モグトワールの遺跡 003
第1章 水の大陸 2.大国鳴動(2) 010 「うわー、これじゃ一歩進むたびにうんざりするな!」 セダはそう言って足首まで浸かってしまう泥だらけの道ですらない場所を踏み分ける。 船で降り立った場所は確かに沼地と呼ぶに相応しい、水気たっぷりの土であった。川がすぐそこで流れていることもあり、足が一歩踏み出すごとに沈む。光に言われてブーツでない靴を履いているものは靴をすでに脱いでいた。 幸い害になるような生き物はいないらしい。生々しい土と水の感触がセダの脚をくすぐるが、その感触は優しい。水がもう少し温かければそこまで苦しい道のりではなかろう。 鍛えられた武闘科なだけあって根を上げるものはいないが、歩きにくい行程は人間には苦しかろう。そういう意味でも隠れ里なのだと思われた。 「で、隠れ里はどの辺だ?」 グッカスが問う。 「うん、ここから遠くないはずだよ」 光はそう言って背の高い草を掻き分ける。それにしても人間が立ち入らないからと言ってこんなに深い林のような草木に囲まれるとは思っていなかった。見たこともないような、しかし姿から葦のような植物に囲まれている。大人をゆうに越す背丈の草木だ...