じぞうゆきひら
概要
『享保名物帳』焼失之部にある豊後国行平作の太刀
刃長二尺五寸六分(約77.6センチ)
「行平作」と三字銘だった。
ハバキ元に地蔵尊を彫る
『日本刀大百科事典』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1993年(平成5年) 出版者:雄山閣
目次:じぞうゆきひら【地蔵行平】
ページ数:3巻P17
『詳註刀剣名物帳 : 附・名物刀剣押形 増補』
著者:羽皐隠史 発行年:1919年(大正8) 出版者:嵩山堂
目次:名物「燒失之部」 地蔵行平
ページ数:274 コマ数:152
“御物
地蔵行平 在銘長二尺五寸六分
地蔵菩薩の彫物有之。
この由来定にならす。”
もと足利将軍義教の御物
『日本刀大百科事典』によれば、もと足利6代将軍義教の御物。
出典は『新刊秘伝抄』らしいが、現在国立国会図書館デジタルコレクションにはない。
のち北条氏綱の重代
同じく『日本刀大百科事典』によれば北条氏綱の重代。
出典は『三好下野入道口伝』らしいが、これも現在国立国会図書館デジタルコレクションにはない。
古剣書は現代に翻刻されているものが少ない。
下記の雑誌では『三好下野入道口伝』は地蔵行平を「細川氏綱」の重代としていたらしいので、「北条氏綱」の重代というのは酔剣先生が検討を入れた後の内容かもしれない。
「刀剣と歴史 (490)」(雑誌・データ送信)
発行年:1976年3月(昭和51) 出版者:日本刀剣保存会
目次:名物の九州物(2) / 千鳥庵主人
ページ数:22 コマ数:16
1581年(天正9)4月12日、細川忠興から明智光秀へ贈られる
天正9年(1581)4月12日、細川忠興が岳父の明智光秀を宮津城に招待したとき、宴半ばに地蔵行平を光秀へ贈った。
『津田宗及茶湯日記 : 評註 他会篇 下』
著者:松山米太郎 評註 発行年:1937年(昭和12) 出版者:津田宗及茶湯日記刊行後援会
コマ数:109
のち徳川将軍家蔵となっていたが、明暦3年(1657)の大火で焼失
『享保名物帳』で「御物」かつ「焼失之部」であるということから判断されていると思われる。
高松宮家伝来の地蔵行平の太刀がある
「銘 豊後国行平作」なので、三字銘だった名物帳の地蔵行平とは別物とされる。
「文化遺産オンライン」によると「東京国立博物館」蔵。
『日本美術年鑑 1931年』(データ送信)
著者:朝日新聞社 編 発行年:1930年(昭和5) 出版者:朝日新聞社
目次:古美術
ページ数:61 コマ数:89
『紀元二千六百年奉祝名宝日本刀展覧会出陳刀図譜』
著者:遊就館編 発行年:1940年(昭和15) 出版者:遊就館
目次:高松宮家御貸下 三 御太刀 銘豊後国行平作
ページ数:3 コマ数:15、16
『日本刀の掟と特徴』
著者:本阿彌光遜 発行年:1955(昭和30).7(13刷:1995.3) 出版者:美術倶楽部
目次:西海道
ページ数:312 コマ数:176
将軍家から戦後出た地蔵行平がある
名物の地蔵行平とする人があるが、刃長が名物より長いので別物とされる。
「文化遺産オンライン」によると「名古屋市博物館」蔵。
「刀剣と歴史 (490)」(雑誌・データ送信)
発行年:1976年3月(昭和51) 出版者:日本刀剣保存会
目次:名物の九州物(2) / 千鳥庵主人
ページ数:22 コマ数:16
調査所感
地蔵行平の来歴は酔剣先生が出典とする本がほとんど現代に翻刻されていない古剣書なので出典を確かめられない不安がありますね。
『日本刀大百科事典』によると「北条氏綱」の重代、北条氏の刀なんですけど雑誌記事で「細川氏綱」の重代になっているので細川氏の刀だったかもしれない……。
現代で「地蔵行平」と呼ばれることのある刀は両方とも銘文や長さが違うために『享保名物帳』の「地蔵行平」とは別物のようです。
『享保名物帳』で「焼失之部」、明暦の大火で焼けてしまったと考えられる「地蔵行平」に関して言えば確かな資料は細川忠興が妻の父である明智光秀に贈ったことが判明している『津田宗及茶湯日記』のようです。
むしろ審神者が「地蔵くん」と呼んでいる「地蔵行平」の最も確かな資料こそ『津田宗及茶湯日記』ではないか?
刀剣関係だと『享保名物帳』の記述に絡めて語られることの多い地蔵行平ですが、茶の湯関係の本だと細川忠興が明智光秀に贈ったこのエピソードが有名なようです。
細川忠興の名が茶会記に出るの自体ここが初登場だとか。
ってことは細川忠興関係で茶道の資料を調べてる人には刀剣本とは別のルートから有名な可能性がある地蔵くん。
とうらぶだと特命調査で初登場、派生作品ではそれに絡んで舞台でも重要な役どころだった地蔵くんなのでキャラとしての考察はいくらでも広げられるんですが、刀剣自体の研究史はこれぐらいだろうか。
参考サイト
「文化遺産オンライン」
「文化遺産データベース」
「国指定文化財等データベース」
(高松宮家伝来の東京国立博物館蔵のものと、将軍家伝来名古屋市博物館蔵のもの)
参考文献
『詳註刀剣名物帳 : 附・名物刀剣押形 増補』
著者:羽皐隠史 発行年:1919年(大正8) 出版者:嵩山堂
目次:名物「燒失之部」 地蔵行平
ページ数:274 コマ数:152
『日本美術年鑑 1931年』(データ送信)
著者:朝日新聞社 編 発行年:1930年(昭和5) 出版者:朝日新聞社
目次:古美術
ページ数:61 コマ数:89
(高松宮家伝来の太刀の地蔵行平)
『日本刀物語』
著者:前田稔靖 発行年:1935年(昭和10) 出版者:九大日本刀研究会
目次:二九 行平の遺蹟
ページ数:245 コマ数:132
『津田宗及茶湯日記 : 評註 他会篇 下』
著者:松山米太郎 評註 発行年:1937年(昭和12) 出版者:津田宗及茶湯日記刊行後援会
コマ数:109
『紀元二千六百年奉祝名宝日本刀展覧会出陳刀図譜』
著者:遊就館編 発行年:1940年(昭和15) 出版者:遊就館
目次:高松宮家御貸下 三 御太刀 銘豊後国行平作
ページ数:3 コマ数:15、16
(高松宮家伝来の太刀の地蔵行平)
『日本刀大観 上巻』
著者:本阿弥光遜 発行年:1942年(昭和17) 出版者:日本刀研究会
目次:第三章 各國刀匠の略歴と其の掟と特徴 第一 古刀の部
ページ数:804 コマ数:277
『武将と茶道』(データ送信)
著者:桑田忠親 著 発行年:1943年(昭和18) 出版者:一条書房
目次:二 明智光秀と茶湯 ページ数:33 コマ数:25
目次:十五 細川三齋 ページ数:182 コマ数:101
「刀剣と歴史 (490)」(雑誌・データ送信)
発行年:1976年3月(昭和51) 出版者:日本刀剣保存会
目次:名物の九州物(2) / 千鳥庵主人
ページ数:22 コマ数:16
『日本刀大百科事典』(紙本)
著者:福永酔剣 発行年:1993年(平成5年) 出版者:雄山閣
目次:じぞうゆきひら【地蔵行平】
ページ数:3巻P17
「茶道の研究 41(9)(490)」(雑誌・データ送信)
発行年:1996年(平成8) 出版者:三徳庵
目次:近世諸大名の茶道–細川三斎の茶の世界(11) / 矢部誠一郎
ページ数:31 コマ数:17