天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 038

第2章 永遠を探す忠誠の騎士038.魂の導き手「俺の名はラルム。人魚の不老不死性を活かして世界各地を巡る吟遊詩人です」 広場の噴水の彫像は、何の因果か人魚の像。涼やかに落ちる水の流れに、少年の青銀の髪がよく映える。 詩人の名乗りに、セルセラ...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 037

第2章 永遠を探す忠誠の騎士037.死者と不死者 どこからか歌が聞こえる。 そこだけ遠い冬の気配をまとっている。 今宵の演目は雪の女王。 悪魔が作った鏡。悪魔が落として割れてしまった鏡。 その欠片を目に入れた者は感情を失う。 鏡の欠片が目に...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 036

第2章 永遠を探す忠誠の騎士036.鉄帯が外れる時「う……」 頭が重い。首の後ろがなんだか痛む。 慣れぬ感覚だと思いながら、クランは意識を取り戻す。瞼が重い。「なんだ。結局こういう話になるんじゃないか」 体を起こす前に耳に飛び込んできたのは...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 035

第2章 永遠を探す忠誠の騎士035.忠義の果て 雑木林の向こうの小さな丘の上、いつの間にか夜闇に紛れる濃い紫色の軍隊が出現していた。 人数こそ五十人もいなかったが、そのうちの一部が一抱えもあるだろう大きな鉄の筒を持っている。「あれは……大砲...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 034

第2章 永遠を探す忠誠の騎士034.騎士と魔王 黄昏から宵闇へと空の色が移り変わる。 昼と夜の狭間の安寧を、白銀の巨大な獣の咆哮が引き裂いた。 領主館の壁と屋根を破壊しながら、狼にも似た魔獣は堂々姿を現す。「ハインリヒ……?」「ハインリヒ!...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 033

第2章 永遠を探す忠誠の騎士033.約束と宿命「魔王と言っても案外普通だったな。倒せそうか?」 ディムナは長い間書面上で認識しているだけの存在だったフロッグ公爵領の二の魔王・ハインリヒに会った感想をクランに尋ねる。「特段脅威には感じませんで...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 032

第2章 永遠を探す忠誠の騎士032.邪神の欠片たち 煌めく螺鈿細工に真珠、巻貝や海星を模した金銀に飾られた竪琴を、まるで人魚のように美しい人物が奏でている。 腰まで届く青みがかった銀髪はともすれば女性のようにも見えるが、よくよく観察すれば少...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 031

第2章 永遠を探す忠誠の騎士031.戻れぬ日々 食事を終えた一行は、ひとまず今後のことについて話し合うために、宿のディムナの部屋に集まった。 それぞれが思い思いの位置についたところで、ディムナがドロミットについて尋ねる。「ところで、そろそろ...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 030

第2章 永遠を探す忠誠の騎士030.槍の騎士の魔王 考えてみれば。「僕に依頼したいだけならわざわざアジェッサの街に呼び出してしかも本人が来る必要はなかったもんな……。ちっ。こいつの放浪癖を甘く見てたぜ」 セルセラの舌打ちに、タルテの溜息が重...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 029

第2章 永遠を探す忠誠の騎士029.白の帝国とその隣国 ディムナが一行を連れてきたのは、彼らが泊まっている宿のすぐ近くにある食事処だった。 普段安くて美味い店を探すのが趣味と言い放つディムナが、己の騎士との気安い二人旅にしては珍しく高級な宿...