TINCTORA 015

054

「いつも思うが一番厳しい教師は君だね、ホド」
 コクマーとビナーがケテルがいるであろう部屋を伺いつつ、そう言った。
 コクマーは内心で先程の発言を否定する。否、厳しいのではない。事実を述べているだけ。だが、普通はそんな言い方はしない。ホドは全てを容赦ない言葉の刃として相手に放出する。
「お前はいつも思うが、本当に人らしい感情を持ち合わせているのか? と聞きたくなる」
「ティフェレトが嫌いなわけでもあるまい?」
 ホドは賢者二人の意見を聞いてうっすら笑った。
「ティフェは僕らの元にいたなら、優秀な信頼できる仲間だね。でも、敵としてまわるならやっかいだ。殺すことも、どう対処するかも考える必要がある。敵になったなら、向けていいのは殺意のみ。それが戦うものの最低限の礼儀さ。今のケテルなら殺されかねないし、全てを手放しかねない」
 確かに、と両賢者は頷く。ホドはそれを避ける必要があった。どうしても乱心しているケテルの心を通常の思考に戻すことが。誰もできない。でも、ホドならできる。ホドは相手のことを思いやるという事をしない。そして相手がどう反応するかを正確に見極める。
 例えば先程の事態をコクマーがなんとかするなら少なくともコクマーの生命を一度は覚悟しなくてはならない。でも、ホドならケテルがどういう反応をするかすべてわかっているからこそ、それに見合う発言をし、もとの軌道に戻す事も可能なのだ。
「もし、君の一番大事な存在が、君を裏切ったら君はどうするのだね?」
「決まってるじゃないか。僕の視界にさえ入らなくなるんだよ」
 戦うのでもなく、もう一度分かり合うなんて考えさえも無い。敵同士向き合い、互いの過去に浸ることすらなく、すでにもう処理済、なきものとして扱うと言い切るホドたる人物。機械のようにどこまでも冷酷。そして無情。
 彼が歩んできた道のりがそうさせるのか、それとも彼がそれを自ら培ってきたのか。去り行くホドの後姿が完全に消えたのを見てコクマーは微笑んだ。
「君ならきっと相手を裏切らせるような立場にさえ置いておかないのだろうね。未来を先見したかのような正確な予測能力。天才だよ、まったく」
「だが人間として、寂しい存在だな」
 ビナーは仕事に戻ったであろうホドに同情的な想いを寄せた。天才過ぎるのだ。
「あれの言う事も最もだが、我は納得しかねる。ティフェレトはケテルに確かな愛情と大恩を感じていたはず。離れがたい絆と共に。なぜ、別れた?」
 ビナーは話を変え、コクマーに問う。
「人はホドの言ったように支配する側と支配される側にわかれる。だが、それは己の環境が決めるのではないのだよ、ビナー。自らの意思で決める。いうなれば、支配したい側と、支配されたい側に分かれるのだ。ティフェレトは支配されたがっていた。自らの精神に絶対的な主を置き、その主を中心に世界を構築する事で安心を得た。ケテルが混乱するのも無理はない。ケテルが支配していたのではなく、ティフェレトが支配されたがっていた結果があの日常だったならば」
 コクマーは笑って紫煙を吐き出した。
「互いに無自覚。だが黒煙の影、それが普通の人間だ」
「そう。でもティフェレトは替わってしまった」
「替わった? 変わったのではなく?」
「そうとも。替わったのさ。だから、支配されたいのではなくなったのだよ」
 意味がわからないと言いたげだったビナーの目はコクマーを静かに観察する事でその答えを得た。ビナーは相手の思考を瞬時に理解する。コクマーの言いたい事はコクマーが考えている事なのだから理解できて当然だ。
 人間は思考をそのまま相手に理解できるように言葉に乗せることを得意としていない。だがビナーは本人が望めばなぜその思考に至ったかまでの深層意識にまで理解を及ばせる。
「ティフェレトは替わった、か。問題はケテルの方か。いくらホドに諭されたからとはいえ、あれもまだまだ子供。自分の気持ちに整理がつくだろうか」
 ビナーの心配は幼い頃からケテルを見てきた愛情が伺える。
「違うよ、ビナー。彼は大人だ。自分の父親が死んだ時から彼は子供で居ることを止めてしまったのだから。子供っぽいなどと思わせるのは、彼が年齢に沿うように子供を演じているからだ。見ていてごらん、等しき天秤」
 コクマーの笑いは煙の中に消えていく。
「彼は子供という、隠れ蓑を捨てるよ、きっと」
 そのまま煙に溶けて消えゆくコクマーを睨んで、ビナーも黒い魔法陣を発動させる。
「戦時中であり、手薄な今こそが絶好の機会。皆が殺人人形が動き出したことで巻き込まれ、全てに身を任せるがいい。我はその間に整える準備を済ませておこうぞ」
 ビナーもそう言って魔法陣の中に消えていく。なんだかんだ言ってもビナーも賢者の一人で通常の人間の思考では計れない精神を持っていたのだった。

 マルクトの声はティフェレトの行方を問う。その声は遠く、リュードベリ帝國内にいるケセドにも届いた。無機質な瞳は何も映さない。死んだような瞳になったのはケテルと出会う前。
 ケセドは一人、広大な手の行き届いた庭園を歩く。主人もいないのに、ここが手入れされている理由。
「ここにおいででしたか、姫様」
 ケセドは振り返った。膝を折る男に優雅に微笑んでケセドはにっこり笑った。
「お話をお聞かせください。わたくしを今更必要となさるわけを」
 一人称も私からわたくしに。最上級の礼儀作法を昔叩き込まれ、骨の髄まで染み渡った仕草をさらけ出して。
「あぁ、お変わりないのですね。聖女さま」
 感極まった様子で顔を覆う女にケセドは微笑んだ。
「聖女なんて、わたくしは……違いますよ」
「いえ、お変わりありません。そのお顔、そのお声、そしてその……優しさ。あの時、内乱で自らの身を捧げ、私たち市民を助けてくださった姫様はまさしく聖女とも言えるお方でした」
「姫様が救ってくださったこの国に再び戦火を持ち寄った現国王に成り代わり、姫様が女王となられませ。それこそが我らリュードベリの民意にございます!」
「姫さま! どうか王になってくださいませ。王はどうかしているのです! 姫さまを救い、戦火を遠ざける手助けをしてくれたエルスに牙をむくなど。しかも、エルスにはまだ姫さまがおいでだというのに!!」
 一旦流れだした声は止まることを知らない。ケセドは一人一人の声を真摯に受け止めた。たぶん、死ぬ前の自分なら、精神が崩壊してしまう前の自分だったらそうしただろうから。
 今回ケセドがホドに命じられたのは自分の過去の身分を最大限利用して、もしもの時に備えて、リュードベリで大規模内乱を起こす事。知らないのだ、ここにいる人は。自分が名前だけの存在で、少しばかりの未練も何もこの国に無いことも。
 だというのに。笑うことすらしなかった。自分にはもう感情を向ける相手がいないから。
「どうか! 次の王位を継ぎ、再び我らを導く光となってくださいませ! ブルートローゼ・エセル・キュアシーム・リュードベリさま!! 正統なるリュードベリ王の血を引くお方!! リュードベリ直系、最後のお方!!」
 ホドは全てを見越しているのだろう。ケセドの価値を最大限利用するのだ。その名前と血筋を。ナリアとは昔、愛した人が呼んだ名前。
 ケセドはケテルからもらい、アナマイズはエルスで暮らすための仮の名前。
 ケセドにとって意味を持たない、もうどうでもいいケセドの本当の名前はブルートローゼ。現在のリュードベリ帝國の第一王位を持つ皇女だ。
 だが、ケセドは王位を継ぐことを過去に拒んだ。当時の国もケセドが女王となることを望んでいない。だから友好関係にあるエルスに居たのだ。
「戦争は、悲しいことです。罪無き命がいくつも消える。それはエルスもわたくしたちリュードベリも同じこと。悲しいですね。……皆様が再びわたくしを求めたのも主のご意思。ならば……できる限りのことは致しましょう」
 ホドのひいてはケテルのために彼が手にするカードの一枚になってみせる。
『君が自分自身位に慈悲を向けられるように、今日から君は『慈悲』と、そう名乗るがいい』
 枷を与えてもらって感謝してる。自由なんてどうすればいいかわからないから。支配されて蹂躙されて、その生活に苦はなく、むしろ悦楽を得ていた自分は、自由など求めない。
 でも、死ぬ事を許されなかった。この血筋が名前が身分が自分を殺させなかった。だから戸惑った。
 ケテルはそんな自分に枷を与え、飼われた動物になることを与えたくれた。
 だから、ごしゅじんさまの言いつけをペットは必ず、守ります。

「戻ってくると思っていた、イコサ」
 優雅に微笑む顔に向けられる目は冷静そのもの。いや、感情を映していないというべきか。
「ああ、戻ってきた。博士さまはおれの中の魔法が欲しいんだろ?」
「そうだとも。私が構築した最高傑作だよ」
 自信満々に言うティティスに向かってイコサは鼻で笑った。その反応が気に入らなかったのか、眉をひそめる。
「違うよ、博士さま。賢者の話によると最低の魔法陣らしいね。おれに書かれた魔法を再構築してくれた。おかげで苦しくないよ」
 うっすら笑いながら言い放つとティティスは怒りにその頬を染めた。
「でも、これで完壁だ。博士さま、どいつに魔法を写しても、発動するよ。まぐれじゃなくて、ね」
「イコサ……貴様」
「でも、これはおれの魂と躯に描かれたものだ。おれのものって言える。だからただでは渡さないよ、博士さま」
 イコサは胸に手を置いて、悠然と微笑んだ。美しい顔だけにその仕草だけで人が気絶しそうだ。
「……ふ、いらぬ知恵を身につけたな。言ってみろ。何だ、望みは?」
 余裕を取り戻して努めて冷静にティティスは問うた。
「じゃ、契約しようか、博士さま。これに誓って」
 目の前に出されたのは魔法契約書。これでは、約束をたがえる事はできない。
「貴様!!」
「一つ、この前までみたいに不当な支配は受けない。首輪はしない。おれの意思で動けるようにしないとおれはこの魔法ごと、死ぬ! 二つ、ケゼルチェックの人たちにおれは攻撃しない。させるな」
「ふん、情がうつったとでも? 兵器のくせに、攻撃する相手を選ぶとでも言うのか?」
 ティティスは鼻で笑う。
「ああ、ケテルには可愛がられていたんだろう? その顔の造形で」
 ティティスはイコサのの顎を持ち上げてその薄く紅色の唇をなぞった。嫌悪感を露にもせず、イコサはされるに任せた。目は相変わらず、ティティスを射抜く。
「勘違いしてるよ、博士さま。おれは好きであんたの元に帰ってきたんじゃない。目的を果たしたらケゼルチェックに帰るよ。おれはあの人の兵器なんだから。道具が持ち主から勝手に離れるわけないだろう?」
「貴様! みすみすその力をケゼルセチェックに渡すわけにはいかん!!」
「博士さまがおれとの契約を守ってくれたら、博士さまは好きなだけおれのようなキリングドールを作れるよ。そうしたらすべての手柄は博士さまのものだ。それに博士さまには才能がある。おれの魔法を写したら、おれ以上のキリングドールが作れて、きっとおれなんかいらなくなる。そしたらおれだって使用済みなんだから、ケゼルチェックに戻っても構わないはずだ」
 イコサはにこりと微笑んだ。
「貴様、この一年で思考を持ったか。ふん、ケテルめ。余計な真似を……。もう、仲間を盾にするのは止めたのか?」
「盾だって? おれはそんな真似はしたことはない!」
 思わず、怒鳴ってしまいイコサははっとした。相手の挑発に乗ってはいけない。思うように事を進められなくなる。
 今まで見てきたじゃないか。ホドを、コクマーをビナーを。そこから学ぶんだ。
「そうだったかな? イコサ。貴様は何時だって仲間の陰に隠れ、その力を奪って生き延びたのではないのか?」
「確かに、そうかもしれない。オクタを殺し、ヘキサも、テトラも……彼女だって殺したのは、おれだ」
「認めたな?」
「……博士さまの願いは何? おれを使って叶えたい望みは何?」
 思い切り拳を握り締めて尋ねる。痛みを感じていなければ、感情に任せてこの男を殺してしまう。
「ケゼルチェックの滅亡だよ。どうする? イコサ」
「あなたって人は!!」
 イコサは今度こそ、その顔を睨み付けた。
「いいさ! 用済みになって、おれがケゼルチェックに戻ったならば、本気であなたを殺すことができる!! 心置きなく! 今度こそ、しくじったりはしない!」
 イコサは怒鳴った。ティティスは微笑んでイコサを見つめる。
「そうまでして私を憎み、なぜ、戻ってきた?」
「決まってるじゃないか。分かっているくせに、よくも……!」
 ティティスはにやっと笑った。イコサを言葉の刃で傷つけるために。
「そうか。決心したんだね。もう一度、仲間を殺しに来た、というわけだ」
「っ!!」
 イコサの顔が歪む。それを満足そうに見下したティティスは魔法契約書にサインを記した。
「そんなことでいいなら、結んでやろう。但し、今から再びお前は私のものだからな。何をされても文句は言うな? 縛らない代わりに、お前が自ら私に仕え、全ての命令を聞くのだぞ?」
 イコサは文字が書けない。だから、指を噛み切って血を垂らす。これで契約は結ばれた。
「さぁ、ではお前に深い陵辱を与えるために、今、この場で全裸にでもなってもらうかな?」
「!!」
 イコサの目が見開かれる。
「あなたにそんな趣味はなかったはず! そもそもおれたちをそんな扱いで見ていなかったでしょう?!」
「仲間を盾にしたことはなかったんだろう? 私が一回だけ、お前にも味わわせた……テトラにいつも行わせていた行為をお前も知る必要が在るだろう。唯一の生き残りであるトライアルナンバー。貴様らはいつも私に歯向かってばかりだったな」
 ティティスがにっこり笑う。視線で促され、イコサは襟元に手を寄せた。その手が知らず震える。だが、白濁にまみれた彼女の姿が目に焼きついて、思い出されて、決心した。
 そのまま一気に服を脱ぐ。全裸でティティスの前に立ち、その刺すような視線から目をそむけた。
「やはりな。こうやって可愛がられていたわけだ。ずいぶんマセ餓鬼なんだな、ケテルは」
 まだ日がたっていないせいで残っている情事の痕に触れる指が忌まわしい。
「こうやって愛を囁かれて、自分が人間だったとでも夢見たのか? ただの兵器、ただの人殺しの道具が」
 耳元で囁かれる。思わず目をつぶった。
「人を殺す道具だけじゃなくて、男を惑わす道具の才能もあったのか、お前には」
「っ」
「ここにケテルを受け入れていたのか?」
「ぐあぁあああっっ!!」
 思い切り後穴に指を突き立てられて激しい痛みがイコサを苛む。発火したような熱さの直後に熱い液体の感触。出血したんだ、と理解できた。
「きれい、美しいといわれて、自分がそうだと陶酔したか? 馬鹿だな。私が道具を作るときにそのカタチにこだわらないとでも思うか? お前の美しさは所詮、人工モノだ。私が与えてやったものだろう? 違うか?」
 イコサは黙っていた。みんなも受けたなら、耐えられる。いや、耐えなくてはいけない!
「言ってみろ!」
「いあぁあああ!!」
 血が太腿を垂れ、脚を伝い、床に到達する。
「ふふふ。ずいぶん汚い。そうだ、ケテルに返すことがあったなら、その身に私の証をつけて、返してやろう。眼球を一個抉って、ここでも切り落とすか?」
 そう言って血に染まった指を引き抜く。そして血に濡れた手でイコサの中心に触れた。
 イコサがぞっとして顔を青ざめさせる。そこでティティスは指を鳴らした。すぐさま隣の部屋からティティスの部下である研究員が入ってくる。イコサはその顔ぶれをみてぞっとし、叫び出したいのをなんとか堪えた。
「お前たち、返ってきたぞ、イコサが。今日はお前たちの好きなように調べるといい」
 イコサは笑ってイコサを研究員の方に押しやって部屋を出た。
「いや、来るな。来るな!!」
 イコサは逃げ場が無いと知っていて、後退する。じりじりと追いやられて、その手が身体に触れる。思い出される記憶。その再現をしているかのように脚がつかまれて、無理矢理開かされた。
「やめろ! やめろ!」
 首に痛み。見開かれた瞳で確認する。その薬。知っていた。
「お前たちはまたおれを! 薬漬けにして犯すのか! 飽きるまで、ずっと!!」
 イコサはそのまま何人もの男の手によって押さえつけられた。薬が効けばこの意思でさえ奪われる。もう、いやだ。殺して、帰りたい。ケテル、ケテル、ケテル、ケテル!!
「け、てる……」
(イコサ、大丈夫。守ってあげる)
(お前を守るくらいの力はまだあるっての、馬鹿にすんな)
(ずっと一緒、ね!)
「にげない。……逃げない!」

 栗色の髪は頭の高い部分で結ばれている。侍女にされるに任せて着込んだ衣装はケゼルチェックを示す純白。
「ホドクラーを呼べ」
 一人の侍女がかしこまって後ろに下がっていく。すぐさまホドが笑った顔を見せた。
「本当にいいんだね?」
「ああ。陛下に報告を」
「不安はないかい?」
「ないね。僕には最高の頭脳である、お前と最強の剣であるヴァトリア将軍、最上級の賢者が二人、神の血を引く力が一人、国を支配する妖精と空間制御に長けた小鳥がいるもの。これだけの駒があってなぜ僕が負ける?」
 ホドも頷いて、頭を垂れた。
「ケゼルチェック公爵の地位を正式に受ける。この、ケテル・フォン・イ・クレイスが!」
「では、参りましょうか。クレイス公」
 あと半年ほどで成人となるケテルにとって絶好の機会だ。これを機にホドクラーは後見人でありながら、すべての権利をもともとの所有者であるケテルに返す。
 そう、ティティスとやりあうからには、必ずソロモンをそして北の血とその血を以っての争いに発展する。対等に戦うには、ケテルにも同格の地位が必要。
 だから、決意した。今までホドに全てを任せ、成人までと引き受けなかったケゼルチェックの地位を、公爵という最高の爵位を、そして南方軍の力も、すべてその身に負う。
「もう、決めた。たとえこの国が滅びようが、関係ない」
 戦時中。他国、敵国に付け入られるすきを自ら作るとしても後には引かない。
 大切な存在を奪われたからには。それは一度ならず、二度までも!
「北の血を滅ぼす!!」
 ケテル・フォン・イ・クレイス。エルス帝國の最大勢力南の筆頭である公爵は最年少である17歳半で、貴族の世界に脚を入れ、自分から汚れ、血を流すことを宣言した、その日――。