姫鶴一文字

ひめつるいちもんじ

概要

「太刀 銘一 附打刀拵」

上杉景勝秘蔵の“三十五腰”の一つ。
「一」と在銘。

鎌倉中期の典型的な福岡一文字派の作で、上杉家独特の鐔のない打刀拵がついている。

号の由来については研師の夢に美しい姫君となって現れたと言う逸話がある。

昔、磨り上げのため、研師に出したところ、その夜の夢に美しい姫君が現れ、助命を嘆願した。
二晩同じ夢を見たので、上杉家の刀剣係にその話をしたところ、刀剣係も同じ夢をみた、というので、磨り上げを取り消した。

その姫が、自分の名はツルといったので、以後、その刀を姫鶴一文字、と呼ぶようになった。

しかしこの逸話の出典史料が存在せず、逸話について載せている刀剣書の方でも、こういう伝説があるが号のいわれは定かではないとされている。

明治14年(1881)、明治天皇が米沢に巡幸のさい、天覧に供したところ、押形が欲しい、とのお言葉があったので、刀絵図を描いて献上したという。

1937年(昭和12)12月24日、重要美術品認定。
1949年(昭和24)5月30日、国宝(旧国宝)指定。現在は重要文化財。

戦後は上杉家を出て一時期個人蔵となっていた。

現在は「米沢市上杉博物館」蔵。

上杉景勝秘蔵の「三十後腰」の一

『日本刀大百科事典』によると、

上杉景勝秘蔵の“三十五腰”の一つ。
(上杉景勝御手選三十五腰)

「一」と在銘。

天正十六年に採られた押形があるという。

「刀剣と歴史 (494)」(雑誌・データ送信)
発行年:1976年(昭和51) 出版者:日本刀剣保存会
目次:古剣書の話(8) / 福永酔剣
ページ数:26 コマ数:18

研師の夢に美しい姫として現れた逸話

昔、磨り上げのため、研師に出したところ、その夜の夢に美しい姫君が現れ、助命を嘆願した。
二晩同じ夢を見たので、上杉家の刀剣係にその話をしたところ、刀剣係も同じ夢をみた、というので、磨り上げを取り消した。

その姫が、自分の名はツルといったので、以後、その刀を姫鶴一文字、と呼ぶようになった、という伝説がある。

この伝説は複数の刀剣書で語られているが、同時に出典を示す資料の名はどこにも伝わっていない。
語る研究者たち自身も「号のいわれはこういう伝説があるが明らかでない」としているようである。

「刀剣と歴史 (494)」(雑誌・データ送信)
発行年:1968年(昭和43) 出版者:日本刀剣保存会
目次:明治天皇と刀剣(上) / 千鳥庵主人
ページ数:11、12 コマ数:10、11

『日本刀おもしろ話』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1998年(平成10年) 出版者:雄山閣
目次:妖怪変化編 刀の霊姫鶴の泣訴
ページ数:66~69

1881年(明治14)の天覧

明治14年(1881)、明治天皇が米沢に巡幸のさい、天覧に供したところ、押形が欲しい、とのお言葉があったので、刀絵図を描いて献上した。

『山形県図書館協会報 (9月號)(6)』(雑誌・データ送信)
 発行年:1936年(昭和11)9月 出版者:山形県図書館協会
 目次:明治天皇米澤御駐輦中の事に就て / 黑井悌次郞
 目次:宮内省御用掛たりし宮島誠一郞氏より上杉家々職原三左衞門氏に寄せたる書狀
 ページ数:2~4 コマ数:2、3

『名刀と名将(名将シリーズ)』(データ送信)
著者:福永酔剣 発行年:1966年(昭和41) 出版者:雄山閣
目次:上杉謙信の愛刀
ページ数:142、143 コマ数:78

1937年(昭和12)12月24日、重要美術品認定

昭和12年(1937)12月24日、重要美術品認定。
上杉憲章伯爵名義。

「太刀 銘一 附打刀拵」

『官報 1937年12月24日』
著者:大蔵省印刷局 [編] 発行年:1937年(昭和12) 出版者:日本マイクロ写真
目次:文部省告示第四百三十四号 昭和十二年十二月二十四日
ページ数:793 コマ数:5

1949年(昭和24)5月30日、国宝(旧国宝)指定

昭和24年(1949)5月30日、国宝(旧国宝)指定。
上杉憲章伯爵名義。

「太刀 銘一 附打刀拵」

『官報 1949年05月30日』
著者:大蔵省印刷局 [編] 発行年:1949年(昭和24) 出版者:日本マイクロ写真
目次:文部省告示第百四十九号 昭和二十四年五月三十日
ページ数:317 コマ数:3

その後、一時期個人蔵へ

昭和43年の時点では上杉憲章伯爵の旧蔵から青山孝吉氏蔵になっている。

『指定文化財総合目録 [昭和43年版] (美術工芸品篇)』(雑誌・データ送信)
発行年:1968年(昭和43) 出版者:文化財保護委員会
目次:東京都
ページ数:239 コマ数:131

現在は「米沢市上杉博物館」蔵

「国指定文化財等データベース」によると、

現在の所有者は米沢市。
保管施設は上杉氏ゆかりの貴重な品々を収蔵する「米沢市上杉博物館」。

作風

刃長二尺三寸七分(約71.8センチ)。
地鉄は大板目肌に、映り華やか。刃文は大丁子乱れで、鎬を越したり、皆焼風になった部分さえある。
棟には切り込みもある。
中心は少し区送りしてあるが、中心先を切ってある。
目釘孔二個。「一」と在銘。

天正16年(1588)の押形には、「姫つる一文じ也。みね一文字也。やきは大乱也。百貫、上々」とあるという。

「刀剣と歴史 (494)」(雑誌・データ送信)
発行年:1976年(昭和51) 出版者:日本刀剣保存会
目次:古剣書の話(8) / 福永酔剣
ページ数:26 コマ数:18

『日本刀大百科事典』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1993年(平成5年) 出版者:雄山閣
目次:ひめづるいちもんじ【姫鶴一文字】
ページ数:4巻P254、255

拵え

『武将と名刀』によると、
上杉家独特の鐔のない打刀拵がついている。

『武将と名刀』(データ送信)
著者:佐藤寒山 発行年:1964年(昭和39) 出版者:人物往来社
目次:上杉謙信と長光・兼光の名刀など
ページ数:77 コマ数:41

名称としては「黒漆合口打刀拵」なのだが姫鶴一文字特有の拵えというより上杉家共通の仕様で山鳥毛などと同じ拵えとなる。

調査所感

天正16年に採られた押形があるということでその頃から名刀として知られていたことになる。

しかし天正16年辺りの情報に関する他の資料名全然聞いたことないな。ぐぬぬ。

そして意外なことに研師の夢に美しい姫となって現れ磨り上げを中止してもらったという逸話に関して出典がどこにもない……?

刀剣書や概説書ではよく見かける伝説ですが、これも出典となる資料名そういえば聞いたことないな……。

まぁ刀剣の研究史調査も何十振りもやれば、うむ、それはよくあることだ! と納得できるんですが。

今素人がチェックできる本はほぼ酔剣先生の本ですね。
『名刀と名将』『日本刀物語続』『日本刀大百科事典』『日本刀おもしろ話』等。

ただ姫鶴の場合は昔からこの名で呼ばれていたにしても、重要文化財としての指定名称に号が入っていないタイプなので検索を見落としている可能性はあります。

上杉家の刀は腰物帳などが一般に公開されていないことから素人が調べるのはちょっと難しいんですよね。

どこかになんかいい資料ないものだろうか。

参考サイト

「国指定文化財等データベース」

参考文献

『刀剣談』
著者:高瀬真卿 発行年:1910年(明治43) 出版者:日報社
目次:第四門 武将の愛刀 上杉の一文字
ページ数:78 コマ数:64

『剣話録 下』
著者:剣話会 編(今村長賀) 発行年:1912年(明治45) 出版者:昭文堂
目次:九 福岡一文字其他
ページ数:65 コマ数:39

『九段刀剣談叢 第1輯』
著者:中央刀剣会本部 編 発行年:1926年(大正15) 出版者:中央刀剣会本部
目次:四 山陽道の刀工
ページ数:58、59 コマ数:34

『刀剣談 再版』(データ送信)
著者:羽皐隠史 著, 高瀬魁介 訂 発行年:1927年(昭和2) 出版者:嵩山房
目次:第四、武将の愛刀 上杉家の一文字
ページ数:139 コマ数:80、81

『山形県図書館協会報 (9月號)(6)』(雑誌・データ送信)
 発行年:1936年(昭和11)9月 出版者:山形県図書館協会
 目次:明治天皇米澤御駐輦中の事に就て / 黑井悌次郞
 目次:宮内省御用掛たりし宮島誠一郞氏より上杉家々職原三左衞門氏に寄せたる書狀
 ページ数:2~4 コマ数:2、3

『鑑刀随録』(データ送信)
著者:小泉久雄 発行年:1937年(昭和12) 出版者:小泉久雄
目次:山陽道 播磨・美作・備前・備中・備後・安藝・周防・長門國
ページ数:168 コマ数:971

『官報 1937年12月24日』
著者:大蔵省印刷局 [編] 発行年:1937年(昭和12) 出版者:日本マイクロ写真
目次:文部省告示第四百三十四号 昭和十二年十二月二十四日
ページ数:793 コマ数:5

『勤皇日本刀の研究』
著者:内田疎天 発行年:1942年(昭和17) 出版者:公立社
目次:第七章 承元番鍛冶中の福岡一文字工
ページ数:104 コマ数:68

『官報 1949年05月30日』
著者:大蔵省印刷局 [編] 発行年:1949年(昭和24) 出版者:日本マイクロ写真
目次:文部省告示第百四十九号 昭和二十四年五月三十日
ページ数:317 コマ数:3

『武将と名刀』(データ送信)
著者:佐藤寒山 発行年:1964年(昭和39) 出版者:人物往来社
目次:上杉謙信と長光・兼光の名刀など
ページ数:77 コマ数:41

『名刀と名将(名将シリーズ)』(データ送信)
著者:福永酔剣 発行年:1966年(昭和41) 出版者:雄山閣
目次:上杉謙信の愛刀
ページ数:142、143 コマ数:78

『日本刀物語 続』(データ送信)
著者:福永酔剣 発行年:1969年(昭和44) 出版者:雄山閣
目次:上杉謙信の愛刀
ページ数:142、143 コマ数:83

「大日光 (51)」(雑誌・データ送信)
発行年:1980年(昭和55)1月 出版者:日光東照宮
目次:日光助真の拵について/小笠原信夫
ページ数:31 コマ数:19

『日本刀大百科事典』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1993年(平成5年) 出版者:雄山閣
目次:ひめづるいちもんじ【姫鶴一文字】
ページ数:4巻P254、255

『日本刀おもしろ話』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1998年(平成10年) 出版者:雄山閣
目次:妖怪変化編 刀の霊姫鶴の泣訴
ページ数:66~69

概説書

『日本刀図鑑: 世界に誇る日本の名刀270振り』(紙本)
発行年:2015年(平成27) 出版者:宝島社
目次:姫鶴一文字
ページ数:55

『図解日本刀 英姿颯爽日本刀の来歴』(紙本)
著者:東由士 編 発行年:2015年(平成27) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
目次:大名家が所有した名刀たち 姫鶴一文字
ページ数:27

『刀剣目録』(紙本)
著者:小和田康経 発行年:2015年(平成27) 出版者:新紀元社
目次:≪第二章 鎌倉時代≫ 備前国福岡 一文字
ページ数:71

『物語で読む日本の刀剣150』(紙本)
著者:かゆみ歴史編集部(イースト新書) 発行年:2015年(平成27) 出版者:イースト・プレス
目次:第3章 太刀 姫鶴一文字
ページ数:87

『刀剣物語』(紙本)
著者:編集人・東由士 発行年:2015年(平成27) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
目次:大名・将軍が所持した刀 姫鶴一文字
ページ数:148、149

『刀剣説話』(紙本)
著者:編集人・東由士 発行年:2020年(令和2) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
(『刀剣物語』発行年:2015年を加筆修正して新たに発行しなおしたもの)
目次:戦国大名が所有した刀 姫鶴一文字
ページ数:164、165