モグトワールの遺跡

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About

身寄りのない子どもから貴族の子弟まで通う最大の公教育学校セヴンスクール。武闘科長刀武器専攻セダが罰当番をしている最中、突然枯れ草の中に女の子が降ってきた。彼女・光は神話につながる世界の至宝たる存在「宝人(ほうじん)」。幼馴染の楓を助けるため、セダに契約を持ちかける。セダと幼馴染のテラ、ドジっ子魔法少女ヌグファ、火の鳥グッカスは光を守り、その願いを叶えるために動き出す。

主要登場人物紹介 | 更新履歴

第1章 水の大陸(原稿用紙873枚)

第1章の登場人物

0.―プロローグ―

000

1.旅立とう!

【001】1.旅立とう! 001 | 002 | 003 | 004

2.大国鳴動

【002】2.大国鳴動(1) 005 | 006 | 007 | 008 | 009
【003】2.大国鳴動(2) 010 | 011 | 012
【004】2.大国鳴動(3) 013 | 014 | 015

3.火神覚醒

【005】3.火神覚醒(1) 016 | 017 | 018 | 019 | 020
【006】3.火神覚醒(2) 021 | 022 | 023 | 024
【007】3.火神覚醒(3) 025 | 026 | 027 | 028
【008】3.火神覚醒(4) 029 | 030 | 031 | 032
【009】3.火神覚醒(5) 033 | 034 | 035 | 036

4.水の魔神

【010】4.水の魔神(1) 037 | 038 | 039 | 040
【011】4.水の魔神(2) 041 | 042 | 043 | 044 | 045

あとがき

第2章 土の大陸(原稿用紙757枚)

第2章の登場人物

0.―プロローグ―

046

1.男装少女と女装少年

【012】1.男装少女と女装少年(1)  047 | 048 | 049 | 050
【013】1.男装少女と女装少年(2)  051 | 052 | 053
【014】1.男装少女と女装少年(3)  054 | 055 | 056
【015】1.男装少女と女装少年(4)  057 | 058 | 059 | 060
【016】1.男装少女と女装少年(5)  061 | 062 | 063 | 064

2.地竜咆哮

【017】2.地竜咆哮(1)  065 | 066 | 067 | 068 | 069
【018】2.地竜咆哮(2)  070 | 071 | 072 | 073 | 074
【019】2.地竜咆哮(3)  075 | 076 | 077 | 078
【020】2.地竜咆哮(4)  079 | 080

3.土の魔神

【021】3.土の魔神(1)  081 | 082
【022】3.土の魔神(2)  083 | 084 | 085

Other

キャラ紹介イラスト
01/セダ&テラ/ヌグファ&グッカス/リュミイ&光&楓/ジル&ヘリー/イェンリー&ランタン/キュヴィエ&エウロ

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モグトワールの遺跡

モグトワールの遺跡 022

第2章 土の大陸 3.土の魔神(2) 083  会議が終わってアーリアはエイローズの首都の屋敷に戻ろうとしていた。 「アーリア様!」  両親といたはずの、若き王がアーリアに声をかける。アーリアは振り返って、セーンの元まで歩み寄って一礼する。 「陛下、わたくしは貴方の臣下。どうぞ、アーリアと呼び捨てになさってくださいませ」 「あ、えっと。アーリア」  セーンがどもりながら言い直すのがほほえましい。 「なんでございましょう?」 「えっと。俺が正式に王になるまでにもう少しだけあるだろう? その間に二人きりで話がしたい。いろいろ聞いておきたいから、難しいだろうけど一、いや、二日くらい俺のために時間をとってくれないか?」  セーンは大君と認められているが、戴冠式は吉日に行うことになっているため、二週間ほど時間が空いている。アーリアはその間に、当主と大君という上下関係などをはっきりしたいのかも、と考え逡巡する。 「ご命令とあらば喜んで。いつがよろしいでしょう?」 「俺なんかより、アーリアの方が忙しいだろう? そっちが決めて構わない」  アーリアは秘書を呼び寄せ、予定を確認する。そして秘書と短いやり...
モグトワールの遺跡

モグトワールの遺跡 021

第2章 土の大陸 3.土の魔神(1) 081 「このあたしと誘拐まがいの事してまで会いたかったの? 熱烈な歓迎ね」  彼女の髪は燃えるように赤く、そして揺らぐ炎のようにうねり、四方八方を向いている。  でも、それが彼女にはとても自然で似合っていた。はっと振り向かずにはいられない強烈な印象。美人だとは言いにくい造形。だが、目をひかずにはいられない。  それが、この土の大陸の約半分を手に入れた女性――魔女・エイローズ。 「逢瀬なら二人でなさってほしいものです。なんなら今から帰していただいてもよいのですが……」  そう言ったのは鋭い目線を時々見せる少年だ。光輝く金髪とそれと同じくらい輝く琥珀色の瞳。  華奢な印象が強いが、自在に土を操り、宝人をどの団体より多く従える――神子・ヴァン。 「もう、会った次の瞬間からそんな毒舌ばっかりだから、君たち友達いないんだよー?」  睨みつけられている青年は対照的でにこにこしている。顔の造詣が整っていて少々美形、という以外は大して特徴のない青年。  だが、彼こそがこの大陸の覇権を争う一角を担う――希望の星・ルイーゼ。 「大きなお世話です」 「友達ならいればい...
モグトワールの遺跡

モグトワールの遺跡 020

第2章 土の大陸 2.地竜咆哮(4) 070  竜の姿が見た目でも細くなっていることがわかった。どのくらいの時間が経ったかはわからない。セーンが同じメロディを続けつつも、いつも同じに聞こえない。絶望を見た民もセーンを見つめ、希望を胸に宿している。 これが、王の力か。否、これがセーンの秘めた力だ。  ――歌が聞こえる。ただ、それだけでこんなにも力が。生きようという意思が湧く!! 「セーン、歌ってる」  それは、セーンの下に向かうテラの声。ティーニはそのままヴァン家の者として、王家の人間としてテラと別れて動き始めた。テラは一人、馬を駆りながらセーンの下へと戻る。 「ああ、いい歌ですわ」  それはリュミィの声。グッカスも無言で頷く。この二人もまた、三大王家の当主へ伝えた後に、セーンの元へと向かっていた。  そして、セーンへと近寄る影は、味方だけではない。ふらりと現れた一団はまるで幽鬼のようだ。身なりだけは立派な神官にも関わらず、表情が暗く、焦点を結んでいない。 「神官長様」  壮年を迎えた男はこの国の神官長だ。まだ生きているが、退位を表明したアルカン=エイローズ、砂礫大君(セークエ=ジルサー...
モグトワールの遺跡

モグトワールの遺跡 019

第2章 土の大陸 2.地竜咆哮(3) 075 「どうしてこのような事に……」  それは白亜の宮殿と言わんばかりの美しい由緒ある建物。ドゥバドゥールの民なら誰しも知るその建物を神殿と云う。その奥へと続く場所。一般だけではなく、神官も官位が低いと脚を踏み入れることもできないような場所。その場所で数人の高位の神官に囲まれながら初老の男性がうなだれていた。 「神官長」 「ここも危険なれば、お早くの避難を……」  周囲の神官がそう言って神官長を囲む。 「ああ……」  神官長はそう言いながら緩慢な動作で立ち上がった。 「だが、なぜ……」  神官長の悩みはその一点に尽きる。どうして、どうしてだ、と。 「神官長様……」 「おお!」  新たに現れたのは、若い神官だった。 「外は混乱に見舞われております。ここもいつまで無事かわかりませぬゆえ、急いで避難をお済ませくださいませ」 「ああ、わかっている。だが、何故なのか。何故、魔神様はお怒りを露わにされたものか?」  ようやく歩き出しながら神官長はそう言う。隣に追従するように若者が斜め後ろに並んだ。 「やはり、魔神様は生贄の儀式が失敗したからではないかと……」...
モグトワールの遺跡

モグトワールの遺跡 018

第2章 土の大陸 2.地竜咆哮(2) 070  キィが生贄の儀式を受けると決めてから、付人であるファゴはもちろんのこと、カナの付人であるファンランも忙しそうにキィの手足となって働くようになった。カナはファンランに出来る限り手伝うように言った。文君ではない自分が手伝えることなど皆無だからだ。ファゴの話によるとジルドレが自由にしていいと言ったのを最大限利用してキィはかなりの人数の暗君(キョセル)を自在に動かして調べ物をしているらしい。 「で、なんか分かったのか?」 「んー。まだ読めてはこない。今度は書記官(ラウダ)の方面を調べてる」  キィもまだ手掛かりをつかめていないようで不機嫌そうだ。そこにノック音が響いた。 「キィ様」 「ファゴ」  キィが意外そうに瞬きをした。ファゴは確かヴァン家の本家まで使いを出したはず。戻ってくるのが早すぎるのだ。ファゴは答えにくそうにうつむいてからキィに近寄った。 「お前、ずいぶん早かったな」 「その、どうしても早く手渡さねばならぬものがございましたので……」 「ん?」  キィは頼んでいた資料を持ってきてくれたと思ったのだろう。しかし、ファゴの手に荷物はない。...
モグトワールの遺跡

モグトワールの遺跡 017

第2章 土の大陸 2.地竜咆哮(1) 065  一つは魔女と呼ばれた才女、エイローズが率いた国。  一つは希望の星と皆に慕われた、ルイーゼが率いた国。  一つは神子と名高く自在に土を操った、ヴァンが率いた国。  それぞれは互いに争う事をやめ、三国を統一する事で広大な土の大陸のほぼ全土を治める事に成功し、この先の未来を魔神に約束した。土の神国・ドゥバドゥールの誕生である。  しかし、その建国から国がスムーズな流れに乗るまでに歴史では決して語られない壮大かつかなりの苦労があり、紆余曲折を経て、国をスタートさせたのだろう。一つの大国としてそれぞれ機能していた国を一つにまとめることは、計り知れない難しさがあり、何度も三国間で諍いがあったに違いない。  国の初めの主導者となった上記の三人は、国の綱紀を定める際に一つの書物を作りあげた。  ――『ドゥバドゥール大綱集』。  その名の通り、至って造られた目的はシンプルで、国を動かすに際しての約束事を記したものだ。  国を作る、多くの人が国に従い、生活する。国は法を定め、国事を成す。そのための法を創る為の法を記したものといってもいい。そこに憲法とはまた...
モグトワールの遺跡

モグトワールの遺跡 016

第2章 土の大陸 1.男装少女と女装少年(5) 061  ヴァン家の屋敷に周囲には青い色が見えない所がなかった。周囲の人々もヴァン家のミィを見て挨拶をしたり、笑いかけたりしていた。セダもヴァン家に世話になって少しだが、ヴァン家の人を皆が愛していて、共に過ごしていると感じた。  だが、このエイローズ家では赤い色が見えない場所がない。人が違い、場所が違い、主が違うだけで同じ景色が見られている。 「おかえりなさいませ、ご主人様」  アーリアを見てエイローズ家の周囲にある町並みに住む誰もが頭を下げ、笑いかける。 「おかえりなさまいませ」 「こちらはヴァン家のミィ様ですか!? ようこそおいで下さいました」  すぐに気付いたエイローズ家の者が近寄ってくる。馬車を降りるときにセダでさえ、手を差し伸べられたので驚いてしまった。びっくりしていても初老の男性はセダの手を取った。 「ご主人様……」 「こちらのお客人は別件だ。西塔の特別室にご案内差し上げて」 「はい、承知いたしました。では、こちらへおいでください」 「あ、待てよ!」  ルビーだけが執事の男性に別室に案内されそうなのを見て、セダが声を上げる。 ...
モグトワールの遺跡

モグトワールの遺跡 015

第2章 土の大陸 1.男装少女と女装少年(4) 057  物心ついた時には、すでに左の耳に一つ、穴が開いていた。目立つものじゃない。細い糸が一本通るくらいの小さな穴だ。だけど、両親はその穴をあまり他人に見せてはいけないよ、と幼い自分に言い聞かせていた。 「どぉして?」 「これはね、セーンが特別なお家の生まれであることを証明しているのさ。父さんや母さんがお前くらいの歳には同じ場所に穴があったよ」 しかし見せてくれた父の耳に穴は開いていない。 「特別なお家?」 「そうさ。だけど、それはいろんな人に見せて回るようなものじゃない。特別な家に生まれたといってもこの家には父さんと母さんとおじいさんにセーンしかいないだろう? セーンは村のみんなと同じ暮らしをしていて、何も変わららないだろう?」 「うん」 「だから、自分から皆とここが違うのだと言いふらす必要はないのさ。よく考えて御覧、セーン。この穴を誰かお友達に見られてしまって、それ以降セーンと口を利かなくなってしまったら、哀しくないか?」 「やだ! トリ君も、フィーナちゃんも、ルイもみんな友達だよ!」 「そうだろう? でも特別っていうのはな、何も良...
モグトワールの遺跡

モグトワールの遺跡 014

第2章 土の大陸 1.男装少女と女装少年(3) 054  うなだれるミィをなんとか促して一行はキィを取り戻すという作戦の失敗感を抱いてヴァン家の屋敷に戻った。  ミィの様子を一目見て、執事の青年が無言で一行に一礼し、ミィの肩を抱いて奥に引っ込んだ。それに入れ替わるようにして、別の青年が一行の前に現れねぎらってくれた。食事や扱いは今までと同じように賓客の扱いだが、そこに明るいミィの笑顔がない。それだけで太陽が陰ってしまったように一行には一抹の寂しさが募るのだった。  翌日になってミィが一行に今まで見せていた姿とは別の姿で現れた。身体のラインがくっきり出るような詰襟の服は、今までと襟の合わせが逆になっている。美しい花々の刺繍が施された服。それは先日会ったエイローズの当主と比べてそん色ないものだった。  身体のラインが露わになった事で胸のふくらみや女性的なくびれがさすがのセダや光にでもわかる。 「今まで騙していたみたいで、ごめんね」  うっすら泣いた後が薄い化粧の上からでもわかる。 「改めまして、ミィ=ヴァンです。御覧の通り、女なの。光にも嘘をつかせてごめんね」  ミィが力なく微笑むので、光...
モグトワールの遺跡

モグトワールの遺跡 013

第2章 土の大陸 1.男装少女と女装少年(2) 051  土の大陸の神国・ドゥバドゥール。そこの首都である都市は三大王家にちなみ、王宮周辺以外が国の領土のように三大王家それぞれの支配力が強い地域がある特殊な街となっている。  首都は形式上どこの領地でもないのだが、この国の成り立ちからそうなってしまうのだろう。人種的には何の変わりもないのに、ヴァンの民、エイローズの民、ルイーゼの民などと呼び分けられてしまう位で、己が何の民であるかを示すためにわざわざ砂岩に示して耳につける者もいる位だ。  それくらい民は愛国心というよりかは自分の出生した領地の主を、王家を深く愛し、誇りに思っている。それが逆にこのドゥバドゥールの国民性ともいえるだろう。  首都の一角では店や家の軒下にとある色の布がかかっている事が多い。その布の色で、この家は三大王家のどの家を主君と仰いでいるか示しているのである。耳に着ける砂岩と同じようなものだ。エイローズ家の色は臙脂色。ルイーゼ家ならば常盤色。ヴァン家なら瑠璃色の布が下がっているだろう。  それだけ民に好かれるよう、誇りに思われるよう、民を失わないように各王家がそれぞれ民...