同田貫正国

どうだぬきまさくに

概要

刀工・同田貫正国

肥後同田貫系の刀工。
姓は小山、諱は初め信賀、通称を上野介という。
子孫の説によれば、発祥地は肥後国菊池郡菊鹿町稗方にある「同田貫どんの跡」という。
刀銘にも「肥州菊池住信賀」、「菊池住同田貫上野介」と切ったものがある。
同国球磨郡にも駐槌し、「肥後国求麻住同田貫信賀」とも切っている。
定住したのは、同国玉名市亀甲だった。それで亀甲を、俗に同田貫村と呼ぶようになった。

正国の没年は後裔の家の墓碑や位牌によれば、慶長18年(1613)11月19日という。享年は不明。

『肥後国志 巻之9 増補校訂』
著者:森本一瑞 著, 水島貫之 校補 発行年:1884、1885(明治17、18) 出版者:熊本活版舎
ページ数:50 コマ数:52

銘文の出典は『如手引抄(十一冊本)』出典のものはいつも通りこの本が簡単には読めないので確認できず。
それ以外は『日本刀大百科事典』による酔剣先生の記述。

正国の後裔の話の出典は『刀苑』だがこれも簡単には読めない。

熊本城主・加藤清正との関わり

熊本城主・加藤清正から「正」の字を与えられ、信賀を正国と改めたという。(『肥後国志』『藤公遺業記』)

『肥後文献叢書 第2巻』
著者:武藤厳男 等編 発行年:1909、1910年(明治42、43) 出版者:隆文館
目次:藤公遺業記一巻
ページ数:145 コマ数:78

清正の肥後入国の年紀を切った刀があるが、銘に疑問があると『日本刀大百科事典』で述べられている。

「鍋割り正国」という異名の由来が正しいならば、それは一言坂の戦の時のことだから、清正の肥後入国の前からすでに「正国」と改名していたことになる。

清正が熊本城築城のさい、正国に城の忍び返し・鉄障子・槍・刀・釘などを造らせたので、炭鉄料として蔵米千石を支給する、という古文書があるが、清正の花押が違っているため、偽書と見るべきだという。

作風(『日本刀大百科事典』)

身幅広く、重ね厚く、切先の延びた豪壮な剣形。
槍や薙刀もかなり多い。
地鉄は杢目肌立つ。
刃文は五の目乱れ。
彎(のた)れに乱れまじり、直刃などをやく。

鍋割り正国について

一言坂の役に、鍋の如き兜を頂いた甲斐の一兵士が憤然挺進して来るのを、永田政吉が迎え撃って、真っ向から快斫した。
故に鍋割正国と名付けたという。

出典は『古今鍛冶備考』となっているが今回は原典を読めなかった。
(国立国会図書館に本そのものはあるらしいので読みたい方は頑張ればそちらをチェックできるかも)
原文ではなく内容だけなら下記の本などで確認できる。

『大日本刀剣新考』(データ送信)
著者:内田疎天 発行年:昭和8 出版者:岡本三郎
目次:第八章 古刀略志(第七) 西海道
ページ数:679、700 コマ数:759、760

明治の天覧兜割りについて(同田貫だが正国ではなく別の刀工の話らしい)

明治20年11月11日伏見宮殿下の邸に行幸があった際に余興として兜割が行われた。
明珍鍛えの南蛮鉄桃形の兜を真剣で割れるかどうか試された。
警視庁の逸見宗助、上田馬之助など当時一流の剣術家であった二人は失敗したが、かつて江戸幕府の幕臣でもあった榊原健吉が出入りの刀剣商から取り寄せた同田貫の刀で成功させた。

『日本剣道史』(データ送信)
著者:山田次朗吉 発行年:1960年(昭和35) 出版者:再建社
目次:第十章 維新の世變と劒道の衰退
ページ数:376、377 コマ数:200

ただし、この時榊原健吉が使用した刀は書籍では単に「同田貫」とだけ書かれていることが多い。
ネット検索するとこの時の刀は「正国」ではなく江戸時代の「正次」または「業次」とされていることが多い。

同田貫派の刀工の話はその中で最も有名な正国のエピソードとして伝わっているものがあるのかもしれない。

調査所感

通常、刀工の名は苗字ではなく下の名や受領名プラス下の名で有名になることが多いと思うのだが、同田貫正国に関して調べるとどうも同田貫派は「同田貫派」そのものが「同田貫」の名で個々の刀工の区別薄く広まっているように思える。

正国は兄の清国とともに加藤清正と縁の深い刀工として同田貫派では最も有名らしく、他の同田貫派の刀工のエピソードも正国の名で語られている。

このページの記述は基本的に『日本刀大百科事典』の話を基準にしているが、同田貫正国に関してまとまった話を読みたいなら同じく酔剣先生のこの辺りの本から入るのがわかりやすいのではないだろうか。

『名刀と名将(名将シリーズ)』(データ送信)
著者:福永酔剣 発行年:1966年(昭和41) 出版者:雄山閣
目次:加藤清正の槍と刀
ページ数:226~230 コマ数:120~122

とうらぶは原作ゲームの8面追加に伴って8-1~8-4全部に同田貫の回想が増えたことからも、加藤清正との関係はやはり同田貫正国の関連情報として見逃せない部分なのだろうと思う。

刀工・集合体系の刀の調査はどうも横着しがちなのだが、現在は国立国会図書館のデジタルコレクションで普通に刀工の研究書を気軽に読めるので、もっと詳しく知りたい方はそちらも調べてみると良いのではないだろうか。

参考文献

『剣話録.上』
著者:剣話会 編(別役成義) 発行年:1912年(明治45) 出版者:昭文堂
目次:九州物下 ページ数:82、83 コマ数:51

『日本刀物語』
著者:前田稔靖 発行年:1935年(昭和10) 出版者:九大日本刀研究会
目次:二一 肥後と劍工
ページ数:168、169 コマ数:94

『名刀と名将(名将シリーズ)』(データ送信)
著者:福永酔剣 発行年:1966年(昭和41) 出版者:雄山閣
目次:加藤清正の槍と刀
ページ数:226~230 コマ数:120~122

『日本刀物語 続』(データ送信)
著者:福永酔剣 発行年:1969年(昭和44) 出版者:雄山閣
目次:加藤清正の槍と刀
ページ数:226~230 コマ数:125~127

『日本刀大百科事典』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1993年(平成5年) 出版者:雄山閣
目次:まさくに【正国】
ページ数:5巻P76、77

概説書

『物語で読む日本の刀剣150』(紙本)
著者:かゆみ歴史編集部(イースト新書) 発行年:2015年(平成27) 出版者:イースト・プレス
目次:第3章 太刀 同田貫正国
ページ数:68、69

『日本刀図鑑: 世界に誇る日本の名刀270振り』(紙本)
発行年:2015年(平成27) 出版者:宝島社
目次:同田貫
ページ数:20

『刀剣目録』(紙本)
著者:小和田康経 発行年:2015年(平成27) 出版者:新紀元社
目次:≪第四章 安土桃山・江戸時代≫ 肥後国菊池 正国 同田貫正国
ページ数:323

『図解日本刀 英姿颯爽日本刀の来歴』(紙本)
著者:東由士 編 発行年:2015年(平成27) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
目次:古今東西天下の名刀 同田貫正国
ページ数:79

『刀剣物語』(紙本)
著者:編集人・東由士 発行年:2015年(平成27) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
目次:大名・将軍が所持した刀 同田貫正国
ページ数:174、175

『刀剣説話』(紙本)
著者:編集人・東由士 発行年:2020年(令和2) 出版者:英和出版社(英和MOOK)
(『刀剣物語』発行年:2015年を加筆修正して新たに発行しなおしたもの)
目次:戦国大名が所有した刀 同田貫正国
ページ数:172、173

『刀剣聖地めぐり』(紙本)
発行年:2016年(平成28) 出版者:一迅社
目次:同田貫正国
ページ数:60、61

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