天狗 詳細設定

天狗 詳細設定

*お読みになる前に/読んでしまった後に*

こちらは天狗としましたシリーズを読んでくださる方への注意事項です。それとネタバレ。

壱.

本作品における天狗設定はすべて無依のオリジナルによるものです。天狗伝説などを元に無依が創作した物語です。というか天狗もどきです。八天狗、宮などは実際の妖怪である天狗の伝説にチラともありません。また、天狗の主が山神というのもオリジナルで、その名が道主というのも嘘です。修験道を通ったものが天狗になる、という考えはありますがその修験道を道主が創った、八天狗が管理している、純粋な天狗は修験道から生まれると言うのも当然オリジナルな勝手に作った設定です。

弐.

これは日本の昔を想定した時代設定ですが、何時代と決まっていません。また、場所も奈良とはしましたが実際の場所ではありません。ザ・フィクション。

参.

登場人物は方言に近い言い回しをしますが、これは無依が独自に各地方の方言や、昔の言い回しを参考に作ったものですので、何地方の方言である、ということはありません。また、時々忘れていますが、作中で“!”や“?”を使わないように心掛けています。よって話の流れが言葉と合っていないと思われた時は大抵疑問文にしてみると解決します。

肆.

こちらは絵に対するものになりますが、八天狗が着ている狩衣は実際の狩衣とはデザインが異なります。また、普通の天狗も伝説で言われていたような格好をしていません。衣装デザインは無依の天狗衣装を参考にした程度のオリジナルです。また、天狗は鼻が高くありません。髪とか目の色もいろいろです。これは絵を描く上で無依の画力の無さによりますのでご了承ください。

伍.

このシリーズは一話完結を目指しています。よってどこから読まれても大丈夫なようになっている…様な違うような。一番分かりやすいのはやはり一話から順に読んでいただくことでしょうか。しかし、時系列が分かりにくいよ!という場合は以下の順になっています。

一支→五生→二刃→夜霧→八嶋→夜鳩→鶯→四葉→三虫→四練→一支(後半部分)→七矢

登場人物紹介+用語集

以下は登場人物紹介+用語説明集になります。(※裏話(=ネタバレ)含みます)

修験道/天狗道:すべての生き物がこの道を通ると天狗に変質し、アヤカシとなる。純粋な天狗は修験道の中で道主に創られる。宮と宮の間に存在し、通って変質した天狗は道主による天狗の本分を刷り込まれる。

道主(どうしゅ):奈良付近の山々を治める山神の一人で、姿は視る者によって異なるが、一様にして闇。八天狗、並びに天狗の支配者であり、創造者。実は八天狗が治める山そのもの。神故に永遠の命があり、孤独。己を分け、八天狗にそれぞれ自分を分け与えている。

宮(みや):道主が治める山々を八つに均等に分けたうちの一つの単位を宮とし、一集団が集い、護る。この集団、山の単位を宮とし、それぞれの集団の中で一番力が強い天狗をまた、宮とする。宮となった天狗は道主と接触でき、山を守護し、隠匿する結界を立ち上げ、不浄なるものが入ってこないよう日々穢れを祓い、清浄な気を山に満たし、配下となる天狗の集団をまとめる責務を担う。宮は力を管理するために道主に髪を献上する。というのは建前で、宮は道主によって治める山の数字が入った『号/冠名』によって道主と繋がり、髪によって道主の一部を貰い受ける。宮は山で一番強い天狗がなるのが習わし。これは道主を受け入れるだけの力を持つ必要がある為。

八天狗:各八つにわけられた山の宮の総称。宮八匹のこと。そして道主の一部を持ち、山を一つ任された、最強の天狗八匹のこと。格好が鮮やかであり、髪が短いのが特徴。

烏天狗(からすてんぐ):七宮が統括する。鳥が修験道を通った際に生まれる天狗。天狗の中の天狗ともいえ、最速、最大の漆黒の翼を有する。鳥の性とは正反対に夜にその真価を発揮する、夜の眷族。必ず鳥を模した仮面をつけており、その姿は不気味。攻撃力が最も高く、進んで穢れを負う役目から仮面が生じたとされる。実際は天狗達の剣となれるように、攻撃に特化された種で、天狗全体の守護を担う。その為に穢れを恐れぬように、その姿を他の天狗から嫌われぬように仮面を与えられている。
(というのはもちろん、無依によるオリジナルな設定です!)

木の葉天狗(こっぱ天狗):別名狗賓(ぐひん)。六宮が統括する。犬や狼が修験道を通った際に生まれた天狗。翼を持たない代わりに最速の足を持つ。宮程の力を持つ者は、その足で天駆け、翼とお同じだけの働きをする。犬の性質と鳥の外見が一緒になった彼らは、狗の性質を色濃く残し、上下関係に厳しい。頂点となる宮に絶対的な尊敬と信頼を寄せる。力こそ全てで、それが互いの関係性を決定づける。
(というのももちろん、無依のオリジナル設定です!!)
※本来の木の葉天狗は読みはこのはてんぐ、と言います。犬の特徴を持ちますが、外見は烏天狗に似ていると言われています。

白天狗(しろてんぐ):二宮が統括する。人が修験道を通った後に生まれる天狗。他の天狗とは異なり、人の時の記憶を持つ。通力を持ち、人に紛れて生活することも可能なほど、人に近い。通力を使うことから浄化や、その他の術に心得がある。
(というのも、もちろんオリジナルです!!!ちなみに白天狗というものはta○ticsという漫画の設定を本当にあるものだと思い込んでいた作者がそのまま、さもパクリのように流用しました。本当に当時は白天狗という妖怪がいると思っていたのであって、決してマネしようと思っていたわけではないです。しかし調べると白天狗というのはあるかもしれませんが、あまり有名ではない様で、資料を探すことはできませんでした。なので実在するかよく未だにわかりません)

尼天狗(あまてんぐ):五宮が統括する。狐が修験道を通った後に生まれるとされるが、現実問題、特殊な天狗以外の雌の天狗は五宮に集められる。本性は狐、と言われるほど、誑かし、唆すことが得意な天狗。五宮はいたるところに人里の稲荷と繋がった道を持っており、頻繁に人と交わる事が出来る。これは刷り込みされない天狗を生まないように、五宮に雌も天狗を集め、その母性ともいえる性を抑える為である。
(言わずもがな、オリジナルな設定です。しかし、尼天狗が女版の天狗で、本性が狐だったとか稲荷だったという記述はちらほらあります)

純粋な天狗:修験道の中で命を落とした生き物らの力を集め、道主が時々創りだす純粋な天狗のこと。すなわち他の生き物の生まれ変わりではない天狗のこと。これらの天狗は特殊な天狗(二、五、六、七宮)以外の宮に配属される。三由、三虫、紅葉等がこれに当たる。

一宮(いちのみや)

一番目に道主に宮として授けられた山。別名一番静かで寂しいことから冬宮。
宮の色は紫色。宮の花は「葦」:花言葉は神の信頼。
紫を与えられた事の意味は闇に一番近く共に在れるように。これは初代宮である一支が道主の傍に誰よりも近く誰よりも長くいたことからきている。
宮の狩衣の色は深紫色。単は瑠璃、袴は白練、袖露は白。配下の天狗は紫を基調とする。単は二藍、狩衣は消炭、袴は紫紺。天狗たちの総数は少なく、枯山のように寂しく、静か。それは命が眠り、寒さが過ぎるのを待つ冬そのもの。

初代宮

一支(かずし):雄の天狗。人間で言う70歳位の外見。宮となったのは外見が30歳位の頃。一宮の初代宮であり、同時に最後の宮。一代限りの宮。一宮の宮であり続けた。道主が創った初めての天狗で、道主と山の気を混ぜて創られた。故に刷り込みが十分ではない。しかし、道主を想い、道主を一番にずっと隣で支える為だけに生きてきた。それは天狗の本分に逆らい、山から生気と活気を奪い、己の寿命を故意に伸ばした。最高齢の天狗でもある。そして最後に死ねない道主のために『死』を捧げる為に一宮と共に死ぬ。よって一宮は一番に道主が滅びた山でもある。茶色い髪に黒い目。後に白髪になり、壮年の格好になった。

二宮(にのみや)

二番目に道主に授けられた山。人間が修験道を通ったことで変質する白天狗が集う宮。人の住処に二番目に近いとされる。人の住処に近いが、人とは親しい間柄の天狗も多くおり、半数ほどの天狗は人に化けて生活している。僧になっている者が多く、通力を用い、人間の法術なども扱える者が多いという。
宮の色は白色。宮の花は「蓮」:花言葉は雄弁。
白を与えられた事の意味は、天の太陽の如く、昼日中でも明るく世を照らし、世を知ることに長けるように。これは初代宮である二菜が七夜のために罪を許す日輪の光となると言ったことからきている。
宮の狩衣は白色。単は薄色、袴は代赭、袖露は白。配下の天狗は単は銀鼠、狩衣は消炭、袴は青鈍。
人に近い場所にある宮にも関わらず、元が人ゆえ人への穢れに強く、人の世を知り、数多くの天狗がいる。

初代宮

二菜(にな):雄の天狗。道主が二番目に人間の子を攫い、山の気と混ぜて創られた。人間の性を濃く残し、好奇心旺盛で学習意欲が強い天狗。ゆえに天狗が用いる術と呼ばれるものの根幹を形作ったのはこの天狗である。山の外を求め、一時的に山を出たこともある。また、その好奇心旺盛故に他の生物にも興味を持ち、初めて天狗同士で子を成した天狗でもある。黒髪黒目。外見は人間によく似る。

前宮

二慈(にじ):雄の年老いた天狗。外見年齢80歳位。よく笑い、常に明るかった老いた天狗。しかし他者の内面を伺うことに長け、よく緋雨の面倒を見た。その行いは緋雨に真綿の呪縛と言われるほどに、優しく、温かで穏やかであった。すべてを悟った上で、二刃に宮を譲って逝った。白髪、歳老いた故に、灰色の濁った目

現宮

二刃(ふたば):若い雄の天狗。外見年齢25~30歳位。人間の時の名は藤沢衛門之介(ふじさわのえもんのすけ)。天狗としての真名は緋雨(ひさめ)。優しく、穏やかな物腰で、常に微笑みを絶やさない。人間時代の己の生き様を深く反省しており、一生かけてその罪を償うつもりでいる。人間のときに偶然であった八宮の宮、八耶と前二宮の二慈にかなり影響を受けた。歴代の天狗の中で最も穏やかと言われる。黒に近い灰色の髪に、鳶色の目。

三宮(さんのみや)

三番目に道主に授けられた山。別名一番穏やかなことから春宮。春の訪れが一番早く、春が一番美しく常に穏やかな山。人の住処に一番近い宮。
宮の色は若草色。宮の花は「梅」:花言葉は独立、忠義。
若草色を与えられた事の意味は、一番に春の訪れ招き、三宮を中心に命を芽吹かせて、緑で豊かにするように。これは初代宮である三伽が春の似合う、穏やかな天狗であったことからきている。
宮の単は狩衣は若草色。単は菜の花色、袴は伽羅、袖露は緑色。配下の天狗は緑を基調とする。単は若竹色、狩衣は消炭色、袴は緑色。春が活気づく、春が一番美しいのもあるが、春の訪れが一番早い宮として有名。他の山と違い穏やかな日が降り注ぐ場所が多く、春を一番感じられる山でもある。故に人に山裾を一早く開拓された。

初代宮

三伽(みつか):若い雄の天狗。道主が三番目に人の子とは草の芽や花を混ぜて木々に近づいた天狗を創った。穏やかで木々と戯れるのを好み、一番木々のことを理解したと言われている。黒髪に緑っぽい黒い目。

前宮

三由(みよし):若い雄の天狗。外見年齢25~30歳位。真名を芽吹(めぶき)。人に一番近い位置にあったため、宮の天狗が穢れ、それを祓うために力を使い果たして消滅。少し天然なところがある天狗で、天狗の有様をその力故か、疑問視していたことが伺える。しかし、最後まで道主に忠実に、後のことを憂いながら逝った。人の世の乱れによって修験道に溜まった力を放出させるために道主に作られた。その為、その力は強大。力を抑えるために特殊な飾り紐を用いるほど。歴代の宮の中では最強と言われる。姿は白髪に一部だけ黒髪。目は右が金色、左が黒色。

現宮

三虫(みつむし):真名は花枝(はなえ)。外見年齢10歳程度。宮となった年は実年齢で48歳。姿は幼く幼女の様。三由が次代の宮と定め、幼少の頃より鍛えられて育つ。三由の願いと想いに応えて重責を担う。力はまだまだ弱いため他の八天狗の守護を得る。しかし、人に近い山故に、最後の宮になるだろうと三由に言われる。黒髪に黒っぽい茶色い目。

四宮(しのみや)

四番目に授けられた山。別名一番活発なことから夏宮。夏宮の所以たる、夏が一番力強く、山に命芽吹くとして有名。人に住処に三番目に近い宮。
宮の色は山吹色。宮の花は「福寿草」:花言葉は回想。
山吹色を与えられた事としては明るく活発な夏の様な山を創れるように。これは初代宮である四嬉が誰よりも活発で底抜けに明るく、皆を和ませ救っていたことからきている。
宮の狩衣は山吹色、鶸色、袴は紅樺、袖露は柳茶色。配下の天狗は黄色を基調とする。単は桑染色、狩衣は消炭色、袴は煤竹色。夏が一番長い宮でもあり、夏の風物詩と有名な蝉や蛍なども数多く美しい。

初代宮

四嬉(しき):若い雄の天狗。道主が四番目に夏の日差しと熱い夜を混ぜて創った。故に夏の情熱と活気をそのまま表したような天狗に育ち、いつまでも若々しく、元気であったという。黒い髪に明るい茶色い目。

現宮

四練(しれん):若い雄の天狗。外見年齢20代前半。以前の宮としての名前は四紋(しもん)。真名は蛍火(けいか)。自由奔放、遊びたい盛りの若い雄の天狗。これからが何もかも伸び盛り。宮としての自覚を持たなかったが、自分が引き起こした事件を元に名と心を改めた。姿は山吹色の狩衣に朱色の袴。暗い茶色の髪に赤い目。

その他

小太郎(こたろう):人間の子供。10歳。元から口が効けず、死に掛けであり、人間たちから気味悪がられ、山に捨てられた貴族の子供。四紋と打ち解け、日々山の精気を吸って元気になるものの、山を穢す存在であるため、四紋に殺された。

五宮(いつみや)

五番目に授けられた山。尼が修験道を通って変質し、本性は狐とされる尼天狗の集団。よって雌の天狗しかいない。情に厚い。女しかいないが、女の性を持て余すことも多く、その時代を治める宮によって、その発散方法がかなり異なる。しかし決して他の宮の雄とはいつの時代も交わらない。最後には各地の稲荷から人里に降り、人と交じったと言われている。
宮の色は藍色。宮の花は「白ユリ」:花言葉は甘美。
藍色を与えられた事としては、夕闇を引き連れ、穏やかな夜を願うことが出来るように。これは初代宮である五女が七夜のために夕闇を引き連れて、罪を一緒に担うと言ったことからきている。
宮の狩衣は藍色。単は勿忘草、袴は白緑、袖露は鉛色。配下の天狗は紺色を基調とする。単は千草、狩衣は消炭色、袴は錆御納戸。

初代宮

五女(いつめ):若い雌の天狗。道主が人間の幼女と雌の狐を混ぜて創った。たいそうな美人に育ったが、教育したのが四嬉だったために男勝りに育った。しかし二菜と共に山の外に興味を抱いており、一時山を離れた。その結果二菜と共に子供、九威を儲ける。美しい黒髪に黒目。

前宮

五花(いつか):雌の天狗。絢女が出会った時は外見年齢30歳位だが死んだ時は50代後半位の外見だった。真名は甘藍(かんらん)。美しいものを好み、美しさこそ尼天狗の力と考えた。美しい配下を傍に置き、醜くなり気に入らなくなった瞬間に捨てるというなんとも傲慢な天狗でもあった。配下の天狗に不満を持たれ、恨まれていたが、あまりの美しさゆえに誰も逆らうことができず、最終的には皆納得してしまう、そんな強さがあった。故に誰よりも美しさ対しては貪欲で、美しくなければ意味がないと思うほどその性格は苛烈。己が年老い、絢女が美しくなったことを妬んでいた。小豆色の髪と青い目。

現宮

五生(いつき):若い雌の天狗。外見年齢25歳位。真名は甘藍(かんらん)。通り名は絢女(あやめ)。美しさこそ全てとする五花に反感を覚えながらも美しい五花の為に全てを捧げていた。己の全てである五花を越える時を待ち望むが、そう思える時を己の中で迎えることが出来ないまま、五花を失う。五花が全てなほどに愛していたが同時に憎んでもおり、己が宮となった時に五花の真名を受け継ぐ。そして五花とは異なった方法で美しくあろうとする道を探す。赤紫色の髪に黒い目。

その他

夜花(よばな):若い雌の天狗で、五生の側近。五生が宮を捨て、人里に居を移した際に、五宮を引き継いだ。五生の有様を疑問視していたが、どこか納得もしていた風。
雪羅(せつら):雌の天狗で、五宮が稲荷と化してから二代目の五宮を務める。しかし七矢に五宮が滅んだと言われるなど、宮としての自覚が足りず、責任から逃れた。ゆえに五宮が彼女の代で滅んだといえる。

六宮(むつみや)

六番目に授けられた山。犬や狼が修験道を通って変質したとされる木っ葉天狗の集団。血気盛んな天狗が多い。しかし狗の習性を色濃く残しており、宮には絶対的に従うが、力こそ全てであり、その位づけは力によるものである。すなわち力が勝るものでなければ宮の側近として認められることはないなど、独特のしきたりが存在する。
宮の色は青色。宮の花は「蛍袋」:花言葉は感謝の気持ち。
青色を与えられた事としては、木々を生い茂らせ、山を育み、そしてすべてを洗い流す雨となれるように。青は雨の象徴、樹を育てる恵みの雨とされる。これは初代宮である六実が山や道主を理解しようと努力した功績を買われ、巨木を任されたことからきている。
宮の狩衣は青、単は青磁、袴は半、袖露は花浅葱。配下の天狗は青を基調する。単は舛花、狩衣は消炭、袴は藍鼠。初代宮の功績から、道主が治める山々で唯一の樹精が宿るほどの巨木の管理を任されている。故に六宮はこの巨木と運命を共にすることになっている。代々の宮は巨木の精を護り、その成長をサポートすることで他の山にはない恩恵を受けている。

初代宮

六実(むつみ):幼い童のような雄の天狗。道主が六番目に、山の気を十分に受け持つ天狗の中の天狗を作ろうとし、狗を元に創った。狗故に木の下を守るのに最適であり、狼と十分に力を持つ樹を混ぜて創られた。ずっと幼い成りだったが、それは道主が樹の成長速度を考えなかった為。道主は木の葉天狗と呼び、可愛がった。優しく上の者に敬意を払う天狗に育ち、誰よりも、土や樹、風など当たり前にあるものに対して詳しい天狗となった。道主が己を分ける際に、今までの努力を認め、姿を成長させてやり、立派な若い雄の天狗となった。緑がかった黒髪に黒い目。

現宮

六仁(むつひと):若い雄の天狗。外見年齢30歳前半程度。真名は葵(あおい)。鋭い目と精悍な顔を持つ若い雄の天狗。木葉天狗をまとめるが、形式上の忠誠を好まず、側近を二匹のみとしている。山を守ると同時に六宮にのみある巨木を守護する任につく。冷たいようで、物事を良く見ており、本来は優しいと同時に熱い男。四葉が怖がるという理由だけで七矢の仮面をわざと外させたり、四葉には愛情を注いでいる様子。道主を主と定めてはいるが、行きすぎた有様を疑問視している面もある。苔色の髪に赤い目。

現宮側近

四葉(よつば):六仁が認めた側近の一。姿は幼く、ほんの子供。外見年齢14歳。雛のような外見に似合わず強大な力を有する巨木の樹精(じゅせい)。己を天狗と勘違いしていたため、力を制御できず、飾り紐によって力を封じられていた。六仁によってその身は保護され、蓬以外の天狗にはその身を晒さないように住処から出ることを禁じられていた。真実を知っても天狗として六仁の傍にいることを望む。若草色の髪に金色の目。ちなみに四葉は二代目の樹精の生まれ変わり。初代が道主と共に山をつくり、共に六宮と過ごした。

蓬(よもぎ):六仁が認めた側近の一。外見年齢30歳前半程度。六仁の幼馴染でもある若い雄の天狗。穏やかな物腰に中性的な外見。六仁の考えを理解し、傍で支える。四葉の養育係兼、六仁の監視係。六宮は蓬によって管理されているといっても過言ではない。蓬色の長髪に垂れ目

七宮(ななみや)

七番目に授けられた山。鳥類が修験道を通って変質した戦闘能力と飛行能力に長けた烏天狗の集まり。集団規模は小さいが団結している。鳥の仮面を絶えずつけているので他の天狗から気味悪がられている。一様に烏天狗は暗色の髪を持ち、漆黒の翼を生やす。その翼は他の天狗より大きく、より速く、より長く飛行する事が出来る。
宮の色は紅色。宮の花は「桔梗」:花言葉は従順、変わらぬ愛。
紅色を与えられた事としては、穢れを恐れず、我らを護る剣であれるように、紅は穢れを身に纏う、戦場の先駆者とされている。これは初代宮である七夜が己を顧みず、誰もやろうとしなかった罪を一身に背負ったことからきている。
宮の狩衣は紅、単はこげ茶、袴は縹袖露は鴇羽。配下の天狗は黒を基調とする。単は消炭、狩衣は墨染、袴は黒。他の宮の配下と違って烏天狗の名に相応しく真っ黒な姿をしている。

初代宮

七夜(ななや):若い雄の天狗。七番目に道主に夜の山を守護させる天狗を創る目的で、烏と梟と山の夜の気を混ぜて創られた。おかげで夜のうちでは最強を誇り、夜の道主を護り一支の次に道主と触れ合うことの多い天狗であった。そのため、夜の山の守護は七夜に任されていた。後に八重との間に十和を設ける。冷静にこれからの天狗の有様を考えていた節があり、一支に相談しつつも、釘を指すことを忘れなかった。しかし、見極めた結果、良くならないと判断したために、己の子供と孫をその手で殺す事になった。己の有様が道主を支える為の結果とはいえ、子を殺した事から自らの命を絶とうとする。漆黒の髪と目。

現宮
七矢(ななや):若い雄の天狗。外見年齢は16歳位。真名は真名は夜霧(よぎり)。通り名は黒雛(くろひな)。天狗になる前は白い烏で、迫害されていた。とても恥ずかしがり屋で仮面が手放せないほどだったが、鶯と触れあううちに他の天狗とも触れ合うようになった。鶯に深い愛情を抱いており、鶯なしでは生活できないと思うほどだった。それを道主に見抜かれ、天狗の本分に悖るとされて、宮になる事を強要される。故に24歳というあり得ないほどの若い宮として就任した。鶯のこともあって、宮となってしばらくは配下が付いてこないなど、苦労する。しかし、とても才能のある天狗で、10歳の頃にはその当時の宮より強かったというほど。舞による攻撃が得意。力が強すぎる故に、宮になる前から道主の存在を感知出来、宮となってからは唯一道主が具現化するほど。時を経るにつれ、己に封じられている道主の仕組みを理解し、過去をさかのぼる等、一天狗とは思えぬ強大さを持つ。ちなみにその力の強さと、七矢という名から初代宮を思い起こさせ、道主は七矢を特別視している。現在は八天狗中最強。宮であるが故に鶯を殺したことから、宮を辞めたがっている節がある。髪は漆黒に近い濃紺。目は普段は黒だが戦闘時は金色。

配下

夜鳩(よばと):七宮に属する若い雄の烏天狗。外見年齢30歳位。人間の女と恋に落ち、修験道に落とされるが、夫婦となり復活している。あまり七宮内の位は高くない。琴と修験道に落とされたのは、己の恋が叶わなかった七矢なりの優しさ。時を経るにつれ、七矢の側近に召し上げられる。姿は藍色の髪と目。

琴羽(ことは):元人間の雌の白天狗。人間の頃、両親のために上からの命令で七宮に入り込んだ腕の立つ外法師。夜鳩と恋に落ち、修験道に落とされる。夜鳩と共に白天狗となり夫婦として七宮に属す。人間の時の名前は琴(きん)。

その他

鶯(うぐいす):若い雌の天狗。外見年齢は16歳位。元七宮の烏天狗で、追放者。真名は七夜(ななや)。通り名が鶯。天狗となる前は脚を三本持つ八咫烏(金烏)。七矢と同等の力を持っており、かつて宮の座を争ったと表向きはされる。実際七矢とは同等の力を持ち、道主の存在を知覚するなど、すさまじいものだった。剣が得意で七矢と同時に側近に召し上げられた。七矢の事を誰よりも理解し、深い愛情を抱いている。七矢とは空気とも言えるほど互いが互いを必要不可欠な存在としていた。天狗に悖る行為を行ったが、鶯は求められた側として、追放の罰を受ける。それは七矢なりの鶯の身を護る唯一の手段だったが、それを分かって尚、七矢を自由にしようと七宮に戦をしかけ、敗戦する。最後には七矢に殺害された。髪は鶯色。目は普段は鳶色だが戦闘時は赤色。

七矢(ななや):幼い烏天狗の雛。外見年齢は6歳位。七矢と鶯が別れる前に一時交わった際に生まれた二匹の正真正銘の雛。鶯により二宮の外れで匿われ、外界と隔絶されて育つ。両親の強大な力をそのまま受け継いだので、幼いながらに天狗としての才能は高い。鶯に母である自分の次に見知らぬ天狗に出会ったら、それが父だと教わり七矢と名を授かる。天狗を知らぬゆえに天狗とはどうあるべきか、最後まで悩むが、全てを見て父の願い通り、己で最後に決断を下す。

八宮(はちみや)

最後に授けられた山。別名一番かなしいことから秋宮。人の住処に三番目に近いとされる。
宮の色は橙色。宮の花は「紅葉」:花言葉は大切な想い出、秘蔵の宝。
橙色を与えられた事としては、明るき夜明けの光であれるように。これは初代宮である八重が七夜のために黎明の光として闇を終わらせ、罪を許すと言ったことからきている。
宮の狩衣は橙、単は退紅、袴は玉子、袖露は紅鳶。配下の天狗は橙色を基調とする。単は遠州茶、狩衣は消炭、袴は雀茶色。悲しいほどに秋の景色が美しい宮として有名。夏の終わり、冬の訪れを待つ一時を切り取ったかのような宮。紅葉はもちろん、すべての生き物が冬のために準備を行うからか、静かに眺めていると妙に寂しさを覚える。

初代宮

八重(やえ):八番目に道主によって創られた若い雌の天狗。特に意図せず、黄昏の山に相応しい秋の山々に似合う天狗を創ろうとして、雌の天狗が生まれた。優しく、美しく、可憐な天狗に育つ。後に七夜との間に十和を設けるが、先を違えた故に七夜によって殺害される。七夜が死のうとしたところを止め、彼の支えになる事を誓う。黒髪に黒目。

前宮

八耶(やや):若い雄の天狗。外見年齢は27歳位。真名は朽葉(くちは)。心優しく、決して命を見捨てるような真似が出来ない天狗だった。子供っぽい所を持ち合わせ、配下の天狗も己の子供のように扱い、周囲に好まれていた。天狗には珍しく明るい髪や白い翼を持っていた。八宮の周囲に渦巻くひどい穢れを身の内に封じ、徐々に浄化を行っていたが、戦を人間が始めたために力が足りなくなる。その結果、穢れに飲まれ狂った状態に陥る。翼を失い、最後には身体も朽ち果て、八宮の為にその身を犠牲にする。宮としての重責や己の力の無さを悔いており、紅葉をその道に歩ませたくないと最後まで紅葉と八宮を案じていた。姿は黄金色の髪に青い目。歴代八天狗中、雄では一番の美形。

現宮

八嶋(やしま):若い雌の天狗。外見年齢は18歳位。真名は紅葉(もみじ)。天狗の有様を少しも疑わず、八耶を慕って過ごしていたが、八耶の豹変ぶりにとまどう。最後に八耶に八宮を托され、その願いを忠実に果たそうとする。そのために八耶に願われ、彼の心臓を喰らうという禁忌を犯したが、その罪の意識に苛まれている。八耶の最後と同時に真意を知る唯一の天狗。口が現在は達者になっているが、それは宮であろうとする責任感がそうさせている。姿は黒髪黒目。

その他

九威(くい):初代宮二菜と五女の間に設けた雄の天狗。二菜の自由奔放、好奇心旺盛さを引き継ぎ、山の外に興味を抱き、出て行く。そこで天狗とは何かを知ってしまい、道主と共に在れない事を悟った。山を出て行く覚悟を道主に受け入れてもらえず、子と妻を隠された事から狂っていき、最後には七夜に殺害される。
十和(とわ):初代宮七夜と八重の間に設けた雌の天狗。優しい穏やかな天狗に育つが、九威と共に外の世界を知ってしまう。九威との間に子を二匹儲けるが、錯乱した九威と子供共々七夜に殺される。

*最後に*

このお話は、私が天狗にかなり勝手なときめきを覚えたことから始まっています。物語を始めた頃はろくに天狗の資料を集めることもなく、好き勝手な知識で書き始め、現実の天狗の伝説とはかけ離れたものになっております。なので、この話を天狗だと思わないでください。天狗に似た何かです。ここ重要です。それでも最後までお付き合い頂いてありがとうございました。私の中では珍しく七矢が最後まで主人公で在り続けました。そして未来に続くような終わり方が描けて大変うれしく思います。

お読みいただき、ありがとうございました。