モグトワールの遺跡 005

第1章 水の大陸

3.火神覚醒(1)

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 人と宝人と動物が全て等しく、全て仲良く暮らしていた時代。人の住む町には宝人と人が半々住み、互いに種族の差など気にせず暮らしていた。
 人はエレメントをありがたがり、宝人を敬い、魔神に感謝の祈りを捧げる聖なる場所を作った。その場所は魔神がその大陸に初めて宝人を遣わし、人に恩恵を与えるようにした場所でもあった。その場所は魔神と唯一繋がれる場所と人に信じられ、その場所には神殿が建ち、魔神の信仰の礎となった。
 やがてその場所に国が生まれ、その国は神殿と共に魔神の祝福を受けた約束された国となった。
 人々はその国を魔人との盟約の国として永久の平和を望んだ。
 地上に遣わされた多くの宝人もそれを願い、魔神はそれを叶えたという。
 一つの大陸にたった一つの盟約の国。その国は神殿と共に人だけではなく宝人の為、その世界のために常に平和を祈り、平等で、幸せな国づくりを目指すと約束した。
 魔神はその想いをサポートする為に、その国を導く王に祝福を授けた。
 すなわち、この世界で唯一人と宝人との架け橋となれるよう、双方の力を持つ『半人』という存在を。
 各エレメントを持つ魔神はそれぞれ盟約の国を創り、その王座に据える人物を独自に選定したが、必ず王座に就いた人間は半人となり、契約したエレメントを宝人と同じように使いこなすことができ、宝人の持つ特殊能力をこれまた使うことができたという。
 半人は己の人間の部分が魔神の祝福すなわち宝人の部分と自身の中で契約を行うことによってエレメントを使うことができるといわれている。すなわち、半人がエレメントを使う際は契約した宝人のようにその顔に鮮やかな契約紋が浮かび上がるのだという。

 ――しかし、人の欲によって一度滅びかけた世界では、古の盟約の国の王は半人であるとされながらもエレメントを使いこなすことなどできず、それは昔の伝説として神殿の最奥にひそかにしまわれてしまった。
 人は半人の王の存在を忘れ、古の盟約の国は名前だけとなる。魔神は人を見放したと宝人は噂をし、もしも半人の、本物の伝説と謳われる王が再び現れたなら、人を少しは信用するようになるのかもしれない。