TINCTORA

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About

BL/R18/FT/猟奇/残酷/宗教/魔術/貴族/革命/長編/連載中】
彼らの思う平和は、ある日突然はぎとられた。ファキ村の少年ナックは、村を軍に爆破され行き場を失う。幼馴染の少女キラと共に軍から逃げる日々へと陥るナックだったが、彼らの苦難は国の背後で蠢く、大いなる計画の一端にしか過ぎなかった。帝国の陰謀とTINCTORAと呼ばれる謎の暗躍者たち、教皇庁の思惑が絡まり、悪の手によって世界は「更新」される――。

登場人物紹介 | 世界設定

Story

0.prologue

000

第1部

1.始まりは混沌と共に (原稿用紙66枚)

001 | 002 | 003
…物語の幕はこうして上がった。

2.赫い現実 (原稿用紙64枚)

004 | 005 | 006
…我が主君のためならば、不可能も可能にしてみせましょう?

3.憎悪渦巻く帝都 (原稿用紙67枚)

007 | 008 | 009
…――同じ国内、同じ事象で一方は嘆き、一方は嗤っていた。

4.夢が現実になる瞬間(とき) (原稿用紙52枚)

010 | 011
…「会いたかったの。ずっと触れたいと思ってた」

5.同じ色の罪 (原稿用紙61枚)

012 | 013 | 014
…語りかけた人物は永遠に答えはしない。

6.堕ちた影 (原稿用紙75枚)

015 | 016 | 017 | 018
…男は声を潜めて、しかしはっきりとナックに敵の名を告げた。

第2部

7.再び動く場所は (原稿用紙79枚)

019 | 020 | 021 | 022
…「うん。じゃ、次の新月の晩にここで。一人で来てね」

8.交錯する想い (原稿用紙87枚)

023 | 024 | 025 | 026
…「神に誓えるかい? 神の使徒として命さえ喜んで神に差し上げられるかい?」

9.集いの裏側 (原稿用紙79枚)

027 | 028 | 029 | 030
…優雅に腰を折ってケテルは信頼の証に王の手のひらに口付ける。

10.ゲヴラーの影 (原稿用紙103枚)

031 | 032 | 033 | 034
…「さぁ、破壊の限りを尽くして、血に染まった宴を始めよう!!」

11.氷結の魔女 (原稿用紙96枚)

035 | 036 | 037 | 038
…だから唐突にわかってしまったのだ。この二人が、影であったと。

12.思惑の始動 (原稿用紙98枚)

039 | 040 | 041 | 042
…静かなケテルの声がこの空間全てに響き渡った。

第3部

13.戦争への鏑矢 (原稿用紙85枚)

043 | 044 | 045 | 046
…――そう、ホドは天才なんだ。だから僕の助けは必要ない。

14.本当の名前 (原稿用紙100枚)

047 | 048 | 049 | 050
…ねぇ、わたしたち、人を殺した。ううん、人を殺すためだけに生まれてきたの。でも…

15.覚醒するもの (原稿用紙105枚)

051 | 052 | 053 | 054
…「もう、決めた。たとえこの国が滅びようが、関係ない」

16.春眠 (原稿用紙78枚)

055 | 056 | 057
…私、人間なんか大嫌い。人間に生まれなくてよかった。

17.さようなら (原稿用紙87枚)

058 | 059 | 060 | 061
…――さようなら、ケテル。さようなら、ぼく。さようなら。

第4部

18.賢者の器 (原稿用紙81枚)

062 | 063 | 064
…悪意は渦を喚び、黒き集まりすべてを巻き込むだろう。

19.戦花咲く (原稿用紙90枚)

065 | 066 | 067 | 068
…リュードベリとの戦争を開始して半年が経過した頃……戦況は一変した。

Other

TINCTORA番外編 ティンカーベルと虎
リクエスト品 カップリングなりきり100の質問

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「薔薇廃園」(共同サイト名義)、作者名:無依で登録しております。
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TINCTORA 019

19.戦花咲く065 ケゼルチェックに面する一面の海。港町の向こうに微かに見えるものは敵国の軍艦である。いつもはにぎわう港町に今や市民は一人もいない。いるのはケゼルチェックとリダー、それにバイザー領の私軍からなるエルス帝国海軍主力部隊である。 港町は白い海兵で埋め尽くされ、港には商船や漁船ではなく、軍艦が並び、壮観であることこの上ない。 光の具合によって臙脂や真紅になびくエルス帝国国旗が掲げられたその船に、純白の鎧姿で凛々しくヴァトリア将軍が立つ。その隣に並ぶのは、これまた純白の軍服に身を通したホドクラー侯爵。 大砲の音が連続的に響き渡る。そこに海兵が一人走って駆け寄る。「リダー卿より入電、第三段階完了。これより風に従って第四段階へ移行とのこと」「ホドクラーさま、こちらも75%終了、一般市民は終了です」「結構ね」 ネツァーが言った。「あとは風を待つのみ、か」 小声でホドが言う。ネツァーだけが海風にまぎれてその声が届く。「ケゼルチェック市民の避難を急がせて。あと半月で完了させなさい」「はっ!」 敬礼して海兵が下がっていく。ネツァーは剣を腰から抜いた。そして相手の船に向けて剣を翳した。「我...
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TINCTORA 018

18.賢者の器062「ああ、久しぶり。そっちはどうだい?」「うん。わかっているよ。その案件について、そっちの意見は? そう。まぁそれでもいいとは思うけど確実なのは、うん。そう。わかってきたじゃない。」 部屋にはホド一人しかいない。誰の話し声もないのに、まるで誰かと会話しているかのごとく、ホドはすらすらと言葉を並べる。「ああ、戦争? 心配しないでよ。それよりさ、この戦争が終わってしばらくしたら、そっちに久々に帰ろうかと思っているんだけど。いや、迷惑かけるつもりは無いよ。ひっそり帰ってひっそりまた出て行くから。そうだな、恋人を連れて帰ろうかなって思ってる。いやだな、失礼じゃないか? 僕だって僕のことを思ってくれる女性の一人位はいますとも。いや、苦労はかけているとおもうけども。うん。うんそうだね」 そしてふっと微笑んだ後に、こう締めくくる。「それじゃ、またね。元気で、兄様」 コクマーはふぅっと紫煙を吐き出した。紫煙が、というかそもそも人間が立ち入るのに似合わない、亜熱帯の森林の中。 突然開けたその場所には泉。アマゾンの中ということもあってその泉の水は濁っていたが、生命が溢れている力強さがあっ...
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TINCTORA 017

17.さようなら058 ――最後のキスは、血の味がした。 目覚めたら、何かがおかしかったのだ。イコサははっきりとあの朝を覚えている。「ヘキサ?」 ノナが呼びかけても応えない。いつもなら、元気よく返事をしてくれるはずなのに。「ヘキサ。朝よ、ヘキサ」 続いてテトラが呼びかける。イコサも一緒に名前を呼んだ。そうしてやっとヘキサの薄い青い瞳が開かれる。ほっとしてみんなでおはよう、と言った。「敵、認識」ヘキサはそう言っていきなり拳を突き出してきた。反応できたのはみんなキリングドールだったからだ。ヘキサから飛びのいて、皆が愕然とする。「敵、3体確認。攻撃アリマセン」「ヘキサ! どうしちゃったの??」 ノナが叫ぶ。テトラから血の気が引いていた。「……あ、あれ? 俺、今……何を……?」 ヘキサはテトラに向けていた手を引っ込めて、当惑したように周りを見ていた。「どういうこと……?」 そうだ。このときを境にヘキサはおかしくなった。最初は、本当にささいな事からで。次になにをするか、今まで何をしていたかを忘れていた。それが何度も度重なって、ちょっと疲れているのかと問い掛け始めた頃、突然、攻撃を掛けてきたりする...
TINCTORA

TINCTORA 016

16.春眠055 まどろむような午睡の中で 永遠に等しい時間を求めて、 ただただ、なつかしく、いとおしい 母の胎の中の羊水に浸かっている気分のまま ぼくはまた、 君の夢を見ている。 気だるげに細められた目からは涙の痕が伺える。とても簡素なベッドに横たわるのは、絶世の美女、もとい美男。 シーツの上に広がった短い黒髪はまだ夜の月明かりを弱く跳ね返しているだけだ。人々にとっての休息時間、眠りの時間、すなわち夜。 彼はいつも心休まることを知らない。いつも過去を見て、そして最後に絶望する。 彼、以前ティフェレトと呼ばれ、現在イコサと呼ばれる少年とも青年とも言いがたい外見を持つ彼はもともと時間間隔が薄く、決まって夜寝たりはしない。 だが、いつ寝ても眠りは浅く、いつも夢を見る。 とても幸せだった時間。大好きな人が隣にいてくれた時間。 だがその時間の針を止めたのはいつだって自分だった。まだあの過去に戻りたいのか。否。戻るとしたらあの時間ではなく、限定的な彼が創ってくれた世界の中で生きたい。 でもそれすら叶わない。もう、望んではいけない。 自がどこで生まれたかは知らない。自に両親がいたかすら知らない。自...
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TINCTORA 015

15.覚醒するもの051 隣を覗き込めば空になっているベッド。寒いと感じて起きた原因は、きっとあの窓だ。「さむ」 ケテルは窓の傍に立って、窓を閉めようかと手を掛けてふっと止まった。「……ティフェ?」 どうしていないの? 窓が開け放されているってことは……彼が出かけたということだ。だからベッドも空なんだ。 いつものことだ。そう思いたいのに、不安がさいなむ。 世界が壊れるといって泣いた彼を放っておけない。夜空に浮かぶ白銀の月。いつもは美しいと思えるそれが今晩のケテルにはとても不気味に映った。 月を一睨みするときびすを返してケテルは部屋を出た。「どうしたんだよ? ケテル」 サロンを覗くとまだゲヴラーとイェソドたちが起きていた。星と月の位置からそんなにまだ宵の刻ではないんだろう。「ティフェ、知らない?」「出かけたの?」 イェソドが問う。ケテルは頷いた。「こっちには来てないぜ。ティフェは夜に徘徊癖があるからそのうち帰ってくんじゃねーの?」「だと、いいんだけど……」 不安そうなケテルにイェソドがマルクトを見て頷く。「探そうか? マルクトなら大体の位置はつかめるし」「いや……いいんだけど……」 寂し...
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TINCTORA 014

14.本当の名前047 イェソドとマルクトはホドに管理された生活を強いられている。それはマルクトがケテルの行う遊びにおいて重要な役目を負っていることと、二人の出生に原因がある。 ホドはケテルが行う遊びを戦争が終わったらやるつもりらしい。ホドは今ネツァーと一緒に戦争に夢中だから、今のうちにマルクトにやるべきことをやって欲しいようだ。 ホドがケテルの屋敷に居ない間にこの日にコレをやるようにと言い聞かされていた。よって二人は現在ホドに命じられた事を行うために忠実な行動を取っているといえる。 しかし二人に不満はない。ホドに管理されるのは当然だと思うし、自分たちではケテルの望みをかなえることはできない。ホドという頭脳があって初めて叶うだろう。 だから二人は言われた事をするだけだ。「マルクト、うしろ」 イェソドが突然そう言った。マルクトははっと後を振り返る。その瞬間にイェソドに腕を引かれる。今までマルクトが立っていた場所にはナイフが突き立っていた。「誰!」 マルクトを庇うようにイェソドが立ちはだかる。「男が女に守られるなんて」 くすくすと笑い声がして二人の目の前に同じ顔をした二人の子供が現れる。「...
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TINCTORA 013

13.戦争への鏑矢043「やれやれ、やっといなくなったか」 ルステリカ卿がため息をついて冷めた紅茶を淹れ直した。ホドもその行為を行う。しばしの無言。二人で高級な紅茶の味を確かめて満足行く味にうっとりするとルステリカ卿が微笑んだ。「君と本音で語り合える場所を用意してくれてうれしいよ、カトル」「いや。対して難しいことではないさ。今は戦争直前だからね」 ホドもにっこりと笑った。「でも、大丈夫なのかい? 彼らは異端審問だろう? なにかやらかしたのかい?」 ホドは軽く首を振った。十公爵の中で一番歳が近いせいかルステリカ卿とホドは個人的にも仲がよい。彼の言葉には純粋にホドを心配する言葉がある。「さ、時間は限られている。本題に入ってしまおう」 ホドが話題を変えるかのように言うと、ルステリカ卿は笑顔で頷いた。「そうそう、ラキから返事がたった今届いた。金色の矢を暁闇に放て、プランはGに移行だね。君に頼まれたものも完成したから、次の戦争では使えると思うよ」「そうか。Gに移行……。ジューダイヤ海峡か……。戦術は8通り考えてある。確実なのは……うーん」 ホドが悩むそぶりを見せた時、ルステリカ卿が言った。「戦争...
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TINCTORA 012

12.思惑の始動039「……私を、抱いて下さい」 そうしてティフェレトの唇に己の唇を近づけた。 ティフェレトは驚いた。「な、何言って……?」 ティフェレトは事態を飲み込む前に口付けられる。目の前には全裸のキラ。後には自分が今まで寝ていたベッドが。 いつもは空いている扉も閉ざされている。キスを続ける傍らでキラの右手がティフェレトの右腕を取る。 ぎょっと目を見開いたティフェレトの気などお構いなしにキラはティフェレトの手を自分の胸に添えた。温かく柔らかい少女の胸のふくらみに触れている。「……女は初めてですか?」 くすっと笑って、後のベッドにキラはティフェレトを押し倒した。ティフェレトに覆いかぶさるようにキラが再び口付ける。 口を話した瞬間にティフェレトとキラの間で唾液が糸を引く。「やめ! なんで!!」 ティフェレトが抵抗しようとすると、キラはティフェレトの肩を押し留めた。ティフェレトが愕然とする。力がまったく入らないのだ。キラが影だからか?「ねぇ、抱いてください。私、貴方と離れたくないんです、二度と」 キラがそう言って笑った。その顔はこれから訪れるであろう快感を予想して紅潮している。「……私...
TINCTORA

TINCTORA 011

11.氷結の魔女035 にこやかに、ソファでくつろぐ自身の主人にゲヴラーは跪いた。「ただいま、ケテル」「おかえり。今度は負けなかったみたいだね」「ああ」 強気で微笑んだゲヴラーに対し、ケテルは満足そうだった。「さて……」 ケテルは立ち上がって、マルクトの方に歩み寄る。「彼が、ゲヴラーの影か……。成る程、外見はそっくりだね」 ケテルは眠っているかのようなゲブラーの頬をそっと撫でて、呟いた。 ゲブラーはイェソドによってすっかり傷がふさがっているが、一回、千切れて離れた首は生々しい赤い傷跡がはっきり見える。「ひどいものだ……容赦しなかったね、ゲヴラー」「ははっ。悪かったね。楽しかったから、つい……」「いいんだ。君が、勝ったんだから。死ななかったんだから。僕の君が……お土産まで連れて、本当に君はすごいよ。偉い偉い」 ケテルはゲヴラーに笑って、マルクトに言う。「いつもの場所に運んで置いてくれる? ……マルクト、ティフェは?」「え? まだ帰ってないの? 途中で帰ったんだけど……」 マルクトはイェソドと一緒に頷きながら、不思議がっている。「うーん、嫌な感じ」「何が?」 ケテルの呟きにゲヴラーが尋ねる...
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TINCTORA 010

10.ゲヴラーの影031 闇夜を駆ける一つの影。目的を持って移動するその人間は狩人のような目つきをしていた。狩る獲物がどこにいるのか把握してるような迷いのない動き。 その人影がふいに止まった。目の前にもう一つの人影。「来たな」「おう。わざわざ、な」 相対する二つの影。比して似てなる、白い髪に赤い目。ゲヴラーとゲブラーだ。「で、何か用なのかよ? わざわざ俺に早く殺されたいってか?」「そうではない。まだ間に合う。お前は付くべき主を間違えたのだ。改心し、主に忠誠を近い、同じ道を歩もう」 ゲブラーが言う。それに対し顔を精一杯歪めて言い放つ。「はぁ? ヤダね! 俺の主はケテルって俺が決めてんだ」「……ケテル。ティンクトラの主はやはりケテルか。ゼルヴンの予測は当たっていたわけだな」 今はもう亡き戦友を想った。彼はティフェレトに殺されたのだった。「ティンクトラって何だよ? 俺達の名前??」「そうだ。赤き賢者の石と絡んでいるからな」「ふ~ん。賢者の石ってティンクトゥラじゃなかったっけか? 発音悪いぜ?」 にやにやからかってゲヴラーが笑った。「賢者の石を使って何をしようとしている?」 ゲヴラーは笑った。...