光史』(データ送信)
著者:星野理一郎 発行年:1937年(昭和12) 出版者:日光第二尋常高等小学校
目次:傳說古實の一覽表
ページ数:28 コマ数:216

「日本文化財 (18) 」(雑誌・データ送信)
発行年:1956年10月(昭和31) 出版者: 奉仕会出版部
目次:禰々切丸
ページ数:45 コマ数:24

『日光東照宮 (現代教養文庫) 』(データ送信)
著者:矢島清文 発行年:1961年(昭和36) 出版者:社会思想研究会出版部
目次:三 二荒山神社境内にて
ページ数:164 コマ数:95

『日光 : その美術と歴史』(データ送信)
著者:岡田譲 発行年:1961年(昭和36) 出版者:淡交新社
目次:二荒山信仰について 喜田川清香
ページ数:74  コマ数:42

『栃木県神社誌』(データ送信)
発行年:1964年(昭和39) 出版者:栃木県神社庁
目次:二、日光・二荒山神社
ページ数:70 コマ数:87

「Museum (194)」(雑誌・データ送信)
著者:東京国立博物館 編 発行年:1967年5月(昭和42) 出版者: 東京国立博物館
目次:昭和四十二年三月指定 国宝・重要文化財一覧(上)
ページ数:31 コマ数:17

『文化財保護委員会年報 昭和41年度』(データ送信)
発行年:1968年(昭和43) 出版者:文化財保護委員会
目次:資料編 (指定関係)
ページ数:45 コマ数:30

「史迹と美術 38(2)(382)」(雑誌・データ送信)
発行年:1968年2月(昭和43) 出版者:史迹美術同攷会
目次:重要文化財目録(中)四十三年六月分
ページ数:80 コマ数:23

『栃木県歴史年表』(データ送信)
著者:栃木県歴史年表編さん委員会 編 発行年:1970年(昭和45) 出版者:下野新聞社
目次:付録
ページ数:140 コマ数:75

『下野の古代史 上 (歴史と風土 ; 12) 』(データ送信)
著者:前沢輝政 発行年:1975年(昭和50) 出版者:有峰書店
目次:栃木県文化財一覧
ページ数:210 コマ数:111

『上都賀郡誌』(データ送信)
著者:上都賀郡教育会 編 発行年:1977年(昭和52) 出版者:鹿沼市誌料刊行会
目次:第四章 社寺及び宗教
ページ数:268 コマ数:138

『下野年鑑 1981年版』(データ送信)
著者:下野新聞社事業局出版部 編 発行年:1981年(昭和56) 出版者:下野新聞社
目次:県勢
ページ数:120 コマ数:63

『日本刀大百科事典』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1993年(平成5) 出版者:雄山閣
目次:ねねきり【祢々切り】
ページ数:4巻P142

「大日光 (67)」(雑誌・データ送信)
発行年:1996年8月(平成8) 出版者:日光東照宮
目次:神橋伝説私考–勝道伝説成立以前の日光 / 高藤晴俊
ページ数:88 コマ数:50

概説書

『物語で読む日本の刀剣150』(紙本)
著者:かゆみ歴史編集部(イースト新書) 発行年:2015年(平成27) 出版者:イースト・プレス
目次:第3章 太刀 祢々切丸
ページ数:102

『図解日本刀 英姿颯爽日本刀の来歴』(紙本)
著者:東由士 編 発行年:2015年(平成27) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
目次:古今東西天下の名刀 祢々切丸
ページ数:76

『刀剣物語』(紙本)
著者:編集人・東由士 発行年:2015年(平成27) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
目次:三条宗近作の刀 祢々切丸
ページ数:82、83

『刀剣説話』(紙本)
著者:編集人・東由士 発行年:2020年(令和2) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
(『刀剣物語』発行年:2015年を加筆修正して新たに発行しなおしたもの)
目次:鬼・妖を切った刀 祢々切丸
ページ数:32、33