小説(全年齢)

天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 018

第1章 魔女に灰の祈りを 018.生贄術師  鋭い笛の音が夜の闇を切り裂いて響く。  ファラーシャは弾かれたように顔を上げると、その音が聞こえた方角に向けて走り出した。セルセラも箒で宙を舞いながらタルテたちのもとへ駆けつける。 「見つけたか...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 017

第1章 魔女に灰の祈りを 017.幻と囚われ人  レイル、ファラーシャ、タルテ。  この三人は強すぎる。これほどの戦闘能力を持つ人物がどこかの大国に召し抱えられるでもなく在野に埋もれていたのが信じられない。  セルセラはそう考えていた。だか...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 016

第1章 魔女に灰の祈りを 016.硝子の街  今は“硝子の街”と呼ばれているその街は、元々は小さいながらに人々が銀細工で生活し活気に溢れていた。  大地の恵み豊かな緑の大陸。雄峰連なる高地に熱帯の密林、海岸地域に砂漠地域と様々な自然環境が一...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 015

第1章 魔女に灰の祈りを 015.血と運命と物語と 「へー、ファラーシャも“ファートゥス”シリーズの読者なんだな」 「ああ! 一番好きなのは騎士と姫君のシリーズ! 騎士様が王子様でもあることが判明した三作目が特に最高!」  魔王討伐の道中は...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 014

第1章 魔女に灰の祈りを 014.冥界下り  神々が住まう中央神殿。装飾的な柱の並ぶ廊下をセルセラは迷わず歩き、建物内で最も日当たりの悪い一角へと辿り着く。  奥まった部屋が死後の世界を統治する冥神ゲッセルクの執務室だ。  執務室と言っても...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 013

第1章 魔女に灰の祈りを 013.天上昇り  寝台に横たわる少女は物言わぬ骸。美しい死体に寄り添い、男は主の名を呼びながらただ項垂れる。 「リーゼル様……」  レイルは波打つ自分の胸の鼓動を抑えるように服の胸元をきつく掴んだ。背にジワリと嫌...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 012

第1章 魔女に灰の祈りを 012.星を狩る者  光り輝く魔法陣の上に現れた一人の女性。  それまでの鎧兜の戦士たちとは違い、彼女ははっきりと顔を晒している。  そして、ファラーシャにとてもよく似ていた。  ファラーシャを二十歳ほど成長させ、...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 011

第1章 魔女に灰の祈りを 011.七つの試練  一行が頭を低くして暗く狭い隠し通路をしばらく歩くと、唐突に終わりは訪れた。  抜け出てから振り返ると、通路を塞いでいた扉の外側は完全に周囲の壁と同化していた。  こちら側からもう一度隠し通路に...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 010

第1章 魔女に灰の祈りを 010.千夜一夜  事態の概要を把握した一行は、全ての解決に向けて改めて探索を再開する。  ファラダとしては一刻も早く主を助けに行きたいだろうが、彼らが今いる場所は魔王たちの戦闘によって変容した特殊な遺跡の中だ。彼...
天上の巫女セルセラ

天上の巫女セルセラ 009

第1章 魔女に灰の祈りを 009.鵞鳥番の娘  どこか休めそうな木陰を選び、一行はファラダの告白を聞く。周囲には血塗られた釘が生え硝子の破片がきらきらと光っていて落ち着くどころではないが仕方がない。  ファラダはついに重い口を開いて、彼が知...