
天狗 11
天狗最終話 七矢 深い森の奥には、天狗の住処があると言う。深く、日の光が入りにくい、空気に神の吐息が混じるようなそんな場所には、必ず天狗が住んでいると、言われている。 天狗――それは、山の護り主達。風と戯れ、狗の顔を持ち、鳥の如く大きな翼を持ち、鼻が高く山伏のような格好をしているという。 山で異音がさも当然のように起これば、それは天狗の仕業と言われた。山で突如食べ物が失われ、おかしな目に遭ったら、それは天狗が側にいたのだという。 突風は天狗の起こした風、子供が攫われればそれは天狗にされてしまった神隠しの一種。 様々な伝説を残す天狗。彼らは妖怪と分類されるにも関わらず、神として奉られたりしている。種類も多く、その名を残す者もいる。 しかし、ここの天狗は一味違うかもしれない。大いなる翼を持って、山に潜んだその者は天狗と名乗った。 だが、彼らは決してその存在を他に漏らさない。そもそも彼らの住処に山本来の生き物とは別の他の生き物が入ってくることはない。 彼らは特殊な結界なるものを立ち上げ、山に他の生き物の侵入を拒むからだ。そこは一種の異郷。彼らが居る山はある山神によって治められていた。その山神...