小説

Pinky Promise

Pinky Promise 006

第1章 月夜の時盗人1.白兎との邂逅 006 フローミア・フェーディアーダは円を描くように並んだ六つの大陸と六つの海、そしてその円の中に存在する一つの大陸とで構成されている。 時計の文字盤のようにちょうど等間隔で並んだ六つの大陸を十二時から...
Pinky Promise

Pinky Promise 005

第1章 月夜の時盗人1.白兎との邂逅 005「――で、こういうことに」「何やっとんだ、馬鹿者」 アリストが一通り事情を説明し終えると、ヴァイスはこれでもかと呆れた眼差しを向けた。「まったく、運が悪いというか、悪運が強いと言うべきか」「知らね...
Pinky Promise

Pinky Promise 004

第1章 月夜の時盗人1.白兎との邂逅 004 誰かの死を願ったわけじゃない。 ただ、取り戻したかっただけ。 失った過去を。戻らない時間を。この手のひらから零れていくすべてのものを。 けれどそのせいで、また誰かが何かを喪って行くと言うのなら―...
Pinky Promise

Pinky Promise 003

第1章 月夜の時盗人1.白兎との邂逅 003 ――午後十一時過ぎだ。 そんな時間にも関わらずインターフォンが鳴ったことに、部屋の住人ヴァイス=ルイツァーリは驚いた。彼にはこんな時間に余程の事情もなしに不躾に訪ねて来るような友人はいない。 い...
Pinky Promise

Pinky Promise 002

第1章 月夜の時盗人1.白兎との邂逅 002 「ねぇ、出ておいでよ。迷子の迷子の仔猫ちゃん? それとも、白兎を追いかけてきたアリスちゃんと言うべきかな?」 ――兎。その人物を真正面から見た時、アリストは咄嗟にそう連想した。 遠い嶺に降り積も...
Pinky Promise

Pinky Promise 001

第1章 月夜の時盗人1.白兎との邂逅 001 夜の帳が降りた頃、人々は夢の時間からようやく目を醒ます。 目の前をふわふわと行き過ぎるしゃぼん玉がぱちんと割れたように、現実へと帰って行った。 誰もが自然と手を打ち鳴らして万雷の拍手を舞台へと送...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 050

第3章 恋と復讐と王子様050.海の異変 青の大陸へ向かう船の運航は穏やかだった。紺碧の海上を滑るように進んでいく。 旅客と貨物の両方を引き受ける貨客船の一種で、大陸間の移動と輸送を手掛ける大手会社の船だ。 魔獣が世界各地で跋扈するこの時代...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 049

第3章 恋と復讐と王子様049.脆き者よ、汝の名は いつかのざわめきが、耳の奥で再生される。 これは夢だ。すぐにわかった。 それでも、もう会えない人々の面影は酷く懐かしい。「しかしよ、ルカニドの奴はもう少しどうにかなんないもんかねぇ」 日が...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 048

第2章 永遠を探す忠誠の騎士048.騎士は跪く「俺のしたことは結局、誰も守れず、救えず……二人の少女を無用に苦しめ殺すことになっただけだった」 エスタ。ゲルトルート。 彼が救えなかった聖女と、彼が殺した魔王。 知られざる罪がここにある。 だ...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 047

第2章 永遠を探す忠誠の騎士047.いつか呪いが解けるまで 合同葬儀のためにどこかいつもより厳粛な雰囲気が漂い人気のない街中、セルセラたち一行は外に机と椅子を置いて食べるタイプの食事処で一休みしていた。 葬儀が完全に終わって人通りが戻り始め...