TINCTORA 012

041

 キラを奪われ、その時に負傷した異端審問官は復活していない。多くの異端審問官がまだ動けない。殺されたの者がいなかったのはせめてもの幸い、といったところか。戦力不足は否めない。
 しかも向こうはこちらが使わない魔法使いが大勢いるらしい。魔法使いでなくともティフェレトやゲヴラーなど人外の戦闘力を持っているのだ。作戦を練り直さねばならないことは誰にだって分かった。
 この事態に異端審問官の長、クァイツは魔法使いの投入を決定した。異端審問に魔法使いがいなかったわけではないらしい。ただ、魔法というのが主の教えに背きやすい技であることと異教の教えが元となっている場合が多いので異端審問でも裏の裏の任務でしか使わなかったそうだ。
 魔法は便利だが魔法使いは主の教えを信じてはいない場合が多いからだろう。しかしその魔法使いを投入するのだからクァイツは今度こそ、ティンクトラを滅ぼすのだろう。
 クァイツはこの国にティンクトラがいると確信している。何故か知らないがそれでこの国に潜入するためにクァイツ自身は貴族から離れられない。貴族自身は魔法使いを必ず飼っているのでクァイツ自身がティンクトラに襲われることはまずないだろう。
 それにクァイツは経験豊富だ。心配する事はない。問題はナック自身だ。
 ナックは異端審問の潜入部隊のうち、ケゼルチェック潜入部隊のリーダーに任命されてしまった。経験もなくまだ異端審問に入ってから日が浅いのにナックに負かされたのは本当に人手不足だからだ。
「ナック、そろそろ着くようよ」
 シスター・ダリアがナックに笑いかけた。経験不足のナックを補うように同じ隊に配属されたのがジュリアの次に女の異端審問では強いと噂されているシスター・ダリア、ダリア・フィアンマだ。
 その他に魔法使い、ネグロ・ランセンと戦闘員のドゥマン・クレールとヴァン・アルジャンが一応チーム全員だ。
 広大なケゼルチェックにたったの五人は心許無いささやか過ぎるメンバーだがこの前の戦闘で異端審問の大半が戦線を離脱したのだから仕方ない。
「しかし、驚くわね。このエルス帝国って国は」
「何が?」
「南北の差が激しいのよね。まぁ国がこれだけ大きいのだから当たり前の話かな」
 ナックは初めてケゼルチェックに入ったが確かに驚いた。暖かいということはこんなにも豊かになれるものなのか。
 極寒のクルセスは村も何もかも閉鎖的だったがケゼルチェックはとても開放的だ。それに伴い、街全体が活気付いている。
 耕された田畑。家の作りもまったく違う。驚いた事にケゼルチェックでは雪が降らないそうだ。
「普通はね、ここらへんの国々は戦争をして国土を広げているわけだから占領した土地が貧しいのよね。でもこの国は違う。調べたらこのケゼルチェックだってもとは小さくてもとのセルビーユ皇国を占領したのよね。でも人々は明るくて不満が無さそうでこんなにも豊か」
 感心するようにダリアが微笑む。
「そりゃそうです、ダリア。エルスでは帝都以外は完全に公爵が治めていますから、公爵次第で豊かにも貧しくもなりますよ。エルスで豊かなのはケゼルチェックと言われていますがそれは最近で、数年前はここも貧しかったと聞いていますよ」
 ネグロが笑った。彼は魔法使いでも信頼できる主を敬うキリスト教徒だ。恐らくナックが困らないよう、クァイツが手配してくれたのだろう。
「え、じゃぁ今のケゼルチェック卿がここまで豊かにしたの?」
「そうです。僕が調べた限りではそのようですね。この十年足らずでケゼルチェックはずべてにおいて他の公爵に勝る活躍をしたと聞いています。これはナック君にも伝えようと思っていたことですが、今から約十年前、前ケゼルチェック卿は亡くなられています」
 話によると、前ケゼルチェック卿がこの土地を治めていた時代、ここは今ほど栄えていなかったそうだ。面積も今ほど広くなかったという。その頃貴族社会で敗退し、家の存続が不可能になるほどケゼルチェックは陥れられたのだという。
 その頃前ケゼルチェック卿が亡くなった。自殺といわれている。
 唯一生き残ったのが公爵の息子で今回調べる予定のケテルさまが現ケゼルチェック卿というわけだ。
 彼は爵位を継いですぐにどこからか無名の貴族カトルアール・メ・ホドクラー侯爵を後見人に選んだ。
 後に彼は病を患い、再び貴族社会から姿を消している。もうすぐ成人だが病は治っていないと聞いている。
 恐らく、言いにくいが父親の自殺が原因となっている心の病、と噂されている。
 その幼き公爵を利用してか、信頼してか、ケゼルチェックの支配はほぼホドクラー侯爵が行っているのが現状である。
 しかしこのホドクラー侯爵、すごい人物なのだ。ケゼルチェックの財政を持ち直し、積極的に外国の商人、職人を呼んで経済を活発化、それに加え新たな農地を開墾させ、農業の改革を行い、成功。
 そして軍備を高め、自身の軍から帝國軍の将軍を出し、先の戦争ではその将軍と鮮やかな戦法を用いて戦争を早期に終結させた傑物だ。
 ここまでパーフェクトな人間がいるだろうかというほどの。
「そのホドクラーだっけ? 怪しいところはないの?」
「まったく」
 市民にも人気高く、貴族らしくないといえばらしくないすばらしい貴族だった。しかし主であるケテルを敬っているらしく、おかげで陰に隠れがちな幼い公爵は天使のように称えられているらしい。一体どうなっているのか。
 ナックは思わずクルセスと比べてしまった。ナックがクルセス卿を尊敬して愛していたかというと全然そんなことはない。むしろ何をしているかわからなくて忘れかけた存在だったように思う。
 しかしケゼルチェックではそうではない。誰もが公爵と侯爵を敬い、愛し、誇りに思っているようだった。
「なんか真っ先にティンクトラから縁遠そうな人たちっすねー」
 ドゥマンが苦笑した。名前からすれば一番怪しいが素行は一番清廉潔白だ。ナックも入城する際の侯爵を見ている。
 あれがケゼルチェック卿と勘違いしてしまったが、キラをさらうような真似をする人には見えなかった。
「そんな人たちにどうやって近づけばいいんだ……?」
 ナックは独り言で呟いたが聞こえたのだろう、皆が意見を言ってくれる。そもそも今回どうしてダリアではなく、自分がリーダーなのか。クァイツの意図がそこだけ読めない。

 その指示を出したクァイツはエルス帝国の中でも大きな面積を持つソロモン地方を治めるソロモン卿、カリプソ・デドス・ギブアルベーニ卿に神父として仕えていた。
 彼は本当に貴族の鏡のような人だった。権力の貪欲で、他の貴族の動向にいちいち目を光らせている。クァイツがソロモン卿の元に近づいたのには二つの理由がある。
 一つはこの手の貴族は他の貴族を気にしているため、他の貴族の情報を知っている場合が多い。この男に近づけば、エルス帝国全体が見えてくると思ったのだ。
 もう一つは、この手の男は強欲なのであしらい方を他の異端審問間には任せられない。実際、おそらくソロモン卿はクァイツが異端審問の人間と気付いているに違いない。しかしそれを言わないで神父様と敬うあたりに何か彼の求めている要求を突きつけられている感じがする。
 おそらくこのままの仮面が通用する相手ではあるまい。相手だって権力争いを長年行ってきた貴族だ。そろそろ要求を通してくるだろうが、異端審問に何を望むだろうか。勲章だろうか。それならもっと早くに言うはず。
「……神父様、そろそろ嘘はやめましょう。私達は信頼しあえるのですから」
 そういわれたのはクァイツが予想を立ててからしばらく経った日のことだった。最初とぼけていたがこれでは前に進めないので適当なところで異端審問官であることを告げた。
 しばらく相手の腹を探り合う会話が対づいた後、クァイツはとんでもない要求を突きつけられたと知った。
 ――すなわち、異端審問にホドクラー侯爵をかけろ、ということを。
 事前調査でこの国ではケゼルチェック卿一派とこのソロモン一派が権力争いをしていることを知っていたがまさか、こんなことを望んでいたとは思わなかった。
 怪しきは裁く、それが現在の異端審問の方針であるが罪無き、しかも貴族を罠に嵌めるなど……しかも彼はまだ敵と決まったわけではない。もちろんやんわりと断ったが、今まで様々な貴族と行動を共にし、悪人を裁いてきた。しかし、この国の貴族こそ、悪人に近い。
 この国の貴族は権力争いが他国より激しい。それを抑える皇帝もさぞや苦労していることだろう。
 だが、この国は近々隣国と開戦する。勝てる見込みがあるのだろう、だからこそ戦争するのだ。
 そう考えると皇帝も強欲に違いは無い。この国の上に起つ者は強欲で利己的な人間しかいない。
 ナックが異端審問に来た経緯も皇帝の残虐極まりない行いによるものだった。
「この国は何かおかしい」
 呟きを聞き逃さないジュリアが笑った。
「どぉしたの? そんなこといって。貴方らしくないわよ」
「ほかの国でも貴族を見てきた。しかし、この国の貴族はここまで強欲で……」
「あら、不思議がることじゃないわ。……国が滅びかけているのよ」
「何だと? この裕福な国が、滅ぶ!?」
「そうよ。すぐじゃない。何年も先の話。戦争をよく起こすのは自国の経済が成り立たないからよ。戦争に勝てなくなったらこの国は皇帝が貴族を抑えてはいられない、貴族の横行が進めば国は成り立たないわ。だから滅びるしかない。この国だけじゃないのよ、ここらの国々すべて同じ道をたどることになるはず」
 クァイツは感心してジュリアを見た。頭の回転が速いとは知っていたがここまで聡明とは。
「なーんてね、全部他人の受け売りなんだけどね」
「……本気で感心しかけたのに」
 クァイツががっくりする。それを見て朗らかに笑い、その後表情を変えてジュリアが言った。
「それより、気になるのは賢者だわ」
「賢者?」
 賢者は異端審問でさえその足取りがつかめない不気味な連中だ。魔法使いの頂点に立つ存在だが大抵のものは彼らを認識できないという。
 一番に異端審問の対象になる存在だが残念なことに彼らは存在の痕跡をまったく残さないので、いるかいないかわからないものを相手にしているようなものだったのであきらめていた。
「この国、賢者が貴族に取り入ってる」
「賢者を見たのか?」
「いえ。でも……この公爵のそばに気味悪い人間がいるのよ。このソロモン卿にはいないみたいだけど、ソロモン卿のお仲間のラトロンガ卿にはそんなカンジの人間がいるの。仲間の魔法使いからすると賢者じゃなくても相当の魔法使いだって」
「じゃあ、この国で賢者も何かしようとしているってことのか……。この国には何があるというんだ」
「さぁ……わからない。でもこの国でティンクトラと賢者、少なくともこの二つが何かを起こそうとしているのは事実ね。もともと賢者は貴族に取り入ってとんでもない計画に手を貸したりしているらしいんだけど、だいたいひとつの国に一人しか就いていなかったって噂だった」
「しかし実際この国には賢者が複数いる、と?」
「うん。そうみたい。魔法使いのクードが言うにはこの国には様々な魔法の気配が渦巻いていて、貴族争いの下に必ず魔法があるらしいわ」
「もしかしたら……ティンクトラより先に賢者を相手にしなければならないかもしれない、ということも考えておかねば。しかし……賢者か」
 クァイツは悩んだ。こんなことを言ってはいけないが、魔術の頂点に立つという賢者をどのように捕らえたり、殺せるのだろうか。
 魔法は恐ろしいものだ。普通の魔法使いなら使う魔法も程度が知れているが賢者ともなれば別であろう。そう考えるとできれば相手にしたくないものだ。

 暗闇の中に巨大な円卓が存在する。その円卓に添えられている椅子は以上に背もたれが長く、先が三角形になっているかのように尖っていた。
 円卓の中には暗い闇が底なしに広がっている。逆に円卓の外側も同様だった。
 光は無い。しかしぼんやりとした薄明かりが円卓のみを照らすように儚くいくつか光っている。音も皆無。視界は暗闇のみ。
 こんな場所普通の人間がいたら気が狂ってしまうだろう。そんな中で突然声が響いた。
『一人足りぬようだな』
『欠席とは珍しいことだ』
『この会議も久々となれば、各経過を聞くのも貴重な娯楽と言えように』
『出席の義務は無い。非難めいた言い方は止められよ、明るき漁火(いさりび)』
『非難しているのではないぞ、等しき天秤。心配しているのだ』
『貴方がその様な人間めいたことが出来るとは思いもしませんで。くっくっく』
『失礼ですな、太古の血脈(けつみゃく)。まぁ、否定できませんが』
『ふふふふふ』
『おや、そのお声は妖精の長(おさ)ですな、お久しゅう』
『これは楽しそうですね』
『おや、遅れてやっとのおでましかね、大帝の剣』
『申し訳ない、皆様。お久しゅう、黒煙の影』
『さて、いつものようにいこうかね、諸君』
『賛成』
『賛成』
『賛成』
 複数の声が賛成と重ねる。その賛成コールがぴたりと止んで、凛とした声が響いた。
『天を統べし大帝の剣、着席』
『深淵を治めし妖精の長、着席』
『冷酷なる等しき天秤、着席』
『甘く苦い文明の飴、着席』
『全てを喚びこむ明るき漁火、着席』
『果てなく遠き闇の果て、着席』
『戦から生まれし太古の血脈、着席』
『夜空を彩る群青の君、着席』
『静寂なる深海の雪、着席』
『地を舐め燃ゆる破壊の女神、着席』
『たゆたう黒煙の影、着席』
『石を望みし邪眼の魔王、着席』
『罪を飾る楽園の檻、着席』
 各声が響くと椅子の上に人間がいつの間にか音も無く着席しているのだ。これが賢者の集まりである。
 賢者はお互いの名前を呼び合わない。賢者になった瞬間に存在する二つ名で呼び合う。
 現在賢者は十三人。記録されている中では最多の人数だった。
 その十三人の中で最古の賢者と呼ばれているのが三人。冷酷なる等しき天秤、と呼ばれているビナーとたゆたう黒煙の影、コクマーと罪を飾る楽園の檻と呼ばれているこの三人のみだ。
 そして一番新しく賢者になったのが大帝の剣だ。
 黒煙の影は最も賢者らしく、大帝の剣が一番人間らしい。
 性格から行動から正反対のこの二人はやはり合わないようで珍しく賢者の中に派閥を生じさせている。革新的な大帝の剣に対し、今までの行動を望む賢者は黒煙の影についた。
 しかし、黒煙の影はそんな行動にまったく興味は抱いていない。そこら辺が彼が賢者らしいところだった。またこの派閥に属していない賢者もいる。それが等しき天秤たち4人だ。
『さて、最近の愉快な出来事は何かね? 大帝の剣』
『それを私が話す前に、各エルスにいる公爵についている皆様が私に報告していただけるとありがたい、と考えています』
『報告? その義務はないのでは?』
『いい方が気に食わないのならそう言ったほうがよいですよ』
『これは失礼』
『では、改めて教えてくださいますか? そうでないとあなた方の過去を盗み見しなくてはなりませんからね』
『ちまちまとそんなことを言ってるんじゃないよ、二人とも。さっさと言いな』
『そうです、くだらないですよ』
 賢者の会話には抑揚がない。感情がまったくこもっていないので、普通の人間が聞いたら気味悪いだろう。嫌味をねちねち言い続けるかのような会話だ。
 そして賢者同士は大丈夫だろうが誰が言っているのか分からないのだ。女性か男性かの区別はつくが、中には性別がわからない賢者もいるのでそれも当てにならない。
『では、もめているようなのでな、我から行こうか?』
『それがよかろう、等しき天秤』
『よろしくおねがいします。皆が彼女のように協力的ならよいのですがね』
『あの頼み方では仕方ないのではないか?』
『そうでもなかろう』
『始めてもよいか?』
『かまわないとも、始めたまえ』
『ケゼルチェック卿の様子は変っておらん。相変わらず病弱な身の上だな。ケゼルチェック卿のやるべきことはホドクラー卿が行っている。我の報告は以前と変ってはいない』
『報告しやすくていいな。等しき天秤は。己がついておるバイザー卿はものすごい行動派でな、少し困っておるところだ。しかし、行動自体はいつもと変っておらんように感じた』
『そうですか、彼は戦争でそろそろ動くと思われるのですがね……。わかりました』
 このようにして次々と大帝の剣に向けて各エルス帝国の公爵の行動が報告されていく。
『大帝の剣よ、そなたが何をしようと私は構わない。そなたの好きにするがいい、しかし、この賢者全体を乱すような行動は慎むべきだ。それは黒煙の影、そなたとて同じこと』
 女性のような声が響く。
『これは群青の君。私は強制は致しておりません。皆は私に協力して下さっているのですよ』
『そのことを申しているのではない。皆まで言わせるな』
『わかっておりましても人には好み、というものが存在しまして』
『そうではない。私が言いたいのは私のような中立の存在を無理に巻き込むなということだ。賢者を二分化させることは無意味である。争いたくば好きにして構わない。しかし賢者という存在をこの世から消しては元も子もない。お前たちが争い、互いに潰し合っても賢者という存在は残らなくてはならないのだ』
『何故です?』
『賢者の意味も知らぬとは、愚かしい』
 先ほどの群青の君とは別の声がした。
『本当の意味でそなたは賢者とは言えぬな』
『皆様、お待ちを。大帝の剣は我々が迎えた新たなる賢者。意味など知りますまい。我らは道をはずれし者、賢者になろうとしたのではないのですよ』
『それまた然り、妖精の長』
『知らなくてもよいのではないかね? 時の流れはすべての物事を変えてゆくものだ。それは我ら賢者とて同じこと。むしろ大帝の剣は我ら賢者の改革者とも言えよう者だとも。在りようなど必要としはしない、違うかね?』
 黒煙の影が笑いを含めつつ言った。
『それもまた、然り、黒煙の影』
『群青の君はこう言いたかったのだよ、皆。我々中立派をお主らが争いに巻き込むな、とね。なぜなら我らはお主らの争いこそが快楽の種であるが故』
『なんと賢者らしい言い分だ、楽園の檻』
『それならいたし方ありませぬ。勧誘は以後控えましょう』
『私は最初からしてはいないがね』
『控えよ、黒煙の影。お前は場をかき乱して遊ぶ癖をそろそろ改めよ』
『失礼、破壊の女神』
『ではほかに何か話し合うことはありますかな? なければこの場を閉じましょうぞ。後に話し合いたくば、個人でするがよろしかろう。どうかな?』
『それがよいだろう、文明の飴』
『賛成』
『賛成』
『賛成』
『では次の集まりは月に任せて、また会いましょうぞ』
『それでは』
 黒い空間から人が消えていく。賢者の集まりは唐突に終わった。それはいつものことで彼らは何のために集まっているのか知っているものは賢者の中でも少ないかもしれない。