ミュージカルの山姥切長義・山姥切国広に関する考察

結局いつもの二振りでは

ミュージカルはもう次で対大侵寇相当の話(初期刀が折れた頃の過去回想と思われる)に入るだろうし、考察とか必要ないかなーと思ったんですが、いつも通り長義くんのことだけ考えよ♪ ってしてたら大体の筋はこういうもんじゃないかなって一つ結論出たんで簡単にまとめ。

1.小竜景光の遠回しな主張

もともとは「花影ゆれる砥水」だけ考察しようとして、でもあの話の大筋自体は一期関連を抑えとけば感想でやった段階でいいかなって。

考察が必要なのは他の話と連続性のある部分、とくに長義くんと小竜くんが話していた「放棄された世界」絡みの話くらいかなあと。

あと個人的に花影長義くん周りでこことあれが疑問だよなって思ってたところが江水と陸奥の国広で繋がった感じ。

思考の入り方として、まずは花影の小竜くんと長義くんから行きましょう。

「花影ゆれる砥水」の小竜くんはちょいちょい長義くんを構うそぶりを見せて、特に山姥切国広との関係について何か言いたげというか、関心があると言うか、国広が「江水散花雪」で歌っていた歌を長義くんに教えるとかそういう行動を取っています。

あの行動に何の意味があったのか、花影の小竜くんは一体何を考えていたのか?

ここ最近ずっと、この辺の小竜くんの行動が意味がいまいちわからないよなと考えていて。

長義と国広関係で何か言いたそうなんだけど、あまりにも遠回りな感じで何が言いたいのかと。

これ、「陸奥一蓮」の情報を得てから「江水散花雪」の国広の台詞を考え直してこういう結論になりました。

小竜くんが何かを言いたいのは長義くんじゃないな、国広の方だ。

「江水散花雪」で、仲間を本丸に返すために自分が犠牲になろうとした国広。

あの行動について、多分長義くんに国広に説教してほしいんだと思う!(バァアアアアアン)

「江水散花雪」の国広の行動は、あの話だけで見ると不明部分が多くて判断保留ポイントがいくつかできてしまってそんなに変に見えないんだけど、「陸奥一蓮」まで見ると大体どういう背景かを明かされたので国広がどういう思考をしたのかもある程度検討つくと思います。

そしてそれを踏まえて考えると、正直私も江水の国広は横っ面ひっぱたきたいのよね(オイ)。

小竜くんは江水で国広に助けられた方の立場だから自分の立場から色々言うのはまずいなと考えて、古参とかそういう立場を超えて唯一国広に真正面から意見できる長義くんに期待しているんだと思います。

2.江水国広の「できれば長義がいいんだが」

国広「できれば長義がいいんだが まあ あいつの方が嫌がるか」

(江水散花雪)

「江水散花雪」の国広の台詞。これは何を意味しているのか?

長義「人間に関わりすぎるのは得策とは思えない 問題が起きなければいいが」
小竜「そういうときのために 君がいる」

(花影ゆれる砥水)

「花影ゆれる砥水」のこの辺りのやりとりからすると、長義くんはやっぱり監査官として「放棄された世界」の情報を持っているから、長義くんがいればその世界が放棄されても比較的安全に脱出できるってことだと思うんですよね。

この辺りまでは他の人の感想・考察でも言われています。

長義くんはやはり、監査官としてその辺の対応力が他の刀剣男士より優れているんだろう。

で、「花影ゆれる砥水」のこのやりとりを踏まえると、「江水散花雪」の国広の台詞が問題になってくる。

国広は「できれば長義がいい」と言いながら、自分でその案を却下している。
しかしその理由が見えてこない。

「まあ あいつの方が嫌がるか」

ここがずっとわからなくてねぇ。

長義くんの性格から考えて、仲間の命がかかってる任務を嫌がるってのが想像できないのよね。

「江水散花雪」時点だとあの本丸の長義・国広がどういう関係性なのかまったく不明だったので実際に国広がそういう判断を下す理由となる事件か何かあった可能性も排除できたなかったんだけど。

「花影ゆれる砥水」を見ると、それにしてはあの本丸の長義くん「普通」なのよね。

めちゃくちゃストレートな山姥切長義像で、ミュージカル本丸だけ他の派生作品に比べてふたつの山姥切が顔も見たくねえほどガチガチに殺し合ってるぜ! 感とかまったくないよね……。

むしろそんなことがあったら最後らへんで長谷部がその歌は山姥切国広が歌っていたとかごく自然に教えてくれたりしないよね。

花影長義くんに、他の派生と違った特別な何かがあるとはまったく思えない。

一方で、最新作の「陸奥一蓮」まで見ると、むしろ他の派生作品と明らかに違う理由があるのは国広の方なんだとわかる。

ミュージカル本丸ではおそらく、初期刀の歌仙兼定が山姥切国広を庇って折れている。

この場合の折れるはお守りとかない正真正銘の死亡扱いですね。

それを踏まえてミュージカル国広の内面を考えると……

「できれば長義がいいんだが まあ あいつの方が嫌がるか」

この台詞、原作ゲームや他の派生の山姥切国広像と一致させるなら、おそらく「自虐による邪推」じゃないの?

長義くんが仲間の命かかっている場面で任務を嫌がるとは思えない。

それよりも、国広が長義くんの内面を勝手に想像して、あいつは俺と一緒の任務は嫌がるだろうと、長義くんに実際に相談もせずに、最適解を思いつきながら自分でそれを「放棄」したって話だと思う。

これ、「放棄された世界」への対応力が国広の最初の選択である「山姥切長義」と、それを却下した際に審神者が推薦した「肥前忠広」で実際に差がなければそれほど重要な話じゃないんだけど。

肥前くんが実際に「放棄された世界」からの脱出にあまり慣れてる感じでもなかった「江水散花雪」と、「花影ゆれる砥水」の小竜くんと長義くんのやりとりを見ると、やっぱり監査官である長義くんと先行調査員である肥前くんで差がありそうな感じがするのよね。

つまり、「江水散花雪」は、最初から国広が自分で考えた通り「山姥切長義」に同行してもらえば、最後に命がけの大脱出するのは同じでももう少し余裕があった可能性が高い。

そうなると、それを選ばなかった国広の判断はかなり問題。

「あいつの方が嫌がるか」

嫌がるかってなんだよ嫌がるかって。
任務なんだから嫌がっても説得ぐらいしろお前の本歌だろ。
そもそも長義くんその状況で別に嫌がらないだろ。

「江水散花雪」の国広は、長義くんが嫌がるかもしれないぐらいの理由で部隊にとっての最善策を捨てて、挙句最悪の場合、自分が「放棄された世界」で折れるかもしれない行動をとったことになる。

おいおいおい馬鹿かよ、それって「長義の感情>国広自身の命」ってことじゃん。
そんな馬鹿な選択を普通するわけが……

(原作ゲーム及び数々の派生の山姥切国広の行動を思い返し中)

山姥切国広ならするわ(確信)。

……ここにいたるまでの数々の考察でやりましたが、国広はどう考えても、「長義の感情>国広自身の命」という価値観で動いている。

どう考えても頭おかしいんだが、原作ゲームから各派生まで多分それが一番自然な結論になる。

これで国広の方に自分が長義くん大好きだって自覚があれば話はまだわかりやすいんだけど国広自身にその自覚がなさそうだからこそ、話を整理しないと国広の行動はマジ奇行。

原作から割とそのけがあって、派生もやっぱり全部そういう行動だと思うのよね。
特に舞台でも花丸でも結局自分がどう呼ばれたいかを主張せず「好きに呼べ」とかいう辺り。

国広の根幹はやはりそこだと考えて、しかもこれは原作から派生まで全ての作品で一致すると見ていいと思われる。いや私も派生全部はまだ見ていませんが。

しかし、国広が「江水散花雪」で「放棄された世界」になりそうな出陣先に連れていく戦力として長義を却下した理由がそれなら、普通に「判断ミス」としか言いようがない。

長義を連れていけば全員無事に脱出できるかもしれない場面で、長義よりその点で劣るかもしれない肥前くんを選んだと言うなら。

……これが、ちゃんと理由があるならいいんですよ。

長義くんと肥前くんの能力に差がないと思ったとか。
肥前くんを長義くんより信頼してるとか。
肥前くんだけでなくあの面子なら特に問題なく無事に帰れると思ったとかなら。

でも「江水散花雪」の国広の言動はそうじゃないよね。

やすやすと諦める気はなくとも、最悪の場合は国広自身を犠牲にする方向で想定していた。

大包平がいてくれたからなんとかなったけど、大包平が大包平じゃなかったら普通に死んでたやろあれ。

出陣先で折れること自体は普通にありえることだし、最初から最適解や最高戦力を揃えてそれでもダメだったという純粋な力不足なら、そういう結末でもしょうがない。

でも、「江水散花雪」はおそらく違う。

「できれば長義がいいんだが」

じゃあ最初から長義くんに頼めよってだけの話。

審神者の方は肥前くんを「適任」としているから、肥前と長義にそもそも差はないと考えていると思われる。でも国広は違う。自分で長義を真っ先に候補として挙げながら却下した。

その理由らしきものが判明したのが「陸奥一蓮」。

歌仙が国広を庇って折れている。

だから。

――その歴史を肯定するために、山姥切国広は歌仙兼定と同じように、後輩を庇って折れようとしている。

3.ミュージカル本丸の呪い

国広の「江水散花雪」での言動全般。自分だけ折れてでも仲間を帰そうとしたこと。
三日月が自分をすり減らしながら歴史を改竄する行為。
歴史を守ることは犠牲ありきだと異様に偽悪的な鶴丸国永。

「陸奥一蓮」で大包平が加州に「怠慢」だと言ったことでようやく加州が動き出したこと。
小竜くんが国広に直接文句を言わず、長義くんの方に働きかけている理由。

これらは全て一つながりの要素ですね。それがミュージカル本丸の物語。

初期刀の歌仙兼定が、山姥切国広を庇って折れたことから始まったあの本丸の「呪い」。

……あの本丸は要するに、

歌仙が折れたことをまだ受け止められていないんだ。

新刃がそれを知らないのは、それを知る古参の中核メンツがそれを受け入れられていないから。

国広も、鶴丸も、三日月も。

むしろ彼らは折れた歌仙を想い、その犠牲を「失敗」や「間違った歴史」としたくないために、その行為に外から意味づけようとして、本当の物語を変えてしまいそうになっている。

それが一番顕著なのが「江水散花雪」の国広の行動で、あそこで「山姥切長義」という最適解をとらずに妥協した国広が選んだのは、自分が折れてでもみんなを本丸に帰すこと。

それはもはや「呪い」だろう。

歌仙が折れたことを「失敗」に断じたくないからこそ、それを正しい歴史とするために、結果の方をとって「古参は後輩のために折れる」という状況を繰り返そうとしている。

歌仙が折れたことで始まった呪い。
けれど呪いをかけたのは歌仙じゃない。
歌仙を想う、国広たち自身。

ミュージカル本丸の国広は、一度囚われれば容易に抜け出せない最悪の円環を自分で作りだそうとしている。

幸いだったのは「江水散花雪」の部隊長の大包平が、国広による円環踏襲をきっちり拒絶したこと。

さらに大包平は「陸奥一蓮」でも加州に働きかけて、あの本丸の後輩たちが、古参の抱える「呪い」に向き合う切っ掛けを作っている。さすが大包平。

今まで三日月を中心とした歴史改竄である敗者救出行動と、本丸の物語の中核である初期刀が折れた話の背景が「歌仙兼定が山姥切国広を庇って折れた」という事情だと判明して二つの要素が繋がってきたなと。

4.小竜と長義と国広

そこで重要になってくるのが「江水散花雪」の国広と「花影ゆれる砥水」の長義を繋ぐ、小竜景光の存在かと。

大包平は国広のやり方をまっすぐ拒絶できる強さを持っている。それはそれでいいんだけど、それができないのが小竜くん。

「江水散花雪」の面子で国広の行動に一番精神的なダメージ受けたのって小竜くんじゃないかな……。

小竜くんと国広の関係に関しては、国広側の事実誤認である井伊家伝来説をどう処理しているのかわからないのでこの方面はちょっと保留したいんですが。

それを差し引いても、小竜くんは「花影ゆれる砥水」で長義くんを「弟分」と呼んでいる。

この「弟分」の解釈に関しては原作ゲームから同じ言葉を使っている日光の回想を参考に引っ張ってきていいと思われる。

回想其の97 『黒田家の弟分』

日光一文字「お前たちがどう思おうが弟分として扱い、そして血を分けた弟の如く守る。それだけの話だ」

これまでの考察から言うと、とうらぶの作品群で出てくる単語は全て同じ用法で使っていると考えていいと思われる(ただし言葉遊び的要素によりもともと一つの言葉に複数の意味が込められている)。

「弟分」という言葉の重みも現実では使う人によって軽かったり重かったりするだろうけど、おそらくとうらぶでは日光のこの台詞通り「血を分けた弟の如く」でいいと考えられる。

そうなると「花影ゆれる砥水」で長義くんを「弟分」と呼んでいた小竜くんも、長義くんのことを血を分けた弟のように思っていることになる。

原作ゲームだと全然出てこない設定なんですが、舞台の方でも大般若さんが長義くんを初登場時から普通に身内として扱っていたこと、最近原作ゲームに実装された新たな長船派の後家兼光周りの事情など考えると、長義くんは原作でも派生でもこの扱いなんだと思われます。

つまり、原作ゲームで刀派長船に分類されていなくとも普通に長船派から見たら身内・弟分枠。

となると、小竜にとっての長義が弟みたいなものなのだから、その写しの国広も甥っ子ぐらいの身内感はあるだろうというわけで……。

「江水散花雪」はもともと大包平・南泉・小竜の部隊に任された任務だったことを考えると、小竜くんからすれば自分の失態で甥っ子を死なせかけたようなもの。

普通にメンタルがきつい。

(リアルに甥や姪がいる年代の人間からすると、江水国広の行動はどうしてそんな危険なことをするんだお前は! ってビンタしたくなる)

あの面子で国広に庇われて最も「呪い」にかかりそうなのは小竜くんだよなと。刀派は別でも遠い身内みたいなものだから。
それに「江水散花雪」の世界は井伊直弼が中心で井伊家の刀であった小竜くんの主と言ってもいい存在なので、そういう意味でもきつい。あの世界に最も詳しいのは本当は小竜くんのはずだったろうから。

「江水散花雪」の小竜くんは最後に殺された井伊直弼を見ながら「なんてことないよ たくさんいた 主の一人さ!」とか言ってますけどね。誤魔化しだよな。

ねえ小竜くん、きみ原作ゲームだと回想一つしかないくらい情報少ないけど派生というかミュージカル見ると長義くんと性格の基本ライン似てない……?

というか最近長船派について色々考えてるけど、長船派わりとみんなこういう性格じゃない? 長義くんが一番極端なだけで、長船派はみんな全体的にいつも誰かのことを遠回しに気に掛けて、でも自分の感情は取り繕って隠してって、君ら本当さあ……。

小竜くんのやり方がかなり遠回しなのは「花影ゆれる砥水」での一期一振への態度を見ても明らかです。
あまりに遠回し過ぎて伝わらないやりとりに大般若さんが思わず「あんた自身はどうだと聞かれてんだよ」って口を挟んじゃうくらいには。まあこれは一期に向けてなんですけど。

これまで国広に対する長義くんのやり方遠回しだね伝わらないよって思ってたけど小竜くんもなかなかだな。そしてこの二振りより余裕はあるけど大般若さんも実は(以下略)

そんな小竜くんだからこそ、「江水散花雪」の後始末として、国広に自分を犠牲にするような行動をやめさせたいのだと思われます。

そのために「花影ゆれる砥水」の小竜くんは、長義くんが実際のところ国広に対してどう考えているかを知るためにちょこちょこ話題を出して揺さぶっているのだと思われる。

一期相手より更に婉曲だと感じたのは本命が国広だからだな。まずは長義くんに国広の現状に気づいてもらわなきゃならない。

誰かの命を犠牲にして生きるのは苦しい。そんなやり方で助けてもらいたくない。

だから小竜くんはその気になれば、「江水散花雪」の国広の行動をそう言って突っぱねる権利はあるんですが、小竜くんがその権利を行使すると国広を余計に追い詰めちゃうんだよなと。

国広は生きてるから、小竜くんは国広に文句を言おうと思えば言える。

でも国広自身は? ――歌仙はもういない。

折れてしまった歌仙相手に国広は何かを言うことはできない。
それどころか、自分が助けられた事実の拒絶は、もういない歌仙を否定してしまうことになる。
国広の気持ちを考えれば、それはしたくないだろう。
むしろそれができないからこそ、喪った歌仙を肯定するために同じことを繰り返そうとしている。

小竜くんが国広を直接叱ったら、自分が歌仙の命を犠牲にして生き残ってしまったことに今も苦しんでいる国広を酷く傷つけ追い詰めることになる。

だから別のアプローチが必要なんでしょう。

本歌である長義に、山姥切国広を叱って(救って)ほしい。
あの子の抱えている痛みに、気づいてあげてほしい。

それが花影小竜くんの、山姥切関連の行動の意味ではないかと考えます。

5.山姥切長義だけの権利

蜂須賀「まったくこの本丸の古参の方々は何もかも一人で抱え込もうとする傾向がある 不愉快だ」
水心子「ああ そうだな」

(陸奥一蓮)

「陸奥一蓮」で蜂須賀がこう言ってたけど、結局最後はこれじゃないかね。ミュージカル本丸の物語は。

あと、戯曲本(結びの響き、始まりの音)の対談で話題に出ていたのですが、若い役者さん(和泉守兼定役の有澤さん)が、大切な人を想って相手を叱る行動や感情がわからなくてと言っていた話。

確かにこれは若い人にはわかんないかもしれないけどとうらぶの脚本ではめっちゃ重要なところですね多分。

兼さんが堀川くんをひっぱたく理由も、蜂須賀が長曽祢さんの代わりに近藤さんを斬った理由も結局はここに尽きるし。

ここ考えたらやっぱ国広は長義くんにひっぱたかれるでしょこれ……。

「できれば長義がいいんだが まあ あいつの方が嫌がるか」

そんなことを言うのなら、どうして最初から俺(本歌)を頼らなかった! って。

何もかも一人で抱え込んで、相手の気持ちを勝手に決めて、結果的に相手の心を無視して。

そんなことで歴史を守れるわけがないだろう、と。

小竜くんは国広の気持ちを想えば「江水散花雪」での行動を責めるわけには行かないけど、長義くんはそっちじゃなくこの部分から国広をひっぱたいてもいいと思うんだよね。

国広との任務を嫌がって、国広の危険を見過ごすような長義なんてのはね、自分は本歌に嫌われていると思い込んだ自己否定感MAXの国広が自分の中だけで生み出した質の悪い幻影なんだよ。

本当の長義くんはそんなことで嫌がったりなんかしないよ。

それを国広はわかっていないと。
相手の気持ちを考えているようで考えていない。

そしてそれは、ミュージカル本丸で歌仙の死に囚われてる古参みんなそうなのだろうと思う。

三日月も鶴丸も国広も、歌仙のことを「結果」から考えてそれを肯定しようとするから、本当に大事なことを見失う。

歴史を守るのには犠牲が付き物だ。死んでしまう相手が可哀想だ。だから本来死ぬべき人を救ってしまう。
それでも犠牲を否定できない。自分たちが出した犠牲を否定しないために、犠牲を肯定してしまう。
誰かに助けられた刀は、別の誰かを助けて死ななければならないと思っている。

そんなこと、歌仙が考えるはずもないのに。

……そう、探しても探しても見つからない探し物。折れた歌仙の心は多分、見えてないだけで最初からそこにあるんだろう。

歌仙の性格から考えて、未来に後輩を同じように助けて死ぬことを期待して国広を助けるなんてありえない。

ただ大切だったから助けただけだろう。同じ本丸の仲間である山姥切国広が。

大切なのは誰かを庇って折れたという結果ではなく、ただ助けたかったというその「心」の方だろう。

多分それを国広に思い出させるのが長義くんの役目なんだろうねと。

名前自体に「歌」が入っている歌仙と時折似ていて、けれど写しである山姥切国広に対してだけ機能する「歌」メタファー。本歌。

お前を助ける理由なんて、お前が大事だから! それ以外にないだろう!!

あの本丸の山姥切国広をひっぱたく権利は、「江水散花雪」で勝手に自分の心の中を決められた、山姥切長義だけが持っている。

……ミュージカルの考察はしなくていいかなーと思ったんですが、とりあえず長義くん周りだけ追ったら結論としてはこういうことに。

ミュージカル本丸がどこに向かおうとしているか、これまでの様子が花影長義くんと江水国広の行動に収束して物語として落ち着く結論は出せたかな、と。

実際のところ、どうなるか楽しみですね。

ミュージカルはふたつの山姥切がバラバラに出て来たんであいつら顔合わせるのかどうか微妙だったんですけど、むしろこの感じだと遅くても対大侵寇相当の過去話の余白かその次でこの章の締め辺りに顔合わせるんじゃないかと思われる。

「陸奥一蓮」で「花当番」の引継ぎが水心子から次は「山姥切長義と大包平」という話をしていたので、長義くん自体は近いうちにもう一度登場するフラグ立ってると思う。

大包平の重要性は「江水散花雪」と「陸奥一蓮」で十分やったけど、多分長義くんの真価はこれからなんじゃないだろうか。
「花影ゆれる砥水」では悪くない立ち位置だったけどあれだけだと別のキャラでもいいような役割だったから、むしろ今後の出番の前振りかと。

長義・国広は他の派生だと聚楽第のタイミングで顔を合わせたところから始まって、舞台にいたっては対大侵寇のタイミングで離別じゃないかと思いますが……ミュージカルは逆にその辺りでようやく出会うのかも。

花影長義くん周りで大体知りたかった疑問も解けたかな(一応まだいくつかありますが)。

花影長義くん、小竜くんが「歴史を創るのは力を持つ人間だよ」って言ってた時に「そうだな」ってめちゃめちゃ優しいトーンで言ってたからどういう感情か知りたかったんですけど、あれはやっぱストレートに小竜くんを気遣ったんだろうなと。

多分小竜くんは「江水散花雪」の件で色々な面から結構メンタルにダメージ負ってて、時の政府に見捨てられそうになった被害者だから長義くんはあそこで気遣ったんでしょう。

長義くん自身は力を持つ持たないとか人間を区別する必要性は感じていないと思う。
山姥切の号の件で一見名前にこだわるキャラに見せかけて、実際には長義くんはかなりの本質主義でむしろ上辺の要素は重視しないタイプですねこれ。

花影長義くんはもともと「放棄された世界」関連を気にして色々と考えているし、そこで大変な思いをした仲間を気遣おうとしている。

……うん、やっぱ小竜くんは国広の行状を長義くんにチクろうぜ!

長義くんなら、本歌・山姥切長義なら、きっと山姥切国広が歌仙兼定の死により自分自身にかけてしまった呪いも解いてくれるさ。

なお長義くん自身が国広に一番ひっでえ呪いをかけそうな舞台(略)

ミュージカルだけ長義と国広がまだ顔を合わせていないので色々考察保留していたんですが、どっちも原作から派生まである程度一貫性を保った描写されているので、むしろそっちの一貫性に合わせてミュージカルの二振りの言動を解釈したらミュージカル本筋自体を巻き込んでこの上なくすっきりと結論が出てしまった。

三日月とか鶴丸に関しては知らん、で済ませますが。

とりあえず山姥切国広に対しての最強カードはやはりどこの本丸でも本歌の長義くんなんだなと……。

一見全然別の話に見えて、実は長義と国広の立ち回りどの派生でも変わらないのではこれ。
大体国広が古参ならではの大変な出来事に巻き込まれてて長義くんがフォローする立場じゃないか。
もうその基本ラインは変に穿たなくていい気がする。

と、いうわけで現時点でのミュージカルの考察はこの辺でいいかなと。
どうせおいらは長義くん周り以外は興味ないので、肝心の次回と次々回見るまでこの辺にしておきます。